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群れを守るトリニティ・ホーン R 自然文明 (5) クリーチャー:ホーン・ビースト 5000+ ■G・ゼロ-バトルゾーンに同じ名前のクリーチャーが5体以上あれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。 ■バトルゾーンに同じ名前のクリーチャーが5体以上あれば、このクリーチャーのパワーは+5000され、「W・ブレイカー」を得る。 作者:808 《群れを守るトライ・ホーン》のリメイク。 通常は本家と同スペックですが、バトルゾーンに同名クリーチャーが5体以上あれば、 0マナ10000のW・ブレイカーとかいう意味不明怪獣になります。 本家の《遊撃師団》や《チョロチュー》、下記の「アンリミテッド」サイクルと相性が良いです。 サイクル 《予言者プロト》 《アノニマス・ランプ》 《喪武男》 デザイナーズコンボ? 《群れを守るトリニティ・ホーン》 カードリスト:808 フレーバーテキスト (本家と同じくなし) 評価 名前 コメント
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れいむよ永久に安らかに これは虐待の話だ。 僕が、ゆっくりれいむを虐待した件についての記録だ。 途中で、そうは思えなくなるかもしれない。だが、それは早とちりだ。 どうか最後まで読んでほしい。 僕は、自分の快感のためにゆっくりを虐待する人間だ。 たとえそう見えなくても、そうなんだ。 * * * * * 「ゆ゛……? ゆ゛……? ゆ゛……?」 ゆっくりれいむは自分の目に映っているものが理解できなかった。 狭い部屋、冷たい床、明らかにゆっくりできない熱そうな道具を持っている、青い服の人。 「ここはどこ? ゆっくりおしえてね! ――ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 返事の代わりに、れいむの頬に灼熱の焼印が押し付けられた。 * * * * * 以前、ゆっくりれいむは、お兄さんのところで暮らしていた。 れいむは加工所というところから出荷された冷蔵れいむで、お母さんや姉妹はいなかった。 でも、お兄さんがいた。おいしいごはんをくれて、暖かい部屋、ふわふわの寝床で飼ってくれた。 だから、とてもとてもゆっくりできた。最高のおうちだった。れいむはおにいさんが大好きだった。 ある日、お兄さんが、散歩に連れて行ってくれた。 高い空の下で、やわらかい草花の上で、れいむは元気に跳ねまわって夢中で遊んだ。 だが、知らないうちにお兄さんから離れすぎていた。気が付くと、知らない人に抱き上げられていた。 「ゆっくりはなしてね! れいむはおにいさんのれいむだよ!」 必死に頼んだが聞いてもらえなかった。泣きわめいて抵抗したが無駄な努力だった。 草原の向こうのベンチにお兄さんが座っているのが、袋に詰め込まれる直前に、見えた。 * * * * * そして今、れいむはどことも知れない、殺風景な部屋に放置されている。 周りには焼印の押されたゆっくりがたくさんいた。どの子もゆぐゆぐと泣いていた。 「ゆっくりしていってね!」懸命に声をかけると、似たような空元気の返事があった。 みんなさらわれた子だった。でもれいむは希望を抱いていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 最初の一週間は、れいむの生涯で二番目に不幸な週だった。 なぜなら、「棚」に押し込まれた週だったからだ。 焼印をつけられたあと、れいむたちは巨大な部屋に並ぶ棚に入れられた。 人間の靴箱のような狭い棚だ。一マスに一匹ずつ、何百何千ものゆっくりが詰め込まれた。まずい流動食が出た。 「ゆっくりだしてね!」「ここはせまいよ! おうちかえる!」「きっとしかえしするからね!」 みんなが文句を言った。だが、青い服の人間たちは誰ひとり返事をしてくれなかった。 二週目、れいむは自分たちの境遇を理解し始めた。 25センチ四方のマスの中。そこから出ることはできないのだ。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 三週目、れいむはうんざりしてきた。食事がまずいのだ。 食事は棚の前の樋を流れていくおからのような流動食だ。一応ほんのりした甘味はある。 だがひどく単純な味で、お兄さん手製のごはんにはとても及ばなかった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶ、きっとたすかるよ。お兄さんがゆっくり来てくれるよ」 四週目、れいむは体が痛くてたまらなかった。 ずっと体を動かしていないので、皮が堅くなってしまったのだ。 乾いた餅のようにほっぺたがコチコチになり、ひび割れた。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「まだだいじょうぶだよ。お兄さんがもうすぐ来てくれるよ」 五週目から、青い服の人間たちがたまにやってきて、スプレーをかけてくれるようになった。 頬の乾きはそれで抑えられた。けれどもコチコチの代わりに、ベタベタするようになってしまった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう願っていた。 「お兄さんが来てくれるよ。れいむがまんできるよ」 六週目、突然、隣のマスとの仕切り板がガシャンと開いた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 隣にもゆっくりがいた。初日に会ったきり見なかったまりさだった。人恋しさから、思わずすりすりした。 すると、どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「ゆゆゆゆゆ?」れいむは戸惑いつつも発情してしまった。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 れいむは生まれてはじめてのすっきりをしてしまった。 「ゆぅ、ごめんなさい、おにいさん。れいむ、すっきりしちゃった……」 そのあと、れいむの頭には茎が生え、小さな赤ちゃんたちが実った。 隣のマスとの間にはガシャンと再び仕切りができたが、声は聞こえた。 「れいむ、ゆっくりしたあかちゃんをうむんだぜ!」「ゆん! ゆっくりがんばるよ!」 赤ん坊の成長を心から楽しみにして、れいむは一週間を過ごした。 「ゆっくりうまれてね……!」 七週目、赤ん坊が生まれてすりすりを始めた途端、人間がやってきてガシャンとレバーを引いた。 床板が目の荒い網になり、赤ん坊はみんなボトボトと落ちて、どこかへ転がっていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その後、れいむは悲しみながらも、赤ちゃんが戻ってこないかと一縷の希望を抱き続けた。 「あかちゃんたち、きっとゆっくりもどってくるよ……!」 八週目が来ても、赤ん坊は戻ってこなかった。 「あかちゃんだぢ、どごなのぉぉぉ……!」れいむは悔し涙を流していた。 ガシャンと仕切り板が開いて、まりさが現れた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 床がぶるぶると震え始めた。「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」二匹はすっきりした。 九週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 楽天的なれいむの心の中にも、ドロドロした黒い不安が生まれ始めていた。 「お兄さん、ここはぜんぜんゆっくりできないよ!」 十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十一週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛、またれいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十三週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛!! あがぢゃんどらないでねぇぇぇぇぇ!!!」 十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは拒んだ。 「まりさ、だめだよ! すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十五週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ぎあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、まだまだあがぢゃんがあぁぁぁぁ!!!」 十六週目、 ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは厳しく拒んだ。 「まりさ、だめだよ! あかちゃんがとられちゃうから、すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十七週目、赤ん坊が生まれたが、れいむは口を大きく開けて、なんとか全員落下前に受け止めた。 「ゆー」「ゆっくち!」「ゆっくちちぇっちぇっ」「ゆっきゅう!」 「ゆああ……! あかちゃんたち、ゆっくりだよ! ゆっくりしていってね……!」 初めて助けることのできた子供たちを、涙を流して祝福したが、十分後に人間が来て持ち去った。 連続六回にわたって愛しの赤ん坊を奪われたれいむは、かなりダメージを受けていた。 うつろな目で宙を眺めて、「ゆあ゛あ゛……ゆあ゛あ゛……」とうめき、時おり「ひぐっ」と嗚咽した。 するとそこへ人間がやってきて、れいむをつついて我に返らせ、噛んで含めるように言った。 「子供を守ろうとしても無駄だ。ゆっくりの子供はすべてここの商品として出荷されるんだ」 「ゆぐっ……あかぢゃん、かえじでね……」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 すでに四ヵ月、百二十日も狭い棚に閉じ込められていた。 死ぬまで、という言葉がリアルな重みを持ってずっしりとのしかかってきた。 「ゆがああああああああ!!」 れいむは狂的な怒りにかられて、人間に飛び掛ろうとした。 ガシャン、と棚の枠にさえぎられて跳ね返されただけだった。 「ゆがああああああ!! ゆがああああああああああ!!!」 ガシャンガシャンという音が何度も響いた。人間は去っていった。 十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 十九週目、赤ん坊が生まれた。 れいむは力なく声をかけて祝福したが、十分後には落下して転がっていった。 れいむの心の中のドロドロは、真っ黒に固まりつつあった。 「お兄さん、お兄さん、ここはいやだよ、はやくたすけてよ……」 二十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄さん、お兄さん! はやくきて、れいむつらいよ!」 二十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざん、お兄ざんっ! れいむいやだよ! あかぢゃんかわいそうだよ!」 二十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざんお兄ざんお兄ざんはやくはやぐもうこんなとごろいやいやいや」 二十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁんお兄ざぁぁぁんたずげでねぇぇれいぶづらいよぉぉぉ!」 二十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁぁぁぁぁぁん! れっれいっぶっも゛っも゛ヴっ、こわっこわ゛れぢゃぅぅぅぅ!」 三十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 しかし、一匹だけが網目に噛みついて踏ん張った。 「ゆきゅっ!」「あかちゃん……!」 れいむの磨耗しかかっていた理性が蘇った。 母のしぶとさで、ビー玉ほどの赤ん坊を背後にかばい、自分と壁との間に隠した。 三十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 「まりさ……すっきりしていいよ」 「ゆっ? いいの、れいむ?」 連日れいむの悲鳴を聞かされているまりさも憔悴していたが、れいむの後ろの小さな影を見て、ハッと顔色を変えた。 「れいむ……!」 「まりさ……れいむはこのこのために、ほかのこをすてるよ!」 れいむは涙をこらえて言った。 「おねがい、ゆるしてね……!」 「ゆ、わかったよ、れいむ!」 まりさもれいむの悲壮な決意がわかったのか、強くうなずいた。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 二匹はすっきりした。 三十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 れいむは叫んだが、それは演技だった。 背中の後ろにしっかりと、ピンポン玉ほどの赤ちゃんれいむをかばっていた。 「おかーしゃん、ゆっくち!」 「このこのためなら、れいむはおにになるよ……!」 野生動物のような警戒心で青い服の人間の目を交わしつつ、ひそかに流動食を食べさせて、れいむは子供を育てた。 三十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、テニスボールほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうちょたち、てんごくでゆっくちちてね……!」 三十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、りんごほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうとたち、てんごくでゆっくりちてね……!」 三十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰では、グレープフルーツ大になった子ゆっくりが苦しんでいた。 「おかーさん……れいむ、そろそろせまいよ!」 「ゆっ!」 「ゆっくりたすけてね!」 れいむはヒヤリとしたものを感じた。いや、無視しようとしていたが、実はもう二週間も前から感じていたのだ。 このままではいずれ、子ゆっくりも、ゆっくりできなくなってしまうと。 「ゆ、ゆっくりかんがえるよ!」 そう答えつつ、心の中では藁にもすがる思いで願っていた。 (おにーさんおにーさんたすけて! いまならまにあうよ、いましかないよ! れいむのこどもをたすけてね……!!!) 四十週目、ガシャンと仕切りが開いてまりさが現れた拍子に、子れいむがコロンとれいむの前に出た。 まさにその瞬間、棚の前を青い服の人間が通りがかった。 「あれっ、子供いるじゃないか!」 れいむとまりさは、頭が真っ白になった。おたおたしているうちに人間が手を伸ばして子れいむを掴み取った。 「ゆっ、おかあさーん! ゆっくりたすけてねぇぇぇ!!」 「れいむぅぅぅ!!」 「うわぁ、でっかい! これだともう六……七週齢ぐらいか? よくもまあ育てたなあ」 人間はいったん子れいむを床に置き、母れいむをズボッとつかみ出して、奥を調べた。 「おっ、髪を敷いて巣を……すごいなあ、これは報告しなきゃ」 「おかーさん、おかーさぁぁぁん!!!」 「れいむ、にげてね! ゆっくりにげてね!」 子れいむはぴょんぴょんと跳びはねて泣きわめいた。母れいむは必死に子供だけで逃がそうとした。 人間は巣を取り除いてから、そんな母れいむを再び押し込め、ガッチリと枠を閉めた。 そして子れいむを取り上げ、ギュッと片手で握りしめた。 「ゆぶっ? ゆゆっくりやめっやっやべっ、おがぁしゃっゆブッ」 短い抵抗のあと、子ゆっくりはあっさりと潰された。人間はそれを隅の排水溝に捨てた。 れいむの頭の中で、最後の最後に子供が漏らした、おかあさん、という言葉がエコーしていた。 どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「れれれれれいむぅぅ!」 れいむはデク人形のように無表情のまま、まりさに犯された。 四十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 れいむは子守唄ひとつ歌わず、それをぼんやりと見つめていた。 それから、さらに十週間、れいむは同じ毎日を過ごした。 まりさに犯され、子供を生み、またまりさに犯され、子供を生んだ。 五十一週目、れいむはまた子供を生んだ。十分後には落下して転がっていった。六匹の赤ん坊がいなくなった。 れいむは二十二回出産して、百五十七匹の赤ん坊を産み、百五十六匹を奪われ、一匹を殺された。 れいむはもう、お兄さんの名を呼んでいなかった。 いつから呼んでいないのかわからなかった。 なぜ呼んでいたのかもわからなかった。 今ではただひとつの言葉しか覚えていなかった。 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 五十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 五十三週目、棚の枠を開けて、人間が手を差し込んできた。 れいむのぼやけて意味をなさない視覚に、顔が映った。 「れいむ、れいむか!? ああ、そのリボンの模様はれいむだな! 俺を覚えてるか?」 れいむは朦朧と眺めていた。そんな妄想はもう何千回も経験していた。 「わからないのか? もうダメになっちゃったのか? かわいそうに……」 ずるっと引き出されて抱かれた。頭の上の茎がゆさっと揺れた。 おにいさん、ゆっくりありがとうね、とれいむは思った。こういう夢は、たとえ夢でも、気が晴れるから好きだった。 「ええ、こいつです。間違いないんで……はい、はい。いえ、はい」 青い服の人間と話し合ったお兄さんが、れいむを運んでいく。 あれ、きょうのゆめはすごいよ。 おそとのけしきまでみえているよ。 ゆっくりできそうなけしきだよ……。 れいむはどんよりとした無表情で、加工所から家までの道のりを眺め続けた。 その目が、次第に明るくなってきた。 「さあ、うちだぞ」 ドアをくぐると、匂いがした。 人間の男の人の匂いだ。 なつかしい匂いだった。 それはまぎれもなく、現実の匂いだった。 れいむの周りを幾重にも覆っていたぼんやりとした膜が、急速に薄れていった。 「ゆ……ゆ……!?」 「おっ、れいむ!? 治ってきたのか?」 「ゆっ、ゆっ、ゆゆゆ……!」 ぽすっ、と座布団の上に置かれた。 そのふかふかの感触。 その甘い自分の匂い。 そこから見える室内。 すべてが、記憶のままだった。 「ゆっ! ……ゆ゛っっ!!! ……ゆ゛ぅっ!!!!!」 れいむはわなわな震えだした。目が見開かれ、大粒の涙がボロボロとこぼれだした。 錆付いてボロボロに朽ちていたはずの心が、再び動き出した。 「こ こ は……れい むの……おうち……」 「れいむ」 ハッと見上げた。カチャカチャと皿を出しながら、お兄さんがウインクしていた。 「ゆっくりしていってね」 「おにいざあああああああああああああん!!!!」 堰を切ったように感情があふれ出した。れいむはびょんびょんと激しくジャンプして、お兄さんに抱きつこうとした。 だが、それはかなわなかった。 足が萎えきっていて、跳ねるどころか這うこともままならなかったのと、近寄ったお兄さんに押さえられたからだ。 「無理しちゃだめだ。それに、赤ちゃんが落ちちゃうだろ」 「ゆっ!? あかちゃん?」 「そうだ。おまえ、あかちゃん大事だろう?」 れいむは愕然として頭上を見上げた。そこに、小さな子供の生った茎があった。 「ゆゆーっ!? れいむにあかちゃんがいるよ?」 「おいおい、気づいてなかったのか?」 笑ったお兄さんが、ふと顔を引き締めた。 「そうか……それほどつらかったんだな」 そう言って、皿に乗せたものをれいむの前に差し出した。 「食べな」 それはいちごを乗せた、白いショートケーキだった。 ガンッ! とれいむの嗅覚を何かが直撃した。 「!?」 戸惑って、目をぱちぱちさせながら、れいむはそれを確かめようとした。 それは甘味の、本物のスイーツの匂いだった。 おそるおそる舌を伸ばして、クリームをすくいとった。 とろぉり……と。 乳脂肪たっぷりの豊かな甘味が舌に乗り、れいむの口内に染み渡り、魂の底まで溶かしていった。 「ゆああああぁ……」 れいむは陶然となった。目が泳ぎ、頬がとろけた。 忘れきっていた、砂糖の香り、味、栄養。それらがれいむから、とうとうあの言葉を引き出した。 「ゆっくり……!」 「お、出たな」 「ゆっくり! ゆっくり、ゆっくり! ゆっくりー! ゆっくりぃぃぃぃぃ!!!」 叫べば叫ぶほど、乾ききっていた心が満たされていくようだった。 凄まじい勢いで本能がこみ上げ、れいむは行儀も何もかも忘れてケーキをむさぼり食った。 お兄さんは追加で三つものケーキを出してくれた。それらもすべて食べた。 食べている最中に、再び滝のように涙が流れ出し、とまらなくなった。 蘇った心に、あとからあとから温かい思いが湧き出していた。 「はっふはっふ! めっちゃ! うめっ! ゆまっ! ゆあい! ゆがっ! ゆあああ! ゆあぁーん! あああああん! あああああんあーんあーんあーああん!」 れいむは食べながら泣き出した。大声で心の限り泣いた。 泣きながらお兄さんに這いよって、ぐりぐりぐりぐりと頬を押し付けた。 「おかえり、れいむ」 あふれる感謝の思いをぶつけるため、れいむはいつまでも泣き叫び続けた。 翌日、赤ん坊が生まれ、十分後も二十分後も、れいむとゆっくりした。 声をかけあい、すりすりし、餌を与え、れいむは親身になって世話をした。 森にいるどんな親にも負けないほど立派な、親ぶりだった。 赤ん坊たちは、「おかーしゃん、すりすりしちゅぎだよ!」と文句を言ったが、れいむはやめなかった。 やめるつもりはなかった。自分の身がすり切れても、子育てに全力を尽くすつもりだった。 百五十七匹分のゆっくりを、与えてやらなければならないのだから。 二ヵ月後、ゆっくりれいむは、お兄さんに頼んで、家族ともども山へ連れていってもらった。 そよ風の吹く緑深い沢で、れいむは箱から出してもらい、草の上に座った。 「おかーしゃん……」 「ゆっくちできそうなところだよ……」 八匹の子供たちが、れいむに寄り添っていった。するとれいむがたしなめた。 「ちがうよ、れいむ、まりさ! ゆっくちじゃなくて、『ゆっくり』だよ!」 「ゆ!」 「わかったよ、ゆっくり!」 「ゆっくりー!」 ぴょん、ぽよん、と子供たちがはねた。 もうみんなトマトほどになり、立派に野山で生きていけそうだった。 それを見届けると、れいむはお兄さんを振り返って言った。 「おにいさん、いままでありがとうね」 「れいむ……」 「れいむはしあわせだったよ! ゆっくりかんしゃしているよ!」 「おかーさぁん……」 子供たちが並んで、ほろほろと涙をこぼした。そんな一座に、れいむはキッとした顔で言った。 「さあ、ゆっくりひとりだちしてね! のやまでゆっくりくらすんだよ!」 「おかーさん!」 「おかーさんはむかし、ゆっくりできなかったよ。こどもたちは、かこうじょのおとーさんや、おかーさんのぶんまでゆっくりしてね! それがおかーさんのねがいだよ!」 うるうると瞳を潤ませた子供たちが、サッと背を向けて駆け出した。 「ゆっくり、いくよ!」 「ゆっくりがんばるね!」 「おかーしゃん、ありがとう!」 「ゆっくり、ゆっくりー!」 ぴょんぴょんと跳ねた子供たちが、次々に草むらに飛び込んだ。 ザザザザザ! と風が渡ったあとには、もう何の痕跡もなかった。 子供たちと同じように涙しながら見つめていたれいむが、振り向いた。 「ゆう……これで、れいむのしごとはぜんぶおわったよ」 「本当によかったのか?」 「ゆっ。お兄さんひとりにまかせるには、おおすぎたからね!」 うなずいたれいむの髪には、あろうことか、白髪が混じっていた。 この二ヵ月、れいむはお兄さんのおかげで心底ゆっくりした。だが、その前の一年が悪かった。 身も心もボロボロにされた加工所の生活が、もともと長くもないゆっくりの寿命を、削り尽くしたのだった。 柔らかな草の上で、大好きなお兄さんに見守られながら、れいむは早くもうっすらとかすれ始めた声で、つぶやく。 「お兄さん、ありがとうね。ほんとにほんとにありがとうね! れいむ、すごくゆっくりできたよ!」 「そうか」 「だいすきだったよ、おにいさん……!」 そう言って、れいむは目を閉じた。このままこの場で、草木と風とともに、ゆっくりと消えていくつもりだった。 お兄さんが、れいむの正面に来て、何か言おうとした。 ……ゆ? れいむは目を開けて聞き返そうとした。 だが、すでにまぶたが開かなかった。 もう、お兄さん。さいごのことばなのに、ゆっくりしすぎだよ……。 ほんのちょっとの悔しさを覚えながら、れいむは死んだ。 * * * * * 加工所の記録などによれば、うちのれいむは、おおよそこんな一生を過ごしたらしい。 最後の二ヵ月は、他のどんなゆっくりよりも飼い主の僕になつき、感謝しながら暮らしていた。 これのどこが虐待だ、とおっしゃる方もいるかもしれない。 だが、これを聞いたらどう思われるだろう? ――つまり、誘拐を装ってれいむを加工所員に引き渡したのは、他ならぬ僕だという事実を。 僕はれいむの笑顔が見たかった。 最高の――比類なき最上の――感動が見たかった。 そのために、あの最低最悪の場所へ、一年にわたってれいむを放り込んだのだ。 そして、生還したれいむの心からの感謝を、体いっぱい受け止めたのだ。 人畜無害な愛護家のような顔で。 僕はすでに、加工所から冷蔵まりさを買ってきてある。 次の感動を得るためだ。一年越しの作戦。薄汚れたアニバーサリープレゼント。 どうだろう。 やってみたいと思わないか? アイアンマン これまでに書いた話 ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 (まりさ解体) ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1235 少年 二人のお兄さんと干しゆっくり.txt このSSに感想を付ける
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ポケットを叩くと確かにビスケットはふたつになりましたが、 それはただ、ビスケットが割れてしまったというだけのことでした。 ある場所に飾られている美しい絵画は、見る人全てを魅了し、 今日も多くの人の目を楽しませていました。 ビスケットと名画 あるところに、とても仲の良い二匹の赤まりさがいました。 おとうさんもおかあさんもいっしょ。 あうちもいっしょ。 ごはんもなかよくはんぶんこ。 あそぶのもいっしょ。 ねるのもいっしょ。 なにをするのも一緒でした。 子ゆっくりになっても、二匹はいつも一緒でした。 おうたをうたうのもいっしょ。 かりのれんしゅうもいっしょ。 おべんきょうもいっしょ。 やっぱりなにをするのも一緒でした。 狩りが得意な二匹のまりさは、群れでも有名でした。 二匹のまりさも大きくなって、独立の時がやってきました。 二匹のまりさは、同じ時期に独立した群れのゆっくりみんなから求婚されましたが、 それらをすべて断り、二匹で生活することにしました。 おうちをみつけて。 おうちをかいぞうして。 ごはんをとって。 二匹は仲良く一緒に暮らしていました。 ある日、二匹がおうちで晩御飯を食べていると、おうちの中にれみりぁが入ってきました。 二匹は必死に抵抗しました。 その結果、守るのに適した狭い穴の中で戦ったということが幸いし、 れみりぁを無事に追いかえすことができました。 でも、無傷とはいきませんでした。 片方のまりさのおぼうしが取られてしまったのです。 二匹は困りました。 このままではゆっくりできないゆっくりとして虐められてしまうかも知れない・・・・・・。 二匹はとても仲良しで、いつでも一緒で、何でもはんぶんこしてきました。 だから、帽子もはんぶんこすることにしました。 翌日。いつものように、仲良くなって、あわよくばつがいになってもらおうという下心満載のれいむが、 まりさたちのおうちに尋ねてきました。 れいむが 「ゆっくりしていってね!」 と巣穴に挨拶をすると、 「「ゆっくりしていってね!!」」 と、いつものように声が返ってきました。 一緒に狩りに行こう・・・れいむは、巣穴から出てきたまりさたちにそう声をかけようとしましたが、 巣穴から出て来たのは、狩りが上手で美ゆっくりなまりさではなく、 おぼうしが変でゆっくりできない、2匹のまりさっぽいゆっくりでした。 「ゆわああぁぁぁぁ!!!ここにゆっくりできないゆっくりがいるよおおぉぉぉぉ!!!」 声を限りに叫ぶれいむ。その声につられて、同じく下心満載でまりさに近づこうとしているゆっくりたちが 集まってきました。 「「「「「「なにこのゆっくり!ゆっくりできてないよ!!!」」」」」」 まりさたちは慌てました。いつもならみんな自分達に優しくしてくれるのに、今日はどうしたことだろう? 「「ちがうよ!まりさたちはまりさだよ!!」」 弁解しようとしましたが、 「きっとこのゆっくりできないゆっくりたちが、まりさたちをころしたんだよ!」 「げすなまりさをせいさいするよ!!」 「「「「「「「えいえいゆー!!」」」」」」」 全く聞いてもらえませんでした。 まりさたちはたくさんのゆっくりたちにぼこぼこにされ、食べられてしまいましたとさ。 二つに割れたビスケットを持った少年は、友達の少年と仲良くビスケットを分けあいました。 ある2人が名画を分けようとしました。2人は名画を真ん中から半分に切り裂きましたが、 2人が分けようとした「名画」はもうどこにもありませんでした。 あとがき 短くシンプルにまとめる+童話風の練習でした。 あれ、この短さはどちらかというと漫画向きだったかな・・・? 今書いているSSの中で、捕食種同士のバトルシーンがあるんですけれど、 ゆっくり同士のバトルシーンって、どこまで濃く描写していいものやら。 あんまりスペック上げると、ゆっくりっぽくなくなってしまうしなぁ・・・。悩みどころです。 それではここまで読んでくださったあなたに感謝をささげつつ、今日はさようなら by ゆンテリアとか描いてる人 挿絵:ゆンテリアあき
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※変わった虐待お姉さんが出てきます ※お題「森の賢者の敗北」 「キャハハハ、お姉様見て、これ面白いのよ。まだ生きてる」 「あら、遊んでいないで早く殺してしまいなさい。そんなのいくらでも殺せるのよ」 少女が名残惜しそうに五寸釘が何本も刺さったゆっくりありすお地面に捨て、鉈をクルッと返し峰の部分を叩きつける。 それまで、釘を打つ度に悲鳴をあげたり、身震いをさせていたありすが全く動かなくなる。 「あーぁ、死んじゃった。さ、次はどうやって殺そうかしら」 群れは今までに無い被害を出していた。狩りに出ようにも狩りに出たゆっくりまりさが両目を失い木から吊り下げられていた。 それを助けようとしたゆっくりれいむは落とし穴に嵌り、無数の針の上に落ちた。 最初は貫通せず、れいむも頑張れば這い上がれただろうが、痛さのあまり何度も垂直に跳ね上がったため、 針はどんどんとれいむの身体を貫いていく。最後は自重でゆっくりと針の根元まで落ちてしまった。 そのまりさもれいむも未だに生きている。家族は二匹の元に今日も食料を運んでいった。 この群れは長のゆっくりぱちゅりーによって計画的に食料が配分されているため、すぐに食料が尽きる事は無い。 しかし、実りの秋に狩りにも出れず、瀕死の仲間たちに食料を消費されるのは効率的ではない。 長のぱちゅりーは群れの仲間に単独で行動しないように怪しいものに近づかないように伝えた。 「お姉様、お姉様、またアレをやりましょ。前にまりさにやったように両目を抉って」 「確かにアレは群の負担になるわね。でも少し面倒だわ」 「駄目よ、お姉様。SadismのSはSacrificeとServiceのSなのよ」 そう言うと妹は鞄からから飴玉を取り出す、中に小さな鉄の玉が入っていてそこから釣り糸が外へ伸びている。 その先には杭があり、妹はその杭をまた鞄から玄翁を取り出すと、杭を地面に打ち込んでいく。 これでゆっくりの力では飴玉は動かなくなる。もし飴玉を食べようとするならその場で食べるしかない。 飴玉の匂いに誘われ、ゆっくりれいむが一匹、まだ子どもだ。 おそらく親はどちらかがゆっくりれいむ、れいむ種は母性が強い。傷ついた子を見捨てられるわけがない。 妹は茂みから飛び出すと、口にテープを貼り、声を出せないようにする。 「さ、お姉様、畸形偏愛者の出番ですわ」 「私は先天性のが好みなのに・・・じゃあ、れいむちゃん、私が可愛くして差し上げますね」 姉はゆっくりれいむを切り株の上に置き、楽しそうに壊し始める。 まず、解剖用のハサミで頬を切り口を作る。れいむは今まで感じた事のない痛みと恐れに、身体を必死に揺らす。 「あれ、ダメね。手元が狂ってしまうわ」 ハサミがれいむの中身の奥の方に差し込まれる。手元が狂ったのだろう。 「あまり動かない方がいいわ。私も楽しめないし、あなたも可愛くなれないわ」 ハサミが抜き取られると、若干の痙攣こそするもののれいむの動きは殆どなくなってしまう。 それから先鋭ピンセットで左の目玉を抜き、それをハサミで切って広げた右目に納める。 れいむ種の特徴であるもみあげのような髪の部分は両方切り取られ、それが空になった左目に差し込まれる。 まるで眼から髪の毛が生えてきたようだ。 「お姉様、あまりやりすぎると育児放棄してしまうわ」 「あら、残念ね。もっと可愛くできたのに」 姉は口を塞いでいたテープを勢い良く剥がす、そのせいで口の一部が千切れ、 口は変形してしまった。その口に姉は名残惜しそうにキスをすると、そっと地面に転がす。 「じゃあね。続きはまたね。死なないでね。ゆっくりしてね。それから、それから、きっと迎えにいくから」 「お姉様、行きますよ。さ、早く」 「ぱ、ぱちゅりー、これはどういうことなの!ゆっくりせつめいしてね!!」 ゆっくりれいむは自分の娘だろうものを見て、混乱のあまり強い口調で長のぱちゅりーに迫る。 あの姉によって“可愛く”されてしまった子は見るに耐えない無残なものであった。 群れの誰もが眼を背け、もう一方の親であるゆっくりまりさも一度見てそれ以降、直接見ようとはしない。 長のぱちゅりーもこうなったのは単独行動、そして子れいむの傍にあった飴玉、あれに関わったからだろうと考えるが、 泣きじゃくる母れいむの手前、何も言えずただ謝るばかりだった。 「あやまちゃったダメだよ」 そう言い出したのはゆっくりありす。ありすは続ける。 「そのこはおさのいうことをきけなかったこでしょ?」 「どうじでぞんなごというのぉ!!」 「やくそくごとをまもれないこはゆっくりできないよ。みんなみて、あれがやくそくをまもれないこのまつろだよ!!」 群れのみなは侮蔑の目でれいむの子どもを見る、じっとりとした視線。 子れいむは向けられた事のない視線に怯える。まだ微かに見える右目はその視線と絡む、流れ込んでくるのは慈愛でも労わりでもない。 ぶるぶると子れいむは怯える。壊された口では長い言葉を喋る事はできない。 「きょわい」それだけ言うと、すぐに母れいむの後ろに隠れる。母れいむは怒りに震える。 可哀想な自分の子がどうしてこんな不条理な目に合わなければいけないのか、 それは本来、子れいむをこの姿にした誰かに向けられるものだが、周りからの侮蔑を受けて、同族に向けられる。 「れいむ、ぱちゅりーがもっとつよくいえばよかったね。ごめんね。おうちでこのこをやすませてあげてね」 ありすの言葉を受けてもぱちゅりーは母れいむに謝った。 この親子を切り捨ててしまっては群れ全体に不安感が増す。そうなってしまっては群れは自分の手に負えなくなる。 とにかくこの親子を切り捨てない。それを見せれば無闇に行動する個体も減るし、群れの連帯感は維持される。 「お姉様、ここは群れの長が優秀なのかしら?」 「そうね。すぐに分裂するかと思ったらそうでもないわね」 「そろそろ巣を襲っちゃおうかしら」 「いいえ、ダメよ。長が優秀ならもっと揺さぶりをかけましょ。その方が楽しめるわ」 飴玉の罠にも群れのゆっくりが引っかからなくなった頃、姉妹は別の作戦にシフトする。 別にそんな大層なものではない。妹は自分の目の前に一本の花を見つける、それを踏み潰す。 「私たち二人じゃ秋の山の恵みは多すぎるわ」 「もうすぐ人が森に入るわ。私たちは人は食べないけど、ゆっくりは食べるものだけ潰していけば良いのよ」 「あーぁ、もうこんな森燃やしてしまえば良いのに」 「お姉様、そんなことしては前に壊した子れいむと再会できませんわ」 「壊した?あなたにはあのれいむちゃんの可愛さが分からないのね。まあ、いいわ、火事はみんな困るものね」 「むきゅー・・・ゆっくりできないわ」 群れの備蓄が減る。採集に行くにも人間たちがキノコなどは採ってしまう。 普段なら他の花や木の実を採るが、それも今年に限っては無いに等しい。 「ぱちゅりー、あぶないかもしれないけど、かりにでるべきだよ」 ゆっくりまりさがそう言う。この群れはぱちゅりーとこのまりさ、それと前に母れいむに謝らないように言ったありすの三匹が取り仕切っている。 狩りや外敵に関してはこのまりさが担当になっている。使命感の強いまりさは例え死ぬ事になっても群れに食料を届けたかった。 ぱちゅりーはありすの方をチラリと見る。ありすとまりさは夫婦だからだ。 ありすは“しかたないわ”と笑う。その結論に至るまでにありすは何度も泣いたのだろう。 いつもの綺麗な顔ではなく、今日は少し目が赤く、目元がふやけている。 「まりさ、ぱちゅりーのいうことをきいてね。まず・・・」 まず、3匹1組で動く事、近くに何かが来たら食料を捨ててもすぐに逃げる事、採集するのは1匹、見張りを2匹にする事、 誰かに襲われたら巣に戻らず、別の場所で待機して外敵を巣に案内しない事、助からない負傷者は見捨てる事。 「わかったよ。てっていさせるね!!」 「きをつけていってきてね!!」 「うん、みんなをもっとゆっくりさせてあげるね!!」 ぱちゅりーと約束を交わし、ありすと無言の頬ずりをした後、まりさは狩りの仲間を集めた。 「ふぅ、花を踏むのも飽きちゃったわ。花なんてちっとも綺麗じゃないし、可愛く鳴いてもくれないんですもの」 詰まらなさそうに姉が呟く。妹はそれに何か返答しようとしたが、姉の手で口を塞がれる。 姉はポケットから小さなナイフを取り出すと、茂みの向こうに投げる。 「ゆぎゃあああ!!」 短い悲鳴。 「まりさ、だいじょうぶ?」 「れいむ、ゆっくりしてないでにげるよ」 ずりずりと何かを引きずる音、その音と押し殺したような泣き声、時々漏れる悲鳴。 それを聞けば、どこまで逃げていったかわかる。 「さ、これで巣の場所は分かるわ。私のれいむちゃんをやっと取り戻せるのね」 「じゃ、さっきのれいむ達を追いましょ」 「そうね。嬲るのも良いけど、狩りも良いわ」 姉妹は音を立てずにれいむ達を追う。れいむ達は仲間のまりさが傷を負っているため、後ろに気を配る余裕は無い。 れいむ達が洞窟に逃げ込むと、ナイフの刺さったまりさからそれを抜き、2匹で傷口を舐める。 姉のナイフは赤ちゃんのゆっくりを“可愛く”する為の物で刃渡りも10cmに満たない為、傷はさほど大きいものではない。 「ぺーろ、ぺーろ。まりさ、だいじょうぶ?ゆっくりできる?」 「うん、ごめんね。ゆっくりできてきたよ」 「れいむたちがゆだんしてたよ。ごめんね」 姉妹は洞窟の前までやってくるが、何処を見渡しても他のゆっくりの姿がない。 れいむ達はぱちゅりーの言いつけを守り、真っ直ぐ巣に戻らず別に用意されている避難所に逃げ込む。 この洞窟は入り口も狭く、野犬に襲われてもしばらくそこで暮らせるだけの食糧の備蓄もある。 それにぱちゅりーが作ったお薬もある。傷ついたまりさの身体にそれを塗り込めば、この危機もきっと乗り越えられる。 「もしかして騙されちゃった?」 「そうみたいね、お姉様。素敵な子達ね。壊す意欲が湧くわ」 「巣の場所を教えてもらいましょ。3匹いたわ。誰が教えてくれるかしら」 妹は適当に木の枝を折り、洞窟の入り口を塞ぐ、姉はマッチで起こした火でそれに火をつける。 「あ、こら、はしたないわよ」 スカートをパタパタさせ、風を送る妹に注意しながら、煙で洞窟の中を一杯にする。 その様子を楽しそうに見ながら妹は提案する。 「別に巣の場所なんてこの子達に聞きださなくて良いわ。このまま燃やしちゃいましょ」 「森は広いわ。時間をかけていると冬篭りで洞窟中に隠れちゃうし。聞き出してから燃やしても損はしないわ」 「もう、お姉様った・・・あの子れいむをよっぽど気に入ったのね」 しばらく話していると洞窟からゆっくりが飛び出してくる。塞いでいた木の枝を押しのけて、 ゆっくりれいむが2匹とゆっくりまりさ、妹はすかさず鉈でれいむを1匹真っ二つにする。 少女の力でも振り降ろせば重さを十分に生かせる。 姉は動きの悪いまりさは放って置き、もう1匹のれいむを襲う。地面に触れている足とゆっくりの底の部分を掴み、適当に引き千切る。 その間に1匹処分を終えた妹がのろのろと逃げるまりさに歩いて追いつき、ゆっくり抱きかかえる。 杭をれいむとまりさの足貫くように地面に打ち込み、逃げれないようにする。 まだ少しは動けるが、大きく動けば足に大きな穴が空く。そうなってしまえば巣に帰ることもできない。 姉は退屈そうに木の根元で座っている。やってきたのは妹の方だ。笑顔で妹は2匹に挨拶する。 「こんにちは」 2匹は返答しない。決まっているこの人間がゆっくりできないからだ。 「お返事しないわ。お姉様」 「したい気分にさせてあげれば良いわ」 「そうね」 2匹に返事をしてもらえるようにするには、ゆっくりを飼った事のある人間ならゆっくりさせると答えるであろう。 無論、その事は妹も知っているが、それだけが正解ではない。 まりさの帽子を取り上げ、踏む。何度も何度も踏む。土で汚れ皺くちゃになるまでそれを繰り返す。 次はれいむだ。リボンを解き、同じようにしてやる。それを2匹にまた返してやる、まりさには丁寧に帽子をかぶせ、れいむにはリボンを結んでやる。 どちらも見るも無残な様で。仲間からはイジメの対象になりそうなぐらいだった。 「こんにちは」 2匹は返事をしない。決まっているこの人間がゆっくりできないからだ。 妹はニコリと笑い。れいむの髪を踏む。そしてその足をポイ捨てしたタバコの火を消すようにグリグリと捻る。 頭皮から髪は抜けそうになり、れいむは何度も悲鳴を上げる。 「やめで!!おねーざん、れいむにひどいごどじないで!!!」 妹は返事をしない。決まっているこのゆっくりが返事をしないからだ。 「ゆぎぃいいい!!・・・・ゆぃぎぃいいい!!・・・・ゆぎゃあああああ!!!」 断続的に続くれいむの悲鳴、痛さで気を失っても次の痛さが意識を覚醒させる。 「やめで、まりさがまりさがかわるよ!!れいむにひどいこどじないでぇえ!!」 それを聞いた姉がクスクス笑う。 「やーね、この子、もしかして自分はやられないと思ったの?」 それを無視して妹のれいむへの虐待は続く。髪の殆どが抜け落ちた頃、 れいむは目を見開いたまま気絶していた。覚醒させようと思ったが、となりでこのまりさのように喚かれると煩いので、わざとそのままにした。 妹はそれまで泣き叫んでいたまりさに馬乗りになる。ポケットから解剖に使うメスを取り出す。 その刃先をだんだんとまりさの右目に近づけていく、まりさは今まで眼に傷を負った事は無かったが、本能でそれはゆっくりできない行為だと感じ、 大きく暴れようとするが、少女の全体重をゆっくりが振り払えるわけもなく、メスは真っ直ぐ目に迫ってくる。 どうにか避けようと、身体を振るが、少女が馬乗りになっているため僅かにしか動けない。目にメスが触れる。運悪くそれは身体を右に動かそうとする動作の途中だった。 目には横に傷がつき、急に右目が痛くなる。今まで見えていた世界に白い線が入り、上手くメスの場所が確認できない。 それでも尚、まりさはメスから目を遠ざけようとするものだから今度は左に身体を動かす。 「ゆぎゅうううぅうう!!!」 視界に入った線は右に伸び、右目の視界のほとんどを奪う。とっさにまりさは右目を閉じ、左目だけでものを見るようにする。 すると、右側は全く見えないが、白い線は消えてしまう。その判断も妹の行為の前ではあまり意味を持たなかったが、 妹はぎゅっと閉じた右目のまぶたをメスで切り取っていく。目だけではなく目周辺の激痛とともに視界に入っていた白い線が再びまりさの目の前に現れる。 「ど、どうじでぇ!!なにごれ、ゆっぐりでぎないよぉおお!!!」 妹は馬乗りをやめ、れいむを蹴り飛ばし目を覚まさせる。 そして2匹に「こんにちは」と挨拶をした。 「むきゅー・・・」 ぱちゅりーは巣で一番高い岩場に登ってはきょろきょろ辺りを見回している。 狩りに出て行った5組の中で1組だけがまだ帰っていない。 その組には自分を補佐してくれているありすとまりさの子であるゆっくりまりさがいるのに。 2匹は自分には言わないが、きっととても心配しているだろう。 捜索隊を出すのは危険すぎるし、ぱちゅりーができる事といえばその組が向かった方角への狩りを禁止することだけだった。 補佐役のまりさは今日も仲間を率いて狩りに出かける。ありすは残った仲間と協力して冬篭りの準備をする。 後ろ髪を惹かれる思いでぱちゅりーは岩場を降り、ありす達に合流し冬篭りの準備を手伝いに行く。 「ぱちゅりー、わるいんだけど。あのれいむがきてないのよ」 ありすはぱちゅりーにそう告げる。あのれいむとは前に子をボロボロにされた母れいむの事だ。 あの事件以降、パートナーのまりさは子に愛想を尽かし、狩りに出かけてはすぐ寝る生活を繰り返し、殆ど子に構っていないらしい。 その為、今は母れいむが1匹で傷ついた我が子を育てている。 次第に母れいむは巣から出てこなくなり、群れからも孤立していく。 最初は仲間がぱちゅりーの声を受け、助け合おうとしたが、一度受けたあの侮蔑の眼差しを母れいむも子れいむも忘れられずにいる。 ぱちゅりーはみんなの作業している所からビワのお団子をひょいと咥えると、れいむ達の巣へ向かった。 後ろから「それはごちそうなのよー」というありすの声がしたが、ぱちゅりーは聞こえないフリをした。 「むきゅー、れいむ、いるかしら。ゆっくりさせてね」 巣の中は暗い。本来ヒカリゴケや光の取り入れ口で巣の中は適度に明るい状態が保たれているが、 自分の姿を見られることを嫌がった子れいむの為に母れいむが一切の光を遮断してしまったのだ。 暗闇の奥から声がする。 「ぱちゅりー?」 この親子が唯一信じられるもの、それが群れの長のぱちゅりーだった。 一度も侮蔑する態度をとらず、過ちを犯した子を責めず、労わりの心を持って接してくれた。 「そうだよ。ゆっくりさせてね」 「ゆっくりしていってね」 母れいむが入り口近くまで出てきて出迎える。子れいむはまだ光のある場所には来れないらしく。 うしろから「ゆっくちしちぇいっちぇね」という可愛い声だけが聞こえる。 「れいむ、おチビちゃんのようすはどう?」 「うん、おくちはもうすっかりなおったけど、おめめは・・・」 口の傷は舐めれば簡単に治った。左目の髪の毛は取り払われ、右目の傷も癒えたが、 右目に残っている左目と、失った左目は簡単には再生されない。 時間をかけたり、大きな怪我でも治療してくれるゆっくりえーりんを探せば良くなるのだが、 冬を目の前にしてはのんびり治療も言っていられない。 「これ、ビワのおだんごだよ。おチビちゃんにどうぞ」 「ゆ?ありがとう。ゆっくりできるよ」 「ありがちょー」 奥からも感謝の声が聞こえてくる。 「れいむ、そろそろふゆごもりのきせつだよ。ごはんはある?」 「まりさがもらえるぶんだけだと・・・」 母れいむはこの所、群れの作業に参加していない。そのため食料はまりさが狩りに出る報酬分しか貰えていない。 子れいむの分は怪我をしているという事でいくらか支給されるが、冬篭りとするとなると心細い。 「れいむ、ひろばでありすたちとおだんごをつくろ。おチビちゃんはぱちゅりーがみてるから」 それはぱちゅりーにしては卑怯とも取れる提案だった。 ぱちゅりーは群れの長だから、作業の指示だけでも十分に食料が貰える。 このぱちゅりーはそれでも尚、作業に参加するから強い求心力を持っていたのである。 しかし、母れいむは何もしないでいては食料を貰う事はできない。 群れの約束を変えずに、母れいむに食料を渡すには代わりに子れいむを見てやり、働きに行って貰う他無い。 自分は作業をしなくても食料が手に入るのだから、 母れいむも言葉に詰まる。自分に親切にしてくれたぱちゅりーを悪者にしてまで。 その沈黙を破ったのは子れいむだった。 「おかーしゃん、れいみゅ、おすちゅばんしちぇるよ。おささんといっしょにおしごちょいっちぇきっちぇ」 母れいむは子れいむに何度も確認する。お昼にどのご飯を食べれば良いか、 夕方には帰ってくる事、まりさが先に帰ってきたら自分が作業していることを伝える事、 ぱちゅりーも何度も母れいむに確認した。別に自分を悪者にしても良い事を。 それでも母れいむはぱちゅりーの提案を断り、子れいむの言ってくれた様に作業に出かけた。 「お姉様、お姉様!」 いつの間にか木に凭れ掛かって寝ている姉を妹が起こす。 「あら、寝てしまってたの?で、巣の場所は分かったかしら?」 「それがね。強情なの、この子達」 姉は妹の向こうにいるゆっくりを見る。 れいむの方は髪を全て抜かれ、両方の頬はパンパンに腫れあがっている。 空気を取り込んで膨らんだのではなく。注射器で空気を注入したのだろう。口が開いていても頬は膨らんだままだ。 よく見ると膨らんでいるのは頬だけではない。額も目元もまるで全身蜂に刺されたようだ。 まだ「やめで、やめで」と喋っているので生きているのだろうが、 まりさの方は身動き一つしない。両目の目蓋は切り取られ、目はギョロリと天を見つめている。 頬には何本も針が刺されていて、激しく動いたのだろう。足にはぽっかりと大穴が開いている。 れいむに比べ傷は少ないが、それが致命傷になったのだろう。その大穴からは餡子が漏れ出している。 「そっちのれいむ、まだ生きているんでしょ。開放してあげればきっと巣まで逃げるわ」 「また騙されちゃうかも」 「そこまで理性が残っているかしら?それに避難場所を潰しておくのも一つの手よ」 姉はれいむを固定していた杭を抜くと、れいむは自分が自由になったと分かったのか、ずりずりと何処かへ向かう。 「あれ飾りが無いと困るでしょ」 そう言って姉はまりさの帽子をれいむにかぶせてやる。 れいむはそんな事気にもせず「いだいいだい」と逃げていった。 群れは大混乱だった。今まで出一番酷い状態のれいむが巣のすぐ傍で倒れていた。 それも補佐役2匹の娘のゆっくりまりさの帽子をかぶってだ。 「こんなことゆるさないよ!!」 群れの誰かが言う。それに同調するように反抗と怒りと憎しみの声が湧く。 それを補佐役と長のぱちゅりーが必死に宥める。今出て行っては相手の思う壷だと、 ぱちゅりーの予想は当たっていた。姉妹は巣を確認できる場所からずっとゆっくりが飛び出してくるのを待っていた。 巣の周りは何処からでも逃げられる。ゆっくりが一目散にさっきれいむの逃げてきた方向に向かうなら一網打尽にできるが、 姉妹が踏み込んでいって散り散りに逃げられては逃げ延びるゆっくりの方が多いだろう。 ぱちゅりーは必死に考える。他に冬篭りをできそうな場所に移動するのは時期的にももう無理だ。怪我をしているものも多い。 人間をやっつけるなんて考えは論外だ。勝てるわけが無い。そこでぱちゅりーはみんなに提案した。 「みんな、このあきはゆっくりできなかったね。つぎのはるにゆっくりするためにみんなはやくふゆごもりをしようね!!」 少し食料に不安は残る。しかし、洞窟の奥に隠れてしまえば人間の手は届かない。煙も光の取り込み口から抜けていく。 群れの仲間はぱちゅりーの言葉を聞いて、落ち着きを取り戻す。 「お姉様、どうしましょ?」 「んー、ゲームはあのぱちゅりーの勝ちかしら」 「負けるのは嫌だわ」 「仕方ないわ。さ、帰りましょ」 晩秋、姉妹達は森を去る。冬になれば人間とて森で活動する事は簡単ではない。 ぱちゅりーの群れは冬を越す。不安があるとすれば秋にいた外敵がまた現れないかという不安、 春になったらすぐにでも巣を変えよう。 春が来る。備蓄がギリギリの状態で冬篭りを始めたため、いつもより早く外に出る。 まだ少し肌寒いが春の息吹を感じる。みんなで食料を集める。秋の事があったから、秋と同じ約束事を徹底させて。 「あーあ、掃除もこれで終わるわ」 妹の右手には胴付きゆっくりふらんの手が握られている。 ふらんは嫌そうにジタバタする。 「しね、しね」 「私が一杯可愛い子を生ませてあげたのにどうしてこんな普通のが生まれてくるのかしら」 別段、そのふらんはブサイクな形はしていない。むしろ、数日間、食事をしていないためほっそりとして、 人が見ればとても形が良い。姉が妊娠しているふらんに劇薬を与えて生ませたが、この1匹だけはそれ以前に形を形成していたらしく。 畸形として生まれなかった。他のふらんの姉妹達は腕が無いもの、目が飛び出ているもの、喋れないもの、耳が聞こえないものなど、 何かしらの障害や畸形があった。そのため姉によって大変可愛がられたが、このふらんだけは姉妹のれみりゃ、ふらん狩りを手伝わされ、 そして、協力したにもかかわらず、その命を今ここで終えようとしている。 「しね!しね!!」 姉はふらんを仰向けに寝かし腹を何度も踏む。 「う゛っ、う゛っ、う゛っ、う゛ぎゃああああ!!!」 4度目の踏み付けでふらんは口から中身である餡子を吹き出し、それが姉の靴にかかる。 「汚した・・・フフフ、コイツ、私の。フフフ」 「あーあ、怒らせちゃった。ふらん、お姉様のお怒りが静まるまでは生きていてね」 「おい!おい!」 呼びかけるたびに姉はふらんの腹を踏む。それまでの押さえる程度ではなく踏み潰すような勢いだ。 「汚れた。汚い、お前の、中身で!!」 ポンプの様にふらんは餡子を吐き出す。 「いだぁい、じね、じねぇ!!」 「うるさい、この、ハハッ、おい、死ねよ」 足、腕、首、羽、姉はそこを何度も踏む。次第にふらんの体は中身の餡子が減りぺしゃんこになってくる。 「キャハハ、ぺしゃんこー、お姉様ったらエグーイ」 キッと姉に睨まれると、何も言ってないよという風に妹は視線をそらす。 また姉の責めが再開され、それはふらんが死ぬまで続く。 「紙ナプキンを持ってきて良かったわ。あんなのの中身で汚れちゃうなんて」 姉は鞄から取り出した紙ナプキンで靴に付いた汚れを拭う。 「落ち着きました?」 「元から私は冷静です。少しあなたより綺麗好きなだけよ」 「そうですね。さ、参りましょ。ぱちゅりーが待っていますから」 「ゆゆっ?ぱちゅりー、もういっかいいってね!」 「むきゅん、いいわ。みんな、ここをひっこそうとおもうの」 群れの仲間達はざわつく。このゆっくりプレイスを捨てる。 でも、秋の事だってあるし、ふらんやれみりゃがいないわけじゃない。 ここは果物も取れてとてもゆっくりできるのに。意見は分かれる。 ぱちゅりーも無理強いをするわけではない。多数決を採って反対が多ければここに残るつもりだ。 結果は反対がやや優勢、ぱちゅりーはここに残る事を決定する。 そこから梅雨まではゆっくり達にとってじっくり食料を集める期間だ。 梅雨になれば、冬ほどでもないが外出できる機会は減る。今のうちに備蓄をしておかないと少し辛い。 最悪、出さなくて良い被害を出してしまう可能性もある。 ぱちゅりーは狩りの決まり事を3匹1組から2匹1組に切り替え、残ったゆっくりに子ゆっくり達の狩りの教育を任せた。 教育係には補佐役のまりさや母れいむのパートナーのまりさもいる。 補佐役のまりさは秋に子どもを失っている為、子ども達の教育には熱心で少し厳しかった。 「あーあ、とりあえず梅雨を明けないと繁殖が始まらないからどうしようかしら」 暇そうに妹はソファーにごろんと転がる。姉はその向かいにある1人用のソファーで紅茶を楽しんでいる。 「私のふらん達と遊ぶ?みんな可愛いわよ」 妹は姉の飼っている胴付きふらんの姿を思い出すと、ブンブンと首を横に振った。 「あ、そうよ」 姉が何か思い出したかようだ。 「ふらんに玩具が欲しかったの。1匹ぐらいで良いからゆっくりを捕まえに行かない?」 「・・・私も紅茶を頂いてからで良いかしら」 「勿論、さ、どうぞ」 「ゆゆっ、みんなしずかにしてね!!」 子どものゆっくりを連れて先頭を歩いていた補佐役のまりさがみんなに言う。 「お姉様、別にわざわざ森に入らなくても」 「野生の方がふらんを怖がるのよ」 「おチビちゃんたち、あのまりさについてゆっくりにげてね」 母れいむのパートナーのまりさが指名される。そのまりさも頷くと「いくよ。そろーりそろーり」と静かに人間の声から遠ざかる。 そして、ある程度子ども達が離れたのを確認すると、補佐役のまりさはわざと音を立てて人間たちの方に飛び出す。 「ゆ、ゆっくりしていってね!!」 姉妹はキョトンとし、顔を見合わせる。 こんな警戒心のないゆっくりがこの森にはいたのか、あのぱちゅりーの群れのゆっくりじゃないのだろうか、 「ゆっくりさせてもらっているわ。あなた、どこから来たの?」 「あっちだよ」 わざと巣とは別の方向を向く。ゆっくりは自分のゆっくりプレイスを守るために無闇に人に教えないのだが、 このゆっくりまりさはよっぽどバカな個体なのだろうと妹は笑いそうになった。姉も笑っていたがそれは別の意味でだった。 「あなた、私達のお家に来ない?とてもゆっくりできるわ」 有無を言わさず捕まえれば良いのに、姉はそんな質問をしてみる。 「ゆ?・・・まりさは・・・おうちがすきだから、いけないよ」 バカなゆっくりではない。 「みんな、そろそろ逃げ切ったかしら?あなたも大変ね。仲間を逃がすために犠牲になって」 「あら、そうだったの?」 「ゆゆっ?!おねーさんたち、なにいってるの?ゆっくりせつめいしてねー」 姉はゆっくりまりさを意図も簡単に捕まえる。 死ぬ覚悟はある。時間稼ぎはできた。何も怖くない。 まりさは怯えながらも満足感で一杯だった。殺されても本望だと思った。 「じゃあ、行きましょうか」 姉妹たちの屋敷に帰る道中、森を抜けたあたりで姉は急にまりさに喋りだした。 「別に子を殺す為に来たわけじゃなくて、ふらんの遊び道具が欲しかっただけよ」 「あなた達の巣はもうバレてるし、あなたはあそこで逃げても良かったのよ」 「あなたはむしろ、生き残って逃げてこの事実を知らせるべきよね。ぱちゅりーに」 姉の腕の中で急に暴れだすまりさ、こいつらが自分の娘を、群れの皆を苦しめた奴らだ。 しかし、せっかく聞けた情報も持ち帰れず、まりさは姉のふらんの玩具になった。 腕のないふらんに蹴られ、耳の聞こえないふらんには何を言っても通じない。 ふらん達は初めての獲物に興味心身だ。ある程度いたぶられるとまりさは玩具から食事になった。 「ま、まりさが?!」 補佐役のまりさが捕まった事はもう1匹の補佐役のありすに重くのしかかる。 娘だけでなくパートナーまでも失う傷心のありすを母れいむのパートナーであるはずのまりさが慰める。 このまりさは補佐役のまりさとの姉で狩りの腕も群れの中では1番だった。 それが優しく熱心だからという理由で妹のまりさが補佐役になり、群れで一番美人のありすと番になった。 本来、狩りの腕では自分が上なのに。自分のパートナーはただのれいむ、それも傷だらけの子に愛情を注ぐ、 このまりさにとっては理解したがたいれいむだった。 すっきりを求めても断られ、新しく子を望んでも今の子で手一杯というれいむにまりさは次第に不安が溜まっていく。 しかし、チャンスが来た。ここで補佐役のありすを射止めれば、れいむなど捨ててしまえる。 補佐役のありすの口添えさえあれば、自分を新たな補佐役にし、あわよくばれいむを追放してしまえる。 ありすを慰める裏で黒い思惑がぐるぐると渦巻いていた。 梅雨が明けるとゆっくりにとっての恋の季節が始まる。 母れいむは次第に回復していく子れいむの姿に喜んでいた。 しかし、一方でお家に帰ってこないパートナーのまりさの事を心配していた。 近頃、補佐役のありすの所に行っているらしい。ありすはまりさからすれば義理の妹で、 娘とパートナーを立て続けに失い、心配なのは分かるが、昨日今日と帰ってこない。 その事をたまたま遊びに来ていた長のぱちゅりーに相談する。 「むきゅー、それはたいへんね。わかったわ。ありすやまりさにそれとなくきいてみるわ」 「おねがいね。ぱちゅりーだけがれいむのみかたよ」 その夜、ぱちゅりーは問題のまりさとすれ違う。 「あ、まりさ、ちょっといいかしら」 「どうしたの?」 「ぱちゅりーのおうちにこない?」 まりさはきっと補佐役になって欲しいという長からのお願いなんだとすぐに思った。 「いいよ」 気を良くしたまりさはぱちゅりーの巣に入っていく。 しかし、切り出されたのは最近、母れいむが心配しているという話だった。 「まりさはれいむのパートナーでしょ。おチビちゃんのこともあるからきょうりょくしてあげてね」 「・・・おさ、おさはれいむのことがすきなの?」 「むきゅ?どうして?」 「おさはれいむのことをきにかけすぎだよ。おさ、とりひきしない?」 「とりひき?」 「れいむをあげるから、まりさをありすのパートナーにしてね!」 「むきゅ?!ダメだよ。なにいってるの?!」 あまりに身勝手な提案にぱちゅりーもつい声を荒げてしまう。 「まりさ、ぱちゅりーはれいむのことだけがしんぱいなんじゃないよ。まりさのことも、ありすのこともしんぱいなんだよ」 「・・・」 「まりさにはあたらしいほさやくをやってほしいの。だから、まずはれいむとおチビちゃんに、つぎにみんなにやさしくしてあげてね」 「・・・ぱちゅりー」 「良い天気だわ。ゆっくりが死ぬには勿体無いぐらい」 「さ、行きましょ。みんな子作りの頃だから巣にいるし、動きが鈍いわ」 早朝、姉妹達は出発する。まだ空は薄暗い。用意したのは沢山の爆竹。 開いている巣の中に入れて、導火線に火をつける。しばらくの沈黙の後、堰を切ったような爆音が森に響く。 逃げ出てきたゆっくりから足に杭を打たれその場に固定されていく。 中には妊娠しているものも多く。仲の赤ちゃんの事を思ってかそろりと逃げる者もいたがすぐに捕まってしまう。 一つ目の巣が終わったら次の巣に、中にはまだ爆竹を使っていない巣から飛び出してくるのもいたが、 姉妹はそれらも上手く、地面に貼り付けにしていく。 「ぱちゅりー、ぱちゅりー」 姉妹の隙を見て逃げ出した新しい補佐役のまりさは長のぱちゅりーを起こす。 何が起きているかを説明すると、ぱちゅりーにありすや母れいむ、子れいむを連れ逃げるよう言った。 「おねがい。まりさはすこしでもみんながにげるじかんをかせぐよ。い、いもうとがやったように」 しかし、ぱちゅりーが連れ出せたのは母れいむとそのおチビちゃんだけ、ありすはもう姉妹に捕まっていた。 「あら、れいむちゃんが・・・あら、あそこにいるわ。ここはお願いね」 「ええ、先に楽しませていただくわ」 姉は駆け足でぱちゅりー達を追いかける。 妹は。 「や、やめてね!!」 勢い良く妹に体当たりをするまりさ、妹は少しよろける。 「イタッ、もー、あなたね。さっき体当たりしたのは」 鉈の刃ではなく峰の部分をが獲物に向くように持ち替え、妹は笑う。 「お姉様が戻るまで少し遊んであげる」 軽く鉈を振る。まりさが後ろに打ち飛ばされる。 手加減をしているから致命傷にはならない。致命傷にはならないからまりさは痛いのにまだ立ててしまえる。 逃げれた仲間は3匹だけ、その3匹のために、いや、この人間を殺せば、みんなを救える。 その一心でまりさは戦った。妹はというとまるでワルツでも踊っているかのように遊んでいた。 「さ、私のれいむちゃんを返して」 子れいむはスッと母れいむの後ろに隠れ、ぱちゅりーが母れいむを守ろうと立ちはだかる。 「やめてね。こわがってるよ!!」 「むきゅん、ゆっくりしてないでもりからでていってね!!」 姉は仕方無さそうに、腰に提げていたククリナイフを鞘から抜く。 妹の鉈とは違い、鋭利なナイフの刃先はぱちゅりーの横をすり抜け、母れいむの頬を切り取る、 さらに湾曲している刃を使い返す力で、頭頂部を切る。ぱちゅりーは動きにやっと反応できたのか一歩遅れて母れいむの真正面に立つが、 すでに母れいむは致命傷を負っていた。 「どいて」 足で、ぱちゅりーを払いのけ、ナイフで母れいむを突き刺し茂みに放り投げる。 「迎えに来たわよ」 子れいむは何もかもがグニャリと折れ曲がったような感覚に陥る。 「ゆけっけっけっ」 楽しそうに笑う子れいむ、 「フフフ」 姉もとても楽しそうだ、ナイフを鞘に戻し、手に子れいむを乗せる。 そして、ぱちゅりーの髪を掴むと妹の所までゆっくり歩いていく。 ぱちゅりーは群れの仲間全員が解体、破壊されていく様を見せ付けられ、とうとう。 「むきゅ、む、むきゅきゅ。むきゅきゅきゅきゅ」 それから子れいむとぱちゅりーは姉妹の屋敷で一生ゆっくり過ごせました。 ~あとがき~ あ、長っ、今回長っ?! 今回はシンプルなアレな女の子達を書いてみたかったのと麻雀のお題消化です。 「赤姫」「狂い花」と違い特にネガティブな感情もなくポジティブに虐待を楽しむ女の子達です。 姉は面倒臭がりの畸形偏愛者で多少潔癖症で“可愛く”ないもので自分の何かが汚れると酷く怒るようです。 妹はマメなサディスト、ただやり過ぎる癖があり、拷問は下手なようですね。 どちらかというと「人間」に近い作品だったんじゃないでしょうか? 避妊ありすの人さんが今回、子どもをSSに出していましたが、あー、書き手によって子どもってこんなに変化するもんですね。 もう一個の麻雀お題を消化しつつ、実験シリーズやこの姉妹の別のSSなんかもかけていけばいいな。 by118
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ゲバ アナーキーインザゆっくり ~ゆっくり闘争っていってね!!!~ パンクとは全く関係有りません。ごめんね 最近この村のゆっくり共に変化が現れた。 普通ゆっくりはそれぞれが勝手な行動を取るだけだが、この頃は何らかの統率が見て取れる。 おそらく強力なリーダーを持った群れが出来たに違いない。 人間の被害が拡大する前に、何とか群れを崩さねばならないだろう。 「ゆっくりしていってね!!!!」 群れを壊滅させる方法を皆で練っていた最中に大音声が鳴り響いた。 この大声、普通のゆっくりの物ではない。皆がその声のした方向を見ると、そこにはこれまで見たこともないような大きなゆっくりが居た。 そこらの木々よりも大きな体に髪に結んだ幾つもの飾り、そのゆっくりはドスまりさと呼ばれるものだった。 突然のことに対処のしようもない我々だったが、ドスまりさには村を襲撃しようなどというつもりはなく、何やら談判しに来ただけのようだった。 知能が高いと評判のこの大饅頭、どうやら人間と対等の関係を結びたいらしい。人里は荒らさぬ、そちらも我々に無用の干渉をするな、とのことだ。 饅頭風情と相互不可侵条約を結ぶなど屈辱も良いところだが、我々の命は今のところこの大饅頭に握られている。こいつが暴れれば留める術を我々は持っていない。 そこで渋々ながらも我々は承諾した。それをこの饅頭は自らの主張が話し合いによって認められたと勘違いして喜んで居る。糞饅頭め。 確かにゆっくりによる被害は減った。初めの内は。 しかし次第に元に戻っていった。我々も作物を盗みに来たゆっくりは容赦なく潰した。ドスとはもともとそう言う取り決めであった。 自らが裏切ったことを都合良く忘却し、あるいは初めから理解して居なかったのか、死の間際までドスに頼りドスの救いを求めながら潰された饅頭も居た。 まあ元々この程度は想定の範囲内であった。しかし、どうしても食料が足りなかったのだ、と泣きながら訴えつつ潰されたものも居た。 もしもこのことが本当だとしたら、なりふり構わぬ奴らはいずれドスまりさの主導の元に、人間の食料を奪いに来ることも考えられる。それだけは阻止せねばならない。 やはり先手を打つべきなのか。 ある日私が道を歩いていると一匹のゆっくりれいむに出くわした。 「ゆっくりしていってね!!!」 ドスのおかげで人間は自分達には危害を加えないとわかっているので、人間に怯えること無くゆっくり本来の反応を見せてくれた。ゆっくり達にとっては良い時代になったものだ。 「ゆっくり・・・か。君は本当にゆっくりできているのか?」 れいむに私は問いかけた。 「ゆっ?れいむはゆっくりできてるよ!!」 当然の反応だ。 「しかし、君よりももっとゆっくりできているゆっくりが居るんじゃないか?」 「ゆゆっ・・・」 黙り込んでしまった。どうやら思い当たるところが有るようだ。 「・・・ドスまりさか?」 「ゆっ!」 れいむは驚いたような表情をしたまま固まってしまった。 「あいつはあの巨体だ。どうせ普段は自分で餌も取れないんだろう。権威を笠に着てふんぞり返ってるだけじゃないのか?」 「ゆゆっ!!そんなことないよ!!ドスまりさはたしかにごはんはとれないけどみんなのためにがんばってるよ!!!」 普通のゆっくりならここで嫉妬に狂っていただろうが、このれいむはマシな部類のようだ。 「本当にがんばってるのか?ただ体がデカいだけで誰も逆らえないんじゃないのか?」 「特別扱いを受けてる奴らは居ないか?あいつに取り入ろうとしてる奴らは居ないのか?」 「結局アイツは自分が良い思いをしたいが為にお前達を利用してるんじゃないのか?」 「ゆぐぐうぅ・・・」 畳みかけるようにれいむの組織への疑いを煽っていく。 極めつけにこの一言だ。 「あいつが来る前は、お前達はもっとゆっくりできていたんじゃないのか?」 「ゆっ!!」 れいむの脳裏に過去の記憶が蘇った。 確かにあのころはみんなゆっくりしていた。 好きなときに食べ、自由な時間を過ごし、愛し合っていたのだ。 それが今はどうだ。 群れのため、と言う名目で食料は取り上げられ、群れのために働かされ、子供も作ることを許されない。 そして自分たちの努力の上に胡座をかく下劣な支配者・・・・ 「ゆっっぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 餡子の涙を流しれいむは怒った。ドスまりさに、側近達に、そして疑いもなく奴らを信じた自分に。 「おにいざん!!あいづらをなんどがじだい!!」 なんとかして、ではないところにこのゆっくりの気概が感じられる。つくづく良く出来たゆっくりだ。 「ならば奴を殺せ!」 「ゆ゙っ!?」 この答えは予想していなかったらしい。 「何を躊躇うことがある。奴を殺せば皆がゆっくりできる。それに、あんな奴を生かして置いてもまたどこかで同じ事をするさ」 「でも・・・れいむじゃドスまりさにはかてないよ!!」 「私が勝てるようにしてやる!奴を倒したければ私の所に来い!」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりついていくね!!」 瞳に強い意志を込めれいむは頷いた。 仕込みは完了。賢いゆっくりに会えてよかった。馬鹿なゆっくりはこんな話理解することも出来ないだろう。 程なくして家に着いた。 れいむを家に入れて待たせ、自分は準備をしに村の武器庫に行った。 帰ってきたとき、れいむは家を荒らすこともなく行儀良くしていた。意志の力はゆっくりでさえも変えるのか。 「待たせたな。これは小さくても必殺の武器だ。これを使えばドスまりさも一発だ。」 れいむに箱のような物を見せる。 「これを使うには強く噛むだけでいい。できるだけドスまりさの近くで使うんだぞ。あいつの側近も巻き込めるだけ巻き込んでおけ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 れいむは勇敢に頷いた。 「・・・れいむ」 「おにいさん!なに!?」 「ここで言ってしまうと君の決心が鈍るかもしれないが、やはり言っておくべきだろう。」 「君は死ぬかも知れない」 「ゆっ・・!でもそんなのはじめからわかってたよ!!それでもれいむはやらなきゃいけないんだよ!!れいむがやらなきゃだれもできないよ!!!」 やはりこのれいむ、私が見込んだだけのことはあるようだ。 「しかし、たとえ君が死んだとしても、後のゆっくり達は君を英雄と認めるだろう。」 「そして、もし君が生きて目的を達成することができたとしたら・・・!」 「ゆゆ・・・!!」 れいむの頬が緩む。英雄として讃えられる自分を想像したのだろう。まあ、戦いに行く者としてはこれくらいで丁度良い。 「よし、行け!!もう会うことも無いだろう!!」 「ゆっ!!おにいさん!!ありがとう!!ぜったいにおにいさんのことはわすれないよ!!!」 れいむは箱を口の中に入れ、家から飛び出していった。 「まあ会う事なんて絶対に無いんだけどね。」 所変わってここはドスまりさの住む洞窟。 「ゆうぅぅぅぅ・・・・」 「むきゅ!どうしたの!?ためいきなんかついて!」 旧友のゆちゅりーがドスをたしなめる。 しかし溜息をつくのも無理はない。群れの状態が極めて芳しくないのだ。 「ごはんはあまりとれないし、みんなはつかれてるし、まりさのなまえをだしてわるさをするやつらもいるし・・・」 「ドスはよわねははかないのよ!いつかみんなわかってくれるわよ!」 「ぱちゅりー・・・」 このままでは群れは自壊してしまう。なんとかしなければならない。いっそ村を襲うか。 しかし、こちらから結んだ条約を勝手に破るのは・・・いや、手段を問うている場合ではない。しかし・・・ れいむは群れの中を飛び跳ね、ドスまりさの元へと進んでいた。 その時、一匹のまりさがれいむに気付いた。 「れいむ!!どこいってたの!?ふたりでゆっくりするってやくそくしてたよね!?」 れいむはまりさに振り向いて答えた。 「ごめんね!!だいじなだいじなようじができたんだよ!!」 そしてれいむは真剣な表情になって言った。 「このたたかいがおわったら、まりさ、れいむと・・・ううん!なんでもないよ!!!」 最後まで言い切らず、踵を返して跳ねてゆくれいむ。 「ゆゆ!?たたかいってなに!?なにをするきなのれいむ!!?」 問いかけるまりさの声を背に受け、れいむは洞窟へと急いだ。 「ゆっ!?なにしにきたの!?」 護衛のゆっくりたちが洞窟の入り口を塞ぐ。 「ドスまりさにようがあるよ!!ゆっくりとおしてね!!」 「だめだよ!ドスまりさはきょうはだれともあわないよ!!」 このまま問答を続けても仕方がない。 「もういいよ!!れいむはいくよ!!」 れいむは強引にゆっくり達を押しのけ、洞窟の中に入っていった。 「れいむがはいっていったよ!!!」「ゆっくりつかまえてね!!!」 何匹ものゆっくり達がれいむを捕らえようと追いすがってくる。 しかし、強い意志に裏打ちされて走るれいむを捕まえられるゆっくりなど居るはずもなかった。 そして、ドスまりさの元へ辿り着いた。 幸運にも奴らは会議中だ!! 「どすまりさああああああぁぁぁぁ!!!」 れいむは絶叫を上げ飛び跳ねる。 辺りに居たゆっくり達は皆驚いた顔でこっちを見た。 「ゆっくりとりおさえてね!!!」 護衛達も追いついて来た。 「ゆっくりしねええええええええぇぇぇぇぇ!!!ぐぶぅ!」 ドスまりさの目の前まで到達した、と思いきや、そのままドスまりさに踏まれてしまった。 「れいむ!どうしてこんなことするの!!?」 厳しい顔で詰問するドスまりさ。 「はんぎゃくしゃだってさ」「おおこわいこわい」 「むきゅううう・・・」 側近達も脅威が去ったと思い、こちらに近づいてきた。 すぐに自分を踏みつぶすよりも、一旦捕らえ、組織への不満を聞き出して対策を行ったり、あるいは反逆者として処刑を行えば、群れの結束を強めるのに利用することも出来るだろう。 この場合、ドスまりさの判断は正しい。 だが、こちらの戦力を把握する前に行動を起こすべきでは無かった。 「かったぞ!!!」 れいむは叫び、必殺の武器を起動させた。 洞窟内に閃光が走り、同時に爆風が吹き荒れ、洞窟を揺らした。 男がれいむに渡したのは、確かに必殺の武器であった。使用者に対しても。 れいむは体内から吹き出す爆風に一瞬で身を四散させた。 れいむの近くに居たゆっくり達は全て粉々に砕けるか吹き飛ばされて岩壁に叩き付けられ、中身を吹き出して絶命した。 護衛のゆっくり達も吹き飛ばされ、満身創痍の状態だ。 「ゆ゙っ!ゆ゙ぼっ!!ど・・どぼじでごん゙なごどに・・・!!!」 ドスまりさは体が二つにちぎれかけるほどの重傷を負ったが、かろうじて意識は残っていた。 そのために見てしまった。岩に張り付いたぱちゅりーの顔を。 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ばぢゅり゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!!!」 体が崩れかけているためにゴボゴボと濁ったその絶叫は、洞窟中に響き渡り、外へと抜けていった。 「ゆゆっ!!!」 洞窟の外にいたゆっくり達も異変に気付き、次々と洞窟の中に入ってきた。 そしてその惨状を見た。 「「「「「「「「「「「「「「「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」 ゆっくり数十匹とドスまりさ一匹の絶叫は、爆発によって崩れかけていた洞窟の天井に最後の一撃を加えるのに十分だった。 ゆっくり達の絶叫はそのまま天井が崩れてくる事に対してのものになり、仲間が潰れ、生き埋めになっていく事に対してのものになり、そして自分の命が失われる事に対してのものになっていった。 ゆっくりの群れはここに壊滅した。 しかし生き残った一部のゆっくり達は、れいむの思惑通りドスまりさが来る以前の状態に戻っていった。 人間に駆除され、動物に食べられ、加工場で加工され、鬼居山に虐待され、AQNに虐殺されるだけの底辺の生物へと。 今回の教訓 中途半端に賢い者は集団にとっての最大の害悪 偉い人の苦労は理解されない(しかし偉い人が苦労しているとも限らないが) 極左思想で一番得をするのはその集団の外部の者 小さくても必殺の武器が必ずしも銃だとは限らない 戦っちゃいけないんだ僕達は 愛など粘膜の作り出した妄想 ゆっくり内部崩壊していってね!!! 多分一番楽なドス駆除法。 あの爆弾はもしれいむがそのままドスまりさに踏み潰されていたとしてもドスの重量でスイッチが入ります。 もしれいむが自爆テロをせずにドス殺害に成功したとしても、理解のない群れのゆっくり達による集団リンチに遭うだけでしょう。 そしてもし英雄として認められたとしても、駆除に来た人間に立ち向かわされて死んだだけでしょう。 つまりれいむは初めからどう見ても詰んでます本当にありがとうございました 餡子クチュクチュの人がお送りしました このSSに感想を付ける
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ゆっくりぴこぴこ2 書いた人 超伝導ありす 前作、ゆっくりぴこぴこ(fuku5263.txt)の続編となります。 単独でも読めますが、前作のキャラが出てきます。 このSSは以下の要素を含みます。苦手な方は読むのをお控えください。 ぴこぴこ 罪のないゆっくりがひどい目に遭います 死なないゆっくりがいます レイパー??ありすが登場します ゆっくりの交尾シーン(ぺにまむ無し設定) ここは、とあるゆっくりの巣。 その中では、今まさに新たな命が産み落とされようとしていた。 「そろそろうまれるよ!まりさ!」 「ゆっくりしたあかちゃんだといいね!れいむ!」 ぴこぴこ。 そこには、れいむとまりさ、二匹のゆっくりが住んでいた。 二匹はつがいである。 れいむの頭には、一本の茎が生えていて、だらんと垂れている。 その茎には、まるで果実のように、目を閉じたいくつもの赤ゆっくりが成っていた。 大きさは3cmほど。 植物型出産では標準的な大きさだ。 「ゆっくりうまれてね!いそがなくてもいいよ!」 自らの分身たる新しい命を、うっとりと見上げるまりさ。 ずっと苦楽と共にして来たれいむが子を産み、自分はこれから父親になる……。 この充足感は、何事にも代え難いゆっくりした気持ちのようだ。 そうしているうちに、赤ゆっくりたちが体をプルプルと震わせ始める。 運よく安全なにんっしんっ期間に恵まれた、母れいむ。 彼女が分け与えた餡子には、夢と希望がいっぱい詰まっている。 ゆっくり生まれてとは言うけれど。 早く生まれて、おかーさん、おとーさんとすりすりしたい。 おいしいご飯をむしゃむしゃ食べて、ゆっくりお歌を歌いたい。 赤ゆっくりたちは一生懸命に体を震わせ、茎と自分を切り離そうとしていた。 ぽとん。 と、最初に地面に降り立ったのは、赤れいむ。 ころころと転がって衝撃を緩和すると、ぱちくり!と目を開き、周囲を見渡してむくりと起き上がる。 そして。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」 ぴこぴこ! 母親へと振り向き産声を上げた赤れいむは、喜びを表現するために、自らの両脇にあるもみあげを前後に振り。 「ゆっくりしていってね!!」 ぴこぴこぴこっ!! それを受けて母親になったれいむも、もみあげを何度も振ってそれに応えた。 「れいむぅぅぅ!ゆっくりしたあかちゃんだね!!」 それを見て、父親となったまりさも、自慢の三つ編みを振り始めた。 こちらは、れいむのもみあげよりもずっと長いので、先端だけをぴこぴこと器用に振っている。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」 次々と生まれ、同じようにもみあげや三つ編みを振る、赤ゆっくりたち。 赤れいむが三匹、赤まりさが三匹と続き、残るは赤れいむ一匹だ。 末っ子となる赤れいむも、頑張って体を震わせ、地面に降り立つと。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」 大きな目をぱちくり開き、姉たちに倣って笑顔を振りまいた。 しかし。 「ゆっ?ゆっくりしていってね?」 末っ子れいむの姿を見て、戸惑う両親と姉たち。 なんだろう?この子だけはゆっくり出来ていない気がする。 「ゆっくちしちぇね!れいむ!」 そこで長女れいむは、末っ子れいむに更なるゆっくりを促してみた。 「ゆっ?」 心の中に、ハテナマークを思い浮かべる、末っ子れいむ。 生まれた喜びを表すために、満面の笑みとゆっくりの根源に関わる台詞を口にした。 幸せな未来を夢見て、両親と姉妹に恵まれた喜びに満たされた。 これ以上、どうゆっくりしろというのか。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!!」 人間が首を傾げるように、体を斜めに傾けながら、先ほどよりもっと大きな声で呼びかける。 末っ子れいむは半信半疑ながら、精一杯のゆっくりを体現しようとしたのだ。 『ゆううう!?』 ところが、それを見た両親と姉たちは、悲鳴を上げて一箇所に集まった。 末っ子がゆっくり出来ない理由に、気づいてしまったからだ。 ぴこぴこぴこっ!ぴーん!! 「ゆっくりできないこだよ!」 「いもうちょとは、ゆっくちできないよ!」 今まで嬉しそうにしていた、末っ子れいむ以外の家族たちは、一斉に髪を振るのを止め。 代わりに、れいむ種はもみあげを、まりさ種は三つ編みの先端を『ボッ』っと膨らませた。 まるで怒った猫が、尻尾を膨らませたかのようだ。 それは威嚇のポーズ。 なぜなら末っ子れいむは、もみあげを振る事が出来ない子、ゆっくり出来ない子だったからだった。 「どうしちぇぇぇ!?」 愛してくれるはずの家族に総スカンされ、驚きの声を上げる末っ子れいむ。 それどころか、家族がなぜ自分を否定するのか、その理由さえ分からない。 『ぴこぴこ』は意識して振っているものではないからだ。 「ゆっくりできないこは、れいむのあかちゃんじゃないよ!!」 「れいみゅは、こんなにゆっきゅりしちぇるのにぃぃ!!」 実の母親から、汚物を見るような目で見られ、悲しみに顔が歪んでいく末っ子れいむ。 母れいむは、六匹の正常な赤ちゃんに視線を移すと、満面の笑顔を浮かべ。 「さあ、れいむのあかちゃんたちは、ごはんにしようね!!」 「かぞくでゆっくりしようね!」 こめかみに力を入れて、頭に付いていた茎を地面に落とした。 「とってもおいしいおかーさんのくきが、さいしょのごはんだよ!」 「ゆっくちできしょうだよ!」 母れいむの前に六匹の赤れいむ・赤まりさが集まった。 嬉しそうにぴこぴこする、赤ゆっくりたち。 「れいみゅもゆっきゅりさしちぇにぇ!?」 それを見て、末っ子れいむも輪の中に飛び込もうとする。 だが、すかさず父まりさが、目の前に背を向けたまま立ちふさがった。 「ゆぴぃっ?」 父まりさの背中に弾き返される、末っ子れいむの体。 「れいみゅも!れいみゅもぉ!」 末っ子れいむはすぐに起き上がると、父まりさの背中に声を掛ける。 だが、父まりさも、そして母れいむも返事をすることはなかった。 とりあえずゆっくりしたい両親は、末っ子れいむを見なかった事にしたのである。 「あかちゃんたちも、おかーさんになったら、くきをたべさせてあげるんだよ!」 「すこしだけまっててね!いま、おかーさんがやわらかくしてあげるからね!!」 母れいむは茎を口に含み、咀嚼しはじめた。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりは、噛む力が弱い。 親が柔らかくして食べさせてあげるのだ。 「さあ、ゆっくりたべてね!」 母れいむが吐き出した、ペースト化された茎に群がる、赤ちゃんゆっくりたち。 『むーちゃむーちゃ、しあわせしぇぇぇ!』 赤ゆっくりたちは口を揃えて、初めて食べたご飯の味に感動した。 ほのかに甘く、そして瑞々しい草の味。 しかも、笑顔の両親に囲まれて、餡子を分け合う姉妹と頬を寄せ合って、これ以上の幸せはないというもの。 「ゆえ、ゆえええええん!!」 一方、末っ子まりさは、父まりさの背後で泣いていた。 末っ子れいむにとっては、これ以上の不幸はない。 生まれた途端に、いらない子だと突き放され、ご飯にすらありつけないのだ。 しかも、感極まったにも関わらず、末っ子れいむのもみあげはいまだ無反応。 「うるさいよ!!」 途端、父まりさが振り向き、末っ子れいむを三つ編みで弾き飛ばした。 末っ子れいむの体は放物線を描いて飛び、砂糖味の涙がそれを追う。 巣の壁際に追いやられたれいむは、思わず口をつぐみ、しかし泣きやむこともできない。 「ゆぎっ、ゆひっ」 大声を出してはまた飛ばされてしまう……。 末っ子れいむは恐怖に怯え、小さくむせび泣くしかなかった。 やがて姉たちは食事を終え、お腹いっぱいになる。 満腹になった赤子がすることといえば、一つだ。 「ゆふぅ、れいみゅ、ねみゅくなってきちゃよ…」 「まりしゃもねりゅよ」 「おかーしゃんといっしょにねりゅからね…」 姉たちは、母れいむに寄り添いまぶたを落とす。 「ゆふふふ!ゆっくりおねむしてね、れいむのあかちゃんたち!」 それを見届け、満足げな顔を浮かべる、母れいむと父まりさ。 しかし赤ちゃん達が寝静まると、今度は代わりに耳障りな声が聞こえてくる。 末っ子れいむの泣き声だ。 「まだいたの?ゆっくりできないこは、どこかへいってね!?」 無茶な要求をする、父まりさ。 生まれたばかりの赤ちゃんが、自ら外に出て行くという選択肢を思いつくはずがない。 それに外に出ようとしても、巣の出入り口には成体ゆっくりの力でがっちりと蓋がしてあった。 「まりさ!あのこがいると、あかちゃんたちもゆっくりできないよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 母れいむは『ゆっくりできる子』に寄り添われたまま、身動きが取れない。 代わりに父まりさが、末っ子れいむの居る、巣の壁際へとにじり寄った。 迫ってくるのは、大きな顔。 父まりさは、不機嫌そうに三つ編みをぶうん、ぶうん、と揺らしている。 殺される!! 末っ子れいむはガチガチと歯を鳴らしながら必死に考え、そして気づいた。 自分と、姉達の違いに。 しかし、末っ子れいむはもみあげを動かすことは出来なかった。 そうなれば、することは一つ。 「ゆっきゅりすりゅよ!ゆっきゅりすりゅよ!!」 末っ子れいむは、体を激しく前後に動かし始める。 反動で、もみあげを振ろうというのである。 赤ゆっくりにしては、よく考えたものだ。 否、生き残るために自然に体が動いたというべきか。 末っ子れいむは、体を動かし続ける。 何度も、何度も。 すると、わずかながらもみあげが前後に揺れたのだ。 それを見て、父まりさの表情が、少しだけ緩んだ。 「ゆゆっ!あかちゃんはすこしだけどゆっくりしてるね!」 「ゆっくりできるなら、ごはんをあげてね、まりさ」 母れいむもそれを見届けると、父まりさに指示をした。 父まりさは頷き、巣の奥の食料庫へと向かう。 自分の努力が認められたと思った末っ子れいむは、動きをやめ、ぺたんと地面に倒れてしまった。 本来なら何も考えずゆっくりできるはずの、赤ゆっくり。 その体に、激しい運動に耐える体力が、最初から備わっているはずもない。 もう一歩も跳ねられないような疲労感に襲われる、末っ子れいむの前に。 ぺっ。 父まりさが吐き落としたのは、咀嚼されていない苦い草だった。 ゆっくりが好んで食べる事のない、苦い草。 それでもいざという時の為に、聡明なまりさが少しだけ貯めていたのである。 父まりさは、にこりと笑って。 「ほんとうにゆっくりできたら、おいしいごはんをたべさせてあげるからね。がんばってね!」 そう言って背を向けた。 「ゆぐっ、ゆぐっ…ゆぐぐぐぐ…」 父まりさは時分の努力を認めてくれたわけではなかった。 執行猶予を与えたに過ぎなかったのだ。 再び絶望感に打ちひしがれながら、食欲には勝てず、泣きながら舌を伸ばす末っ子れいむ。 苦い草の一部を口に含み。 しかし噛み切れず、横に倒れた体勢のまま、咀嚼を始める。 「む……ちゃ……むひ……に、にぎゃいぃぃぃ」 まだ硬い物は噛み切れない赤ゆっくりに、この仕打ちは最悪のものだった。 噛めば噛むほど苦い汁が口の中に広がり、何度噛んでも噛み切れず。 仕舞いには何時までも残った味気ない繊維をかみ続けなければならないからだ。 苦い汁だけでは、腹は膨れない。 すでに疲労は限界だった。 末っ子れいむは、繊維をかみ締めながら、やがて気絶するかのように眠りにつくのだった。 翌日。 「ゆっくち…しちぇいってにぇ?」 末っ子れいむは目が覚めると、本能的に朝の挨拶を口にする。 ただしそれは、控えめで辺りをうかがいながらの挨拶だ。 家族に自分を否定された恐怖は、今もなお末っ子れいむの心にしっかりと刻まれている。 そして当然の如く、誰も返事はしてくれなかった。 姉たちはすでに朝食を終え、楽しそうに遊んでいた。 母親が噛み砕いてくれたご飯をたっぷり食べて、姉妹同士でコロコロ転がったり追いかけっこをしたり。 父まりさが狩りに出ている間、育児を任された母れいむはうっとりとその光景を眺めていた。 「ゆぐっ…」 末っ子れいむは仕方なく、苦い草を口に含む。 相も変わらず繊維は硬く、なかなか飲み込むこともできない。 姉たちよりも何十倍も口を動かしているのに、空腹が満たされることはなかった。 「おかーしゃん!れいみゅたち、おなきゃがしゅいちゃよ!」 「まっててね、あかちゃんたち!すぐにおいしいごはんをよういするからね!!」 赤ゆっくりは体が小さく、栄養を一度にたくさん貯めておくことができない。 そのため、一日に何度も食事を取る。 「むーちゃ、むーちゃ!しあわしぇ~!!」 その幸せそうな喧騒をBGMに、末っ子れいむは草を食み続けていた。 いつまでも。 午後になると、父まりさが狩りから帰ってくる。 「きょうもたいりょうだったよ!あかちゃんたちのためにがんばったよ!」 「おとーしゃん、おきゃえりなさい!」 「おとーしゃんは、すぎょいね!!」 頬をぱんぱんにして、餌を調達してきた父まりさを出迎える子供たち。 しかし、その中に末っ子れいむの姿はない。 『ゆっくりしていってね!!』 ぴこぴこぴこっ! 頑張った父まりさを称え、お決まりの大合唱をする一家。 「ゆっ、ゆっくちしちぇいってにぇ?」 少し遅れて末っ子れいむがぼそぼそと呟き、父まりさの顔をちらりと見上げた。 対して父まりさも末っ子れいむを見返し、険しい表情を浮かべる。 「ゆっくち!ゆっくちしてりゅよ!!」 末っ子れいむは昨日と同じように、慌てて体を揺すり始める。 ぴこぴこ、とまではいかずとも、それなりに揺れる末っ子れいむのもみあげ。 「さあ、赤ちゃんたち!おとーさんとゆっくりあそぼうね!」 父まりさは、ふいっと視線を戻し、満面の笑顔をゆっくり出来る赤ちゃんゆっくりたちだけに向けるのだった。 末っ子れいむの生活は、ずっとそんな調子で続いた。 姉たちが幸せそうに食事をしている最中も、ひたすら硬い草の繊維を噛み切る事に専念し。 姉たちが眠る頃、末っ子れいむは一人誰にも寄り添えず、疲れきって倒れ。 時折、親と目線が合うと、媚びへつらうかのように体を激しく振って、もみあげを動かす。 地獄のような日々は続いた。 両親は、末っ子れいむをすぐには追い出さなかった。 自ら手を下すのが嫌だったのか、あるいは必死な末っ子れいむに同情したのか。 それでも数日経つと、群れには末っ子れいむの悪い噂が広がり始めていた。 れいむの末っ子はゆっくり出来ない。 もしかしたら、親もゆっくり出来ないのかもしれない。 そんな噂が広がり始めると、両親の態度はさらに悪化した。 もう体を激しく揺さぶっても、その表情が和らぐことはない。 そして……。 「やっぱりれいむは、ゆっくりできなかったね!やっぱりれいむのあかちゃんじゃなかったね!!」 「れいむはいらないこだよ!とっとと、めのまえからきえてね!!」 生まれてから七日後、とうとう末っ子れいむは、父まりさに外に放り投げられてしまった。 「れいみゅはゆっくちしてりゅよおおお!!れいみゅはれいみゅおかーしゃんの…!!」 バタン。 慌てて巣に戻ろうとしますが、出入り口にはフタをされてしまう。 「ゆううう!れいみゅはおかーしゃんのあかちゃんなのにいいいい!!」 しばらく泣いていた末っ子れいむは、やがて後ろから近づいてくる影に気づいた。 「むきゅ。あなたがゆっくりできないれいむね!」 「ゆう?」 末っ子れいむが振り返ると、そこにはぱちゅりーが立っていた。 しかし、そのぱちゅりーも笑顔には程遠い憤怒の表情。 「ぴこぴこできないこは、あくまのこよ!はやくむれからでていってね!」 「ゆひっ?」 見れば、ぱちゅりーも両方に垂らした髪をくねくねさせていた。 そして振り向くことで、末っ子れいむは周囲に沢山のゆっくりが居ることに始めて気づく。 両親の巣は、群れのほぼ中央に近くにあり、巣の外には常に仲間の往来があった。 そのすべてがれいむ種やぱちゅりー種のように、垂らした髪を振っていた。 また、垂らした髪が無い種類のゆっくりは、気を逆立ててゆらゆらとさせている。 この群れでは、すべてのゆっくりが何らかの形で髪を揺らしている。 ここは、ぴこぴこゆっくりの群れだったのだ。 「ゆひああああ!?」 今までは両親の手前、もみあげを振ることだけを考えてきた末っ子れいむ。 けれども落ち着いて考えてみると、それが正常であるとは到底思えなかった。 ぴこぴこなんて、ゆっくりできない。 「みんなゆっきゅりしちぇないよおおおお!!」 周囲の冷たい視線から、逃げ出すように跳ね始めた末っ子れいむ。 体はまだ小さく、どこへ行けばいいかも分からない。 けれど、とにかく跳ね続けた。 ぽすん。 その途中。 末っ子れいむは柔らかい何かに受け止められ、それを見上げる。 「あら、れいむがゆっくりできないれいむかしら?」 そこには、一匹のありすが居た。 末っ子れいむは、ありすの下膨れにぶつかったのだ。 ありすは髪を逆立て、ゆらゆらと揺らしてはいなかった。 それだけではない。 ありすは笑顔で末っ子れいむを見つめていたのだ。 が。 そのありすを見て、末っ子れいむを視線で追っていた群れの仲間達は一斉に目を背けた。 まるで、その存在が禁忌であるかのように。 「だいじょうぶよ、れいむ。ありすはぴこぴこできなくても、きつくあたったりはしないわ」 「ゆ?……ほんちょう?」 「ええ、ほんとうよ」 その笑顔にほだされて、わずかに笑みを取り戻す末っ子れいむ。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆ…ゆっきゅりしていっちぇにぇ!」 ありすは、親愛の印である、いつものフレーズを、高らかに口にする。 末っ子れいむはやや遅れてから返事をして。 ようやく自分が求められていることを実感し始めた。 「むれのなかにいてはきけんだわ。きょうからありすがれいむのおかーさんになってあげるわね」 「おかーしゃんに?」 「ええ。たくさん、たくさん、ゆっくりさせてあげるわ」 ぽろりぽろりと、末っ子れいむの瞳から涙の雫がこぼれた。 家族から見放され、群れのゆっくりからも疎まれ、絶望していた心に差し込む一条の光。 「ゆっくちできりゅの!?れいみゅはゆっくちしちぇいいの!?」 「もちろんよ!」 ありすは末っ子れいむの頭を優しく銜えて持ち上げる。 一瞬、びくりと震えた末っ子れいむだが、その動作が優しい事に驚き、嬉しくなった。 「さあ、ありすのおうちにかえりましょうね!そこはれいむのおうちでもあるわ!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅりすりゅよ!!」 末っ子れいむは舞い上がっていた。 実の母親ではないにしても、自分の母親になってくれるゆっくりに巡り会えたのだから。 「ゆっきゅり~♪きょうはゆっきゅりのひ~♪」 しかし、末っ子れいむは気づいていなかった。 ありすの背中では、束ねられた髪が牙を剥いた蛇のようにゆらゆらと揺れていたことに。 ありすの巣では、二匹のゆっくりが待っていた。 「ゆっくりおかえりなさい!」 「おかえりなさい、ありすおかーさま!」 そこに居たのは、末っ子れいむよりずっと大きい、子まりさと子ぱちゅりー。 「ありすのおちびちゃんたち!きょうから、れいむがあたらしい、いもうとよ!なかよくしてね!」 「よろしくね、れいむ!!」 「わかったわ、おかーさま!」 ありすが末っ子れいむを地面に降ろし、紹介すると、二匹の子ゆっくりは快く引き受けた。 「れいむはかわいいね!すりすりさせてね!!」 「むきゅ、ぱちゅりーはぺろぺろしてあげるわ」 「や、やめちぇにぇ!?」 末っ子れいむは、すぐにはその二匹が姉である実感がわかなかった。 今までの家族の仕打ちから、姉妹が愛すべき存在である事も忘れていた。 しかし、二匹は硬直する末っ子れいむに構わず、スキンシップを図る。 「すーりすーり。きもちいい?」 「ぺーろぺーろ。どうかしら?」 末っ子れいむにとっては、これが初めての同属とのスキンシップとなった。 体は正直なもので、初めてのすりすりとぺろぺろは、思いの外気持ちよく。 「ゆひゅひゅひゅ、くしゅぐっちゃいよ」 末っ子れいむは、すぐに心地よい快感に酔いしれた。 「まりさのことは、おねーさんとよんでね!」 「ぱちゅりーもよ!」 「ゆっきゅりりかいしちゃよ!まりさおねーしゃん!ぱちゅりーおねーしゃん!」 妹が出来た事に、子まりさと子ぱちゅりーも、心の底から喜んでいるようだった。 それから末っ子れいむは、夕方まで二人の姉に遊んで貰った。 帽子に載せてもらったり、お話を聞かせてもらったり。 唯一残念だったのは、実の姉達がやっていたコロコロ遊びが出来なかったことだ。 これは幼い姉妹同士だから出来ること。 体格差の大きい姉たちにそれをせがむのは、無理というものだ。 二匹も末っ子れいむ同様、生まれつきぴこぴこ出来ず、ありすに拾われた子ゆっくりだった。 同じ境遇と知り、ますます親近感を深める末っ子れいむ。 末っ子れいむにとって、その日は始めて充実した日になっていた。 「さあ、ありすのおちびちゃんたち!おゆうはんよ!ゆっくりたべなさい!」 夕方になると、狩りから帰って来たありすが、夕食を振舞った。 色とりどりの花や、草、虫の死骸や乾いた果物など、バランスのよい献立だ。 ありすは群れでも1、2を争う狩りの名手だったのである。 それもすべて、実子ではなくとも愛してしまえる、深い深い愛ゆえ。 「むーしゃむーしゃ!」 「れいむには、とくべつにありすがやわらかくしてあげるわ!」 姉二匹が食事を始める横で、おどおどしている末っ子れいむに、ありすはそう語りかけた。 末っ子れいむにとって、ご馳走は初めて見る食べ物ばかり。 どう食べてよいか分からなかったのである。 ありすは草を少しと果物を少しを口に含み、咀嚼してかられいむの目の前に吐き出す。 「ゆっ!?」 それは、夢にまでに見た母親の茎に似ていた。 「むーちゃむーちゃ……ゆっ!ゆゆゆゆゆ!しあわちぇええええええ!!」 飛びつき、そして思わず叫んでしまう、末っ子れいむ。 目からはうれし涙がぼろぼろとこぼれた。 乾ききっていた末っ子れいむの心に、ありすの愛が注がれる。 れいむは生まれてきてよかったんだ!! 止まらない、涙。 その涙さえ、れいむのあんよが解けてしまわないように、ありすが舐めとってくれる。 「おいしいかしら?れいむ」 「おいちいよ!おいちいよ!おかーしゃん!!」 素直に母親と認めてくれた事に、じーん…と心を振るわせるありす。 しかし、その口元には妖艶な笑みが浮かびつつあった。 「うふふふふ。かわいいわねぇ、れいむは…」 夢中になって食べる末っ子れいむを見下ろし、ほほ笑みながら目を細めるありす。 そして。 「たべちゃいたいくらい…。うふふふ…」 そんなありすの言葉には気づかずに、末っ子れいむは食事を終えた。 体の小さい末っ子れいむは、ありすが用意してくれた分だけでも満腹だった。 手持ち無沙汰になった末っ子れいむは、姉二匹の様子を眺めることにした。 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~」 さぞかし美味しそうに食べているのだろうと思いきや、二匹にはあまり元気がない。 口では幸せと言ってはいるものの、末っ子れいむほど飛びつくような勢いでもなかった。 よく見ると、二匹の目の下には、クマがうっすらと出来ている。 「どこかいちゃいの?まりしゃおねーしゃん?」 「ゆっ?だいじょうぶだよ、れいむ!がーつがーつ!」 「そうよ、ぱちゅりーもげんきよ!」 慌てて取り繕う姉たちに、小首を傾げる、れいむ。 食事が終わると、れいむは眠気に襲われた。 赤ゆっくりは、よく食べて良く寝て良く育つことが仕事。 れいむはようやく本職をまっとうできる環境を手に入れた…はずだった。 が。 「れいむ。まだねてはだめよ。ありすのこどもなら、しょくごのたいそうがあるのよ!」 そう告げるありす。 「ゆっくりはじめるよ…」 あまり嬉しそうではない声で、姉二匹は壁際に並んだ。 急に空気が緊張し、とても眠らせてもらえる雰囲気ではない。 末っ子れいむも、姉たちを真似て壁際に移動した。 「さあ、ぴこぴこたいそうよ!ゆっくりはじめてね!!」 「ゆううう!?」 「ぴーこぴーこ!まりさはゆっくりできるよ!」 「ぱちゅりーもくねくねできるわあ!!」 ありすの合図とともに、子まりさと子ぱちゅりーは、体を前後左右に揺すり始める。 末っ子れいむは、その光景を見て愕然とした。 壁際で体を振るわせるその姿は、かつての自分を彷彿とさせ、同時に恐怖が蘇える。 「ひいいい!ひいいい!」 その場で震え始める、末っ子れいむ。 「こわがらなくてもいいのよ、れいむ」 しかし、末っ子れいむに近づいてきたありすの顔は、相変わらず柔和な笑顔だった。 「ゆっ?」 「まりさもぱちゅりーも、れいむも。いずれは、おとなになって、どくりつするひがくるわ」 その柔和な顔が、さらにずずいっと近づいてきて。 「そのときに、ぴこぴこできなかったら、むれからおいだされてしまうの。だから、ゆっくりでもいいから、 れんしゅうしましょう……ね?ありすのあかちゃん?」 「ゆ、ゆう……」 そう言われてしまっては、末っ子れいむも従うしかなかった。 媚びへつらいながらの強制ぴこぴこよりはマシというもの。 ありすは元の位置に戻り、三匹の様子を眺める。 その頃には、すでに子まりさと子ぱちゅりーは、現実からトリップし始めていた。 自ら激しく体を揺する事によって、発情にも似た感覚に襲われていたのだ。 「そうそう!まりさもぱちゅりーも、とってもとかいはよ!」 末っ子れいむは、様子を窺いつつ、ゆっくり体を前後に揺らす。 「れいむはもっとがんばってね!ぴこぴこできないこは、なえなえよ!」 懸命に体を揺らす三匹を前に、うっとりと光景に見入るありす。 やがて、ありすの顔には、隠された表情が見え隠れし始めた。 「はぁ、はぁ、はぁ。もっとがんばってね!おかーさんをよろこばせてねえ!!」 一度変化が始まると、後は早かった。 ありすは、辛抱たまらん!という勢いで、まりさの背後に回り。 「きょうは、まりさに、こじんれっすんをしてあげるわあああ!!」 「ゆううん!!」 ありすは、無我夢中の子まりさの背後に圧し掛かるなり、自らも激しく揺れ始めたのだ。 すでに快感の中にあった子まりさは、すんなりとそれを受け入れてしまう。 瞳からはすでに光が消えうせ、体格差による重さも感じてはいない。 ありすは『ぴこぴこ』できない子が必死になるのを見て発情してしまう、HENTAIありすだったのだ! 「ゆふん!ゆふん!」 「いいわああ!まりさもテクニシャンになったわねえええ!!」 お互いに肌を擦り付け始めると、皮にはじっとりと粘液が浮かび、雫となって垂れ始めた。 二匹とも本格的な交尾体勢に入ったのである。 「なにしちぇるのおお!?」 ただ事ではない光景に、思わず体を休め見上げてしまう、末っ子れいむ。 そこへ。 「おちびちゃん、きょうはおやすみしましょうね?」 そう語りかけてきたのは、子ぱちゅりーだった。 少し乱れていた息づかいをゆっくりと落ち着けると。 「おかーさまたちは、とっくんちゅうよ。わたしたちはゆっくりねましょうね」 「とっくん……?」 末っ子れいむはもう一度、絡み合う二匹を見上げ。 しかしお腹も一杯な上に疲れていたので、素直にぱちゅりーに従うことにした。 子ぱちゅりーは、末っ子れいむを少し離れた隣の部屋へと案内する。 「むきゅ。さあ、ゆっくりおねむしましょうね。さみしいなら、すりすりしてあげるわ」 「ありがちょう、ぱちゅりーおねーしゃん!」 「すーりすーり」 「しゅーりしゅーり」 通路の向こうからは、相変わらず歪んだ嬌声が聞こえていた。 しかし、ぱちゅりーとの頬擦りはとても気持ちよく、れいむはいつの間にか眠ってしまっていた。 一方、子まりさとありすは絶頂が迫っていた。 だが、ありすは限界ギリギリで正気を保っていた。 『すすすす、すっきりー!!』 お互いがすっきりする直前、ありすは子まりさから体を離したのである。 「ハァハァハァ。もうすこしで、じぶんのこどもをにんっしんっ!させてしまうところだったわぁ!」 子まりさは精魂尽き果て、その場で気絶していた。 ありすは子まりさに再び歩み寄ると、舌をべろんと出して子まりさの皮を舐め始める。 交尾中に発した粘液を舐め取っているのだ。 「ゆふふ、まりさはきれいきれいしましょうね~」 ありすは、わざわざ子まりさをひっくり返してまで、丹念に掃除をする。 その瞳には、未だ狂気が宿ってた。 これは掃除ではなく、粘液を味わう行為なのである。 「ぺーろぺーろ。ゆふふふふ。まりさのエキスはおいしいわねええ!れいむはどんなあじなのかしらああ!」 いかがわしい舌舐めずりの音は、その後夜遅くまで続いたのだった。 翌朝。 末っ子れいむは、初めてぬくもりに包まれた朝を迎えた。 そして、何事もなかったように笑顔を浮かべる姉たち。 大変なのは寝る前だけで、後は満ち足りた生活を送れるのだ。 外は自分たちを受け入れてはくれない地獄。 これ以上、何を求めるというのか。 「むーちゃむーちゃ、しわせしぇ~……ゆゆっ?」 昨晩と同じように、ありすに柔らかくしてもらった餌を堪能していた、末っ子れいむ。 しかし今日は、なにやら外から慌ただしい喧騒が聞こえてきていた。 「ゆっくりできない、あくまのぐんだんがきたんだよおお!!」 群れの誰かが、そう叫んだ。 「あくまのぐんだん?」 子まりさと子ぱちゅりーが顔を合わせる。 「とうとうきたわね…。おちびちゃんたちは、おくのへやにかくれてね!!」 ありすは突然、キッと厳しい表情になり、子まりさたちにそう指示した。 わけもかわらず、食事を頬張りながら寝室へ向かう、三匹の子供たち。 ありすはそれを見届け、巣の外へと出た。 外はすでに大混乱。 迎え撃とうとする者、我先に逃げようとする者。 そして、朝日を背にして丘の向こう側からやってくる、数十、数百という黒い影。 それはすべてゆっくりだった。 彼らは『ぴこぴこ』する、ゆっくり出来ないゆっくりを討伐するため編成されたゆっくり軍団だったのだ。 ありすはすぐさま巣の入り口に、外側から蓋をして、土を掛けた。 ご丁寧にも何度も飛び跳ね、慣らす。 相手は圧倒的多数。 ここで逃げても生き残れる保障はない。 巣を隠すことで、せめて子供たちだけでも生き残らせようとする算段だった。 『ぴこぴこ』できるありすの群れは、『ぴこぴこ』出来ない大多数の群れから迫害を受けていた。 ありすの最初の子供たちも、彼らによって奪われていた。 「さあ、くるならくるがいいわ!」 ありすの脇を、逃げる仲間達が通り過ぎ、すぐに敵勢が姿を現す。 迎え撃つありすの元に、三匹のゆっくりがほぼ同時に飛び掛ってきた。 相手はみょん、ちぇん、まりさ。 特にまりさは一際大きく、背丈は50cmを超える特大級だった。 「ありすを、なめないでねええ!!」 気迫で一度はちぇんを弾き返したものの、所詮は多勢に無勢。 みょんが口先に銜えた、鋭い木の枝で貫かれ、重傷を負ってしまう。 「ゆばああああ!!」 ありすは地面にひれ伏した。 けれども、後悔はしていなかった。 「つぎのてきをたおすんだみょん!」 「さがすんだねー、わかるよー!」 すでにみょんとちぇんは、逃げ行く敵に気をとられていた。 このまま軍団が巣に気づかず過ぎ去ってくれれば、子供たちは生き残れるのだから。 ところが。 バンバン! という大きな音がして、みょんたちの意識がそちらに向かう。 ありすもその音を辿り愕然とした。 みれば子まりさが、土を乗せた重い蓋を死に物狂いで開き、外に出ようとしていたのである。 「ど……どうじでえええ!?」 守ろうとした子供によって計画が覆されてしまったありす。 しかし子まりさは全力でありすの元へ駆け寄り。 「ありすおかーさん!しんじゃだめええええ!!」 「ま、まりざ……」 ありすの悲鳴を聞き、居ても立ってもいられなかった子まりさ。 例え狂っていても、まりさにとって、ありすは大切な母親だったのだ。 家族に捨てられた自分を拾ってくれたおかーさん。 ごはんをいっぱい食べさせてくれたおかーさん。 すりすりしたり、ぺろぺろしたりしてくれたおかーさん。 だから。 ありすを背にして、敵へと向き直った子まりさは。 「おかーさんをきずつけるゆっくりは、ゆっくりしねええええ!!」 勇敢にも、敵へと飛びかかったのだった。 だが。 ぶすり。 無情にも、みょんの枝が突き刺さる。 相手は百戦錬磨のおさむらいであった。 「ゆっべええ!!」 しかもその枝は、成体サイズのゆっくりを屠殺するための枝。 子まりさは、顔面に大きな穴を開けられ、強い圧力により一瞬にして絶命してしまった。 「まりざっ……!まりざあああ!!ぎゅべっ!?」 そのありすも、特大まりさによって潰されてしまう。 「てきとはいえ、おやこをころすのは、かなしいことだね」 しみじみと呟く、特大まりさ。 この特大まりさは、かつて最初にゆっくり出来ないゆっくりと遭遇した、群れのリーダーだった。 まりさはその事件により、大事な子まりさを失っている。 もう二度とそのような悲劇は生み出すまい。 そう誓い他の群れと協力し、常に前線に立って戦ってきた総大将でもあった。 気が付くと、まりさは軍団で一番のまりさになっていた。 もしかしたら、ドスの素質が少しだけあったのかもしれない。 だからこそ、特大まりさはふと気が付く。 ゆっくりは、体が大きくなればなるほど餡子脳の容積が増し、頭が良くなる傾向にある。 目の前にある、子まりさは、他の敵とは違う印象を受けたのだ。 「そこのおうちを、しらべてきてね!こどもがいたら、ころさないでつれてきてね!」 「ゆっくりりかいしたみょん!」 まりさが指示すると、みょんとちぇんが巣の蓋を開いて中に入り。 しばらくすると、子ぱちゅりーと末っ子れいむが、巣の外に連れ出された。 「むきゅ……おかあさま……」 「きょわいよおお!きょわいよおお!!」 子ぱちゅりーは、ありすの亡骸に涙し、末っ子れいむは震えて泣いていた。 しかし、まりさはすぐに見抜く。 「ぱちゅりーたちは、ぴこぴこしないゆっくりだね!?」 「むきゅっ!?そ、そうよ……」 「だったら、なかまだね!ころさないでおいてあげるよ!!」 「そう、ありがとう……」 許された子ぱちゅりーは、しかしあまり嬉しそうな表情をしなかった。 唯一の肉親となった、末っ子れいむを舌先であやしながら。 周囲の惨状に絶句するしかなかったのだ。 群れは跡形もなく無くなり、これから子と赤子だけで、どう生きていけばいいのか。 子ぱちゅりーの表情は不安でいっぱいだった。 「どうしたのかしら?」 そこへ、台車に乗った別のぱちゅりーが現れる。 スィーと呼べるほど立派なものではない。 別のゆっくり二匹が、台車を引っ張っているだけの代物。 ぱちゅりーは、特大まりさの優秀な参謀役だった。 今までに何度も、おっちょこちょいな特大まりさをフォローしてきた、戦地の女房役でもある。 「そろそろたたかいもおわりね。みんなには、てっしゅうめいれいをだしたわ」 「てきかくなしじだね!ぱちゅりーには、このこたちの、めんどうをまかせるよ!」 「むきゅ?」 「ぴこぴこできない、こどもたちだよ!」 「わかったわ」 ぱちゅりーの承諾を得て、特大まりさはお供を従え、群れの中央へと向かった。 そこにはすでに多くの仲間が集まっていた。 「ゆっくりしょうりせんげんするよ!」 特大まりさが声を上げると、仲間たちが歓声を上げる。 まだまだ討ちもらした敵の掃討が残っているが、もはや勝利が覆ることはない。 それよりも、大きな仕事がその後に待っている。 『ぴこぴこ』するゆっくりの死体を食べたゆっくりは、同じように『ぴこぴこ』してしまう可能性があるのだ。 そう。 まりさの子まりさも、そのために泣く泣く殺さねばならなかった一匹。 この戦いで出た死体も、遠くに穴を掘り、捨てなくてはならないのだ。 その頃。 「まりさっ!じっがり……じっがりじでねぇ!」 我先に逃げたゆっくりの中に、生き残っているゆっくりの家族が居た。 まりさが一匹、れいむが一匹。 そして、赤れいむが三匹に、赤まりさも三匹。 そう、末っ子れいむを見捨てた一家だった。 しかし全員が無事というわけにもいかなかった。 父まりさは体中を蜂の巣にされ、餡子を垂れ流している。 赤ゆっくりたちを口の中に避難させ、思うように跳ね回れない母れいむのために、囮役になった結果だ。 「まりざがいなぐなったら、ゆっぐりできないよ!?」 「おとーしゃん、ちっかりしちぇえええ!!」 「びゅひっ!ぴゅひっ!」 まりさは奇声を上げながら、餡子を吐き出し続けていた。 目も焦点が合っておらず、家族の声が聞こえているかも微妙な状態。 悪魔の軍団は、突然現れた。 そして群れを滅ぼし、今こうして自分たちをも不幸のどん底に突き落とした。 一体、自分たちが何をしたというのか? 母れいむはすべてが信じられなかった。 しかし時は無情に過ぎ去る。 父まりさはやがて永遠にゆっくりしてしまい、れいむも現実を受け入れざるを得なかった。 ……夕闇が迫っている。 「さ、あかちゃんたち。おかーさんのおくちのなかへはいってね」 「ゆ?おとーしゃんは?」 「まりさおとーさんは、つかれてねむっているだけだよ!すぐにおいついてくるからね!」 赤ゆっくりたちは、父親の姿を見上げて何かしらを感じつつ、母親の口の中へと入ってゆく。 これからは、れいむが子供たちを守らねばならない。 圧倒的な力を持つ、悪魔の軍団の追っ手から逃れつつ、育てていかなくてはならない。 その道のりは、険しく、そして絶望的だ。 夕日を背に、一匹のれいむが跳ねてゆく。 …長い影が、とてつもない重い何かを顕していた。 おしまい。 後書き? あれから、ぴこぴこするれいむがずいぶんと増殖したなぁ。 そんな気持ちで思わず続編を書いてしまいました。 自分の脳内では、ここで物語が終わっていますが、あのゲス親子のその後はどおしたっ!?という方も いらっしゃると思います。 なので、おまけ的な扱いですが、虐…制裁お兄さんを派遣しておきました。 もしよろしければ、感想をお願いします。 (おまけは別ファイル) このSSに感想をつける
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短編しか思いつかなかったので書いてみた 読んでくれた人に最大の感謝を! ※ドスが出ます ※俺設定あり ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ここは愛でお兄さんの家このお兄さん普段は愛でお兄さんと呼んでもいいほどゆっくりを愛している しかし、ゆっくりが悪いことをしたときには虐待お兄さんに近い存在になってしまうのだ そんなお兄さんが仕事から帰った時のこと 「お前俺のスパゲッティ食べたのか?」 「ゆ!たべてないよ!!」 このお兄さんいつもは朝のうちに夜ごはんの下準備だけはしてから簡単に食べれるようにして仕事に出かけている しかしこの日は外食しようと思っていたので 「口にケチャップ付いてるぞ。」 「たべたよ!たべたっていえばまんぞく!?」 「もしかして俺の持ってた割引券使った?」 その時の俺の顔を見てれいむは正直に答えたほうがいいと思ったみたいだ 急に態度を変えてきた 「あんまりおぼえてないけど、つかったようなきがするよ・・・」 「そうかそれがわかっただけでいい。」 そう言うと青年は残ったスパゲティをたべて家に帰ってすぐ 「SI☆NE」 青年の脳天唐竹割りが炸裂! グチャ! 「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」 「人のものを勝手に使うとこうなるんだ。覚えとけ、っていってももう死ぬんだから意味ないか」 「もっとゆっくりしたかったよ・・・」 「また新しいゆっくりを探さないとな」 とお兄さんはペットショップに行くのであった ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー とあるお兄さんの家 この男ゆっくりを後天的に薬を使わずに知能をあげる研究をしているらしい 周りには見たこともない実験道具のようなものであふれかえっている とそこで実験中のゆっくりれいむに話しかけた このれいむは赤ゆっくりのころから育てているのでとても懐いているようだ 「なあれいむ。お酒の名前でしりとりしないか?」 「ゆ?おにいさんしりとりってなあに?」 それから30分かかってしりとりのルールをれいむに教えた 「ゆっくりりかいしたよ!れいむからでいい?」 「負けた方が勝ったほうの言うことを1つ聞くようにしないか?」 「いいよ!!かつのはれいむだからね!!」 「最初に言ったけどお酒の名前だからね。」 「ゆ!そうだったよ!じゃあれいむは・・・」 このれいむには秘策があった この青年が説明している間に絶対言えないのを考えたのだ このれいむはお酒は知っていた この青年が毎晩浴びるように酒を飲んでいたからだ 「『すくりゅーどらいばー』にするよ!」 「ば?ば・・・ば・・ば・ば・・・」 「おもいつかないなられいむのかちだよ!!」 「『馬刺しソーダ』」 「そんなおさけほんとうにあるの?」 「あるよ。」 れいむは“スクリュードライバー”で勝てると思っていたためその後が続かなかった 「お兄さんの勝ちだね。じゃあ1つだけ言うことを聞く約束だから言うね。」 れいむは何言われるのかとどきどきしているみたいだ 「言うよ。じゃあ・・・このクッキーを全部食べてくれ」 「ゆっくりわかったよ!!む~しゃ、む~しゃ しあわせ~♪」 「れいむ、よく全部食べたな。えらいぞ」 「ありがとうおにいさん!!れいむねむくなってきたよ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 このクッキーには睡眠薬が入っていたのだ れいむを持ち上げると 「しりとりもできない馬鹿なゆっくりはこの家にはいらないんだよ。じゃあな。」 と言いれいむを家から5kmほど離れた森に置いて行った 「ごごどごおおおおおおおおおおおおおお!!お゛に゛い゛ざん゛どごおおおおおおおおおおお!!!」 生まれたときから飼いゆっくりだったこのれいむ 起きた時にはいつもお兄さんがいた しかし何とか落ち着きを取り戻したようだ 「おにいさんをゆっくりさがすよ!」 探せども探せどもお兄さんは見つからない 当然であるここは森の中お兄さんがいるわけがない 「おなかすいたよ・・・おにいさん・・・」 このゆっくりは人間の食べ物ばかり食べて成長してきた だかられいむにとって虫も花も食べ物と認識できなかったので何も食べることができなかった ほかにゆっくりがいれば教えてもらえるのだろうがここはゆっくりたちにとってゆっくりできない場所なので仲間も見当たらなかった れいむがおなかがすいて動けなくなっているほど衰弱していた 普段大量に食べていたので衰弱するのも速くなっていた 「おにいさんがきてくれるはずだからゆっくりねてまつよ・・・」 もう3日も同じセリフを言っては木の下で寝ている きっとお兄さんがきてくれると思ったままれいむは永遠の眠りについた ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ここはドスの群れ とはいってもお世辞でも大きいとは言えない 群れ全体が集まっているのに50匹ほどしか見当たらないのだ そのために子供が生まれるとお祝いをし群れの数を増やそうとドスは考えたのである 「どす!こんなところでねてるばあいじゃないわよ!!」 「そうだよどす!!あかちゃんがうまれたおいわいをしているだからね!!」 『そうだったね!!ゆっくりしすぎちゃったよ!!』 「もうすぐだしもののじかんだよどす!!」 「いちばんさいしょはどすのばんだよね、ぱちゅりー!!」 「むきゅ。そうよ。こんかいもてじなをするの、どす?」 「まえはとりさんがでてきたよね!こんかいはなにがきてくれるのかな?」 ドスの帽子からは祝い事のときだけ手品が使えるようになるのだ ドス自身は何が出てくるかわからないので昔は使っていなかったが1度使ってみて鳥が出たので大丈夫と思っていた 「むきゅ。いまからどすのてじなのじかんよ!!みんなゆっくりどすのほうをみてね!!」 「「「「「「「「「「「ゆっくりみるよ!!」」」」」」」」」」」 群れの皆がドスのほうを向いた 『いくよ!3,2,1・・・』 ボン! 今度は何が出てくるのかなとゆっくり達がワクワクしていると 『ゆぎゃあああああああああ!!』 「むきゅ!どうしたのどす!」 「れみ☆りゃ☆う~♪ にぱ~」 「「「「「「「「「「「「「れ、れみりゃだああああああ!!!!!」」」」」」」」」」」」」 そこには10匹ほどのれみりゃの群れだった なんとドスの帽子かられみりゃの群れが出てきたのだ ドスはゆっくりできると思っていたのでゆっくり光線用のキノコは家に置いてきてしまっていた 万が一のことを考えドススパーク用のキノコはあったが、相手が帽子の中では意味がない 周りのゆっくりたちがきづく時にはもう既にドスの中身の半分ほどがれみりゃに食べられていた れみりゃが外の出てもドススパークは使えないだろう 「「「「「「う~ まだたりないどぉ~♪」」」」」」 ついにドスは全部食べられてしまった しかしまだ物足りないらしい れみりゃの群れの前にゆっくり達は逃げることしかできずお祝いは悲劇となってしまった あるものはれみりゃに食べられ あるものはれみりゃに誘われたゆふらんに殺されていた 生き残りは赤ちゃんを産んだれいむのつがいのまりさだけだった なぜこんなことになったのかと考えていて崖があるのに気付かず崖に落ちてしまった 「ゆ!おそらをとんでるみたいぃぃぃぃぃぃぃぃゆべ!!」 崖から落ちたまりさは即死し、この群れ最後の生き残りもまりさも死んでしまったためこの群れは全滅してしまった ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あるところに青年とれいむがいたこのれいむは危ない所を青年に助けてもらったためとても懐いている 青年もゆっくりのことは好きだったから飼うことにした もちろんれいむの了解を得てだ この青年はれいむの歌が好きだった れいむも歌うのは好きだった そしていつものようにこう言った 「なあれいむ。今日も歌歌うか。」 「ゆっくりうたうよ!!」 「今日はいつもと違って音に合わせて歌うんだぞ。」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 ~前奏中~ 「ゆ~ゆゆ、ゆ~ゆ♪」 「おいまだ前奏だ。」 「ゆ!ごめんなさい」「はいこっから!」 「ゆ!ゆ~ゆゆ、ゆ~ゆ♪」 「全然合ってないぞ、お前。」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅ!!もういっかいゆっくりうたわせね!!」 ~演奏中~ (こんどはちゃんとうたうんだから!) 「ゆ~ゆゆ、ゆ~ゆ♪ゆ?」 「もう終わったぞ。」 「なんでゆっくりうたわせてくれないのぉぉぉぉぉ!!」 「うるさい!歌って言うのはメロディに合わせて歌うものなんだよ!!」 「そんなのゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!!」 そういうとれいむは気絶してしまった このれいむはこの件以降歌を歌わなくなったそうだ 終わり ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき ホットペッパー聞いてたらかきたくなっちゃった 書けたらかけそうなの書くかも もっとネタにできそうなのはあるけど虐待に導くのが難しいな 幻想郷にクーポンはあるのかな? 一応割引券という形にしたけど・・・ 最初は速くてもだんだん遅くなるなるのが俺クオリティ だんだん書くのが遅くなっていく 今まで書いたもの fuku2957 硬いお菓子
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『行列のできるれいむのお悩み相談所』 39KB いじめ 野良ゆ 現代 どうしてこんなに長くなったのやら…… ※おまけ注意 読まなくてもお話は完結します 「はぁーっ……」 日が沈み、夜の帳が下り始めた繁華街。人工的な明かりの中、賑わいを見せるその場にそぐわず溜息を吐く青年がいた。 癖を無理矢理にワックスで固めた様な髪に不自然に皺の無いスーツ。そしてその手には履歴書が握られている。 この青年、俗に言うフリーターで、現状を打破するべくアルバイトの面接に行ったのだが、なんとその場で不採用を言い渡されてしまったのだ。 「ったく、あの禿げジジイめ……。見る目がねえっていうかなぁ……」 口から出るのは溜息か愚痴ばかり。 確かに大学も行かず二十歳過ぎてもぷらぷらしている様な奴を、そう簡単には採用出来ないという考えは分からなくもない。 だからといって、 「なーにが『今どき高卒って、君は社会を舐めてるの?』だ!俺だって好きで高卒やってんじゃねーんだよ!!」 納得出来ないものは出来ない。青年には青年なりの事情があって、大学卒業という(多少は)安定した肩書きを諦めたのだ。 まあ、今も安定した職に就けていないのは彼自身の所為なのだが、それを自身で理解しているからこそ尚更、腹立たしい。 「畜生めっ!!」 あまりの腹立たしさに、思わず手にしていた履歴書を地面に叩き付ける青年。 突然の大声と音に道行く人が少し足を止めたが、それだけ。 誰もが数秒後には彼の事など意識の外に捨て、足早に去って行く。彼に声を掛けようなどという酔狂な人物などいない。 青年は一層惨めな気持ちになるだけだった。 「ゆ!おにいさん、ゆっくりしていってね!」 「え?」 青年は俯きかけていた頭を勢いよく上げた。 周りには自分以外にもお兄さんと呼ばれるような人が居るにも関わらず、何となく自分が呼ばれたように思えたのだ。 上げた視線の先、そこに彼に話し掛ける人物はいない。しかし、 「おへんじしてくれないとゆっくりできないよ?おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「あ、ああ……。ゆっくりしていって、ね……?」 再び下げた視線の先、そこに青年に話し掛けるゆっくりがいた。一目で野良と分かる容姿をしたゆっくりれいむである。 反射的に返してしまった言葉だったが、れいむとしては満足だったのか顔をにやつかせた。それが何だか彼を少しイラつかせる。 「……お前、何で俺に話し掛けた?っていうか、何でこんな所に野良ゆっくりがいるんだ。潰されたいのか?」 「ゆゆっ、れいむつぶされたくないよ!」 「だったら早くどっか行けよ。道路も汚れないで済むしさあ」 「でも、れいむはどうしてもここにいないといけなくて、だからおにいさんにこえをかけたんだよ!」 「あ?どういう事だ?」 イラついた状態でゆっくりと会話するのは勘弁したく立ち去るように言う青年だったが、れいむが何やら訳の分からない事を言い始めた。 「れいむにはね、かわいいかわいいおちびちゃんがいるんだよ!」 「おい、何の話だそれ」 「れいむとおなじれいむなんだよ!」 「話を聞け、こら」 「ほんとうはおちびちゃんはたっくさんいたんだけど、いまはいちゆんしかいないんだよ……」 「いや、知らんがな」 「つがいだったまりさもかりからかえってこないし……」 「ふーん」 「でもね、れいむはしんぐるまざーとしてがんばるってきめたんだよ!」 「それは大層な事で」 「そして、れいむとおなじぐらいにびゆっくりなおちびちゃんに、すてきなつがいをみつけてあげるのがゆめなんだよ!!」 「自画自賛の上に親馬鹿か。救いようがねえな」 れいむのどうでもいい話に適当に相槌を打つ青年だったが、我慢がいよいよ限界にきていた。 とりあえず、れいむの頭を踏み付け話しを進めることにする。潰してもいいのだが、何も聞かずになあなあに事を終わらせるのが嫌いな青年であった。 「んで、どうして俺に声を掛けたんだ?ちゃんと答えないと潰すぞ?」 「ゆぶぶぶっ!ま、まっでね!ぢゃ、ぢゃんとはなずがら……!」 「さっさとしろよな、ったく……」 野良ゆっくりと会話するなど、虐待鬼威惨と思われかねない。 別にゆっくりを虐待する趣味などない青年としては、これ以上、世間体を悪くするのは勘弁したかった。 ようやく本題を話し始めるれいむだったが、その内容は至極どうでもいい事だった。 「れいむはおにいさんにきゃっしゅさんをもらいたかったんだよ!」 「キャッシュさん?キャッシュってのは金の事か?」 「ゆーん!そのとおりだよおにいさん!」 「あれだろ?お前らで言うキャッシュさんを集めて、甘い物でも食べようって魂胆だろ?」 「ものわかりがよくてれいむたすかるよ!ついでにそのきゃっしゅさんをちょうだいね!!」 「分かり易いし、どさくさに紛れて何を言ってやがる。誰がゆっくりなんぞに金をやるか」 れいむの言葉から、確認する為に財布から百円玉を取り出した青年。れいむは図々しくも強請ってきたが、彼は一蹴した。 それと同時に彼は失望する。このれいむの行いはただの乞食。そこらのゆっくりが日常的に行っていることだ。 ゆっくりなどに時間を割いてしまい今日は厄日だなと思わずにはいられない。 「ゆぅ……。しかたないね……」 「え……?」 しかし、れいむの思いがけない一言に驚いてしまう。 仕方ない?野良ゆっくりが殊勝な態度をとる?おかしくはないだろうか? 「おいおい、そこは『いいからそれをよこせー』とか『くそじじいー』とかじゃねえの?」 「はぁ?そんなこといったらにんげんさんにえいえんにゆっくりさせられちゃうでしょ?ゆっくりりかいしてね!」 野良ゆっくり故の生きる知恵なのか、さも当然のように語るれいむ。 確かにその通りなのだが、同時に挑発していると気付いているのだろうかと青年は疑問に思う。 「はぁ……」 何だか異様に疲れが溜まっている。 面接に行けば禿げた親父に軽くあしらわれ、意気消沈していると野良ゆっくりに絡まれる。 それは疲れも溜まるよなと、青年は自己完結するのだった。 「おにいさんはげんきがないね!」 「お陰様でな……」 会話が成立(?)したからか、馴れ馴れしく話し掛けてくるれいむ。 自分がその元気を奪っている要因などとは露とも思ってはいないのだろうその笑顔が、青年は何とも妬ましい。 いっそゆっくりみたいに能天気に生きれたらなどと致命的に馬鹿な妄想をしてしまう。 「なにかおなやみがあるのなら、れいむにそうっだんするといいよ!」 「ああ?お前に相談だぁ?」 「そうだよ!れいむはおなやみそうっだんのえきすぱーとっ!だからね!」 いやいやそれはまずいと妄想を振り払っていた青年に、れいむは更に訳の分からない事を言い出した。 「ふーん。それは何でもいいのか?」 「どんとこーい!だよ!」 「ちなみに、そのお代は?」 「きゃっしゅさんでいいよ!」 「やっぱりか」 結局、行き着く先はそこ。欲望に忠実なゆっくりらしい思考だ。 しかし、ゆっくりに相談とはどうだろう。如何に青年といえど、そこまで落ちぶれたつもりはない。 となると、彼がこのれいむに相談するのはお門違いである。 「悪いけど、俺がお前に相談することはないな。多分、未来永劫に」 「ゆぅー。ざんっねんだよ……」 そう言って項垂れるれいむ。余程お金が欲しいのだろう。 だかといって、野良ゆっくりがお金をもっていたとしても使えるはずもなく、むしろ持っているだけで盗んだと疑われるのが落ちだろう。 「っていうか、お前は何でそんなに金を欲しがるんだ?そこまで甘い物が食べたいか?」 「れいむはいまのごはんさんでじゅうっぶんだよ!でも、おちびちゃんはべつだよ!きっとたべたいにきまってるよ! れいむはおちびちゃんをぜんっぜんゆっくりさせてあげられないから、せめてあまあまだけでもたべさせてゆっくりさせてあげたいんだよ!!」 あえて非情な現実を伝えることはせず、青年はれいむに質問した。すると、れいむはその行い全てが我が子の為だと誇らしげに語る。 きっとこのれいむは本物の母性を持った『れいむ』なのだろうが、青年にはやたらと勘に障った。 その根拠無く自身に満ち溢れる瞳からは、きっとこのれいむがお金を稼ぐことの難しさを理解していない事が容易に伺える。 自分の夢を語ればきっと人間は共感し、お金をくれるはず。……誇大妄想にも程があるというものだ。 そんなどうしようもなく甘い考えを、青年は叩き折ってやりたくなった。 「……お前、もし金が手に入るのなら何でもするか?」 「あったりまえだよ!」 「絶対に?」 「もっちろん!」 「途中で諦めたりしないな?」 「とうっぜんだよ!」 「よし、言ったな?」 言質は取ったぞと、青年の口元が歪む。 彼はもう世間体など気にしないことにした。所詮はこの場限りなのだ。野良ゆっくりと会話をする変人に思われたってどうという事はない。 ただ、この世間知らずな馬鹿ゆっくりに、この世の厳しさというものを教えなくては気が済まなくなっていた。 「おい、喜べ。お前の金稼ぎ、俺が手伝ってやるよ」 「ゆゆっ!?ほんっとうなのおにいさん!?」 「ああ、本当だ。ただし、あくまで『お仕事』だからな?楽ができると思うなよ?」 「ゆ、ゆっぉおおおおおおー!!おにいさんがいるならひゃくっにんっりきだよぉおおおおおおー!!」 「ははっ……」 れいむの過大評価に青年は苦笑するしかない。 彼はただのフリーター。世の中を動かすことなど出来るはずもなく、またその厳しさ全てを知っている訳でも当然ないのだ。 「……という仕事なんだが、お前にぴったりだろ?」 「かんっぺきだよ!こんなことをおもいつくなんて、おにいさんはてんっさい!だね!!」 「お世辞はいい。俺は準備をしてくるから、お前はここで待ってろ。くれぐれも誰かに潰されたりするなよ?」 「りょうっかいだよ!!」 それでも、このれいむには自身の知る厳しさの十分の一でも刻み付けたいと思った。 お金を稼ぐという行為が、どれ程に大変な事なのかを……。 「ゆーん!にんげんさん、よってらっしゃいだよー!れいむのおなやみそうっだんじょがはっじまるよー!!」 十数分後、準備が整った青年とれいむは早速『お仕事』に取り掛かることにした。 準備と言っても『仕事』を行う上で欠かせないある物を買ってくるのに時間がかかっただけで、他は数分で済んでしまっていた。 場所は変わらず繁華街だが、路上で行う為、警察の御厄介にならないように人通りの少ない路に移動している。 青年も流石に人生に一生残る様な恥を野良ゆっくりなんかと一緒には残したくない。 さて、肝心の『仕事』内容だが、単純な肉体労働などでは勿論ない。 ゆっくりに肉体労働が務まる筈も無く、ましてや青年がゆっくりの為に汗を流すなどあり得ない。 ではお歌でも歌わせるかとなると、それは単なる物乞いであって『お仕事』にはならない。 青年が目に付けたのは、れいむが言っていた悩み相談という言葉だ。 何やら大層な自身を持っていたようなので、それを仕事にしてみてはとれいむに進言したしたところ、僅か二言でめでたく『お仕事』が決定した。 「そうっだんりょうはいっかいひゃくえんさんだよ!ゆっくりよっていってね!」 ちなみにお悩み相談の料金はれいむの言う通り一回百円。隣に突っ立っている青年が、不要となった履歴書の裏に少々汚い字でその旨を示している。 ゆっくりに悩み相談、しかも一回に百円も取られる。これでは『お仕事』になる前に潰されるのが早いのではと思われるだろう。 事実、道行く人はれいむの声(と側に立つ青年の姿)に不思議そうな顔だったり、あからさまに不快な顔を浮かべている。勿論、れいむの声に立ち止まる人はいない。 「ゆーん、にんげんさんはゆっくりしてないよ……。れいむのおはなしをぜんっぜんきいてくれないよ……」 「何だまだ始めたばかりだろう?」 「でも、にんげんさんはれいむをむししていくよ……」 「まあ、初めはそんなもんだって」 「ゆぅぅ……」 れいむは落ち込むも、青年の中では想定内の事態である。 しかし、一回で百円もするれいむ相談所だが彼はイケると踏んでいた。その胸の思いを確信へと変える為、彼は行動に出る。 「あのなぁ、誰にでも声を掛けりゃ良いってわけじゃねーんだぞ?例えばよ、あの向こうから歩いて来るおっさんを見てみろ」 「ゆ?あのにんげんさん?」 「そうだ。どうだ、あのおっさんはお前から見てゆっくりしてるように見えるか?」 「ゆむむむむ……」 青年におっさんと呼ばれた人間をれいむは注視する。 どうにもくたびれた感じの人間だ。着ている服がよれているのが尚更そう感じさせる。 しかし、何よりも特筆すべきはその纏っている空気だ。れいむにはその人間の周りだけ空気が若干、死んでいるように思えた。 それら全てを考慮に入れ、れいむは結論を出す。 「ゆっ!とーってもゆっくりできてないよ!!」 野良であるれいむからしても、その人間はゆっくりしているようには見えなかった。故にこの結論。 「だろ?きっとあのおっさんは何か悩みを抱えてるんだ」 「お悩みさんを?」 「ああ、だからゆっくりできていない。そんでさ、お前の『お仕事』は何だったっけ?」 「それはにんげんさんのおなやみそうっだんにのってあげること、……ゆ?」 「気付いたか?」 青年の誘導によって、ようやく理解するに至ったれいむ。 れいむは最初から『数撃てば当たる』とばかりに、通行人に声を掛けまくっていたからいけなかった。 悩みを相談する場所ならば、悩みを持った者を誘えばいいだけの話である。 「……あのにんげんさんを、れいむのおきゃくさんとしてむかえればいいんだね?」 「そうだ。ほら、早く声を掛けろ。おっさん行っちまうぞ」 「ゆ!?」 気付けば件の人間はれいむと青年の前を通り過ぎようとしていた。 声を掛けるならば正に今という絶妙なタイミングで、れいむは人間の歩みに待ったをかける。 「そこのにんげんさん!おなやみがあるのなら、れいむにそうっだんしていってね!!」 「……は?」 れいむ相談所、記念すべきお客様一号の誕生の瞬間だった。 「……それで、私はどうしてここにいるのかな?」 「にんげんさんがとってもゆっくりしてなかったからだよ!」 「おっさんが辛気臭そうにしてたからだな」 一回りぐらい年下に思える青年とその連れのれいむからのあんまりな言葉に、おっさんと呼ばれた男は頭を抱えてしまいたくなった。 男はしがない管理職。上から叩かれ下から突き上げられの毎日を過ごす苦労中年である。 今日も部下(新人)の失敗を取り戻す為に奔走し、疲れた身体を引き摺り帰路に着こうとしていた。しかも、この後はまだ妻の愚痴を聞くという大事な仕事が待っている。 我が家に帰ろうとも休みは無いのかと、帰宅の途中だというのに意気消沈してしまっていた。 そして、そんな暗澹たる気持ちの中で声を掛けて来たのがこの一人と一匹だった。自分が足を止めた理由もよく分からないまま、男はとりあえず気になった事について問うてみる。 「いや、辛気臭いって……。そんなに私はゆっくりしてない顔だったのか?」 「ああ。如何にも私は不幸なんですー、って面してたな」 「にんげんさん!ゆっくりしないとゆんせいがだめになるよ!ゆっくりしようね!」 一人と一匹は何の躊躇いも無くそう言い切った。 何処となく部下と似ている青年の言葉には容赦というものがまるで無く、的確に男の弱い所を突いてきた。 それだけに、れいむの能天気な言葉が僅かに心に染み、つい自嘲気味に男は言葉を漏らす。 「ははっ……。そうか、私はそんなに不幸面を晒していたのか……」 「見てるこっちが暗くなりそうだったぜ?さっきのあんたの顔」 「はは……、は……」 青年の追撃の言葉に苦笑さえ浮かべるのが困難になってしまった。 普通は何か言い返すのかもしれない。しかし、男にはそんななけなしの気力さえも奪い尽くされてしまっていた。 「だからさ、ここであんたの鬱憤を晴らしちまえよ」 「え?」 だからこそ驚いた。自分の心をへし折った張本人が、そんな提案を持ち掛けてきたのだから。 まさか落とした後に持ち上げる新手の商法か何かではないかと警戒する男だったが、青年はそんな様子も気にせず話を続けていく。 「溜まってんだろ、不満とか不安とか?そうじゃなきゃあんな顔しないって」 「あ、ああ」 「だから、ここでおっさんのそれをぶち撒けりゃあいいんだよ!」 「ぶ、ぶち撒けるって……。それにここって……」 青年の意図が分からずに混乱してしまう男。 青年は男のそんな様子に、まるで役者か何かの様に大袈裟に首を振りながら答える。 「ここはここだ。あんたの足元には何がいる?」 「何って……、ゆっくり?」 「そうだ。そして、あんたは何でここに足を止めたんだった?」 青年の言葉に、男はつい先程までの記憶を思い返す。 自分は確かに暗い面持ちで帰り道である繁華街を歩いていた。そこに馴れ馴れしく声を掛けてきたのが、青年とれいむだった。 そういえば、足元のれいむが何か言っていた気がする。それは確か、 「まさか、悩み相談?」 「そうそう。それであんたの悩みを解決。そして大団円、ってね」 「それは勿論……、君が乗ってくれるんだよな?」 「俺がそんなこと出来るような奴に見えるか?あんたの相談相手はこいつだよ」 「ゆん!れいむにかかればどんなおなやみもそく!かいっけつ!だよ!」 男は目眩を覚えた。ゆっくりに悩み相談?冗談も大概にしてほしい。 金バッヂを取得している真に優れたゆっくりなら分からないでもないが、足元のれいむは汚れ具合からして野良の様に思えた。 となると十中八九、れいむが人間の相談に乗れる技能などあるわけが無く、同時にその隣に立つ青年が野良ゆっくりに構う様な暇人である事が窺える。 途端に胡散臭さが増し、面倒なことに巻き込まれたのだと今更になって自覚する男。 何より落ち込むのは、そんな馬鹿げた話しについ足を止めてしまった自分はどれだけ思い詰めていたのかという事だ。 「相談って……、ゆっくり何かにそんなことが出来るはず無いだろう!?」 「いやいや、こいつはきっとあんたの悩みを解消してくれるよ?」 「にんげんさん!しつれいなこといわないでね!れいむはえきすぱーと!なんだからね!!」 「ほら、本ゆんもこう言ってるし」 「自称じゃないか……」 話しにならない。もう関わるのはやめようと男は決断し、帰り道へと足を向けようとする。 すると、男の動きを予知していたかの様に青年がそれを阻む。いい加減に我慢が限界に近い男は不快を隠そうともせず青年に言う。 「私は疲れているんだ、もう関わらないでくれ!」 「まあまあ、通販番組を見る為に時間を割いてると思って……」 「私は通販などしない!『時は金なり』という言葉を知らないのか君は!?」 「通販も見たり聞くだけならタダだよ」 「何を馬鹿な……っ!」 男の言葉を飄々とした態度で流す青年に業を煮やしかけた瞬間、青年が男の首にその腕を巻き付けてきた。 傍から見れば、まるでいじめっ子に金をせびられるいじめられっ子の様な構図である。 「ほら、耳を貸しなって」 「わ、私を揺する気か!?やっぱりそれが目当てで……!」 「んな気は無いって。今から話すのはただの相談方法だよ」 「いいから離してくれ……!」 「その方法ってのがな……」 いよいよ男の言葉を無視し話し始めた青年。そんな話など聞きたくないとばかりに、何とか青年の腕を首から外そうと奮闘する男だったが、思いの外その力が強く困難だった。 聞くものかと思った時に限って内容は耳から頭に入ってくるもので、青年の話す事はすらすらと男の頭の中に刻まれていく。 そして、一通り青年が話し終えた時、男の顔は初めはぽかんとしたものだったが、次第に頬が引き攣り始める。 「……以上だけど、斬新でしょ?」 「斬新って……。そんなこと、私には出来ないぞ!?」 「いいんだって、本ゆんはやる気満々だしさ」 「君はこのゆっくりが可哀想だと思わないのか!?」 「んー。無理矢理やらされてるならそう思わなくもないけど、こいつとは合意の上だし」 「し、しかしだな……」 「こいつは自分の子供にどうしても甘い物を食べさせたいんだと。その為の『お仕事』なんだよ」 男は愕然とした。 てっきり青年はゆっくり虐待趣味の人間で、今も面白半分に自分を巻き込んでいるのではと思っていたので、真っ当な理由に虚を突かれてしまったのだ。 「おら、お前の出番だぞ」 「おにいさん、ゆっくりしすぎじゃないの?れいむ、まちくたびれちゃったよ!」 「文句ならおっさんに言ってくれ」 「にんげんさん!ゆんせいはときにすぱっ!とけつっだんすることもだいじだよ!!」 「流石はエキスパート、それっぽい事も言えるのな」 「ゆっへん!」 何やら当の一人と一匹は勝手に話を進めてしまっているが、男は相談するとは一言も言っていない。 慌ててその場を去ろうとするも、時既に遅し。男の目の前には、青年によって掬いあげる形で抱えられたれいむ(消毒済み)がいた。 「さ、おっさん。何時でもどうぞ」 「どうぞっだよ!」 「あっ……」 青年の手、正確にはその手に抱えられているれいむを見た瞬間、男の中で二つの事が起きた。 一つはつい数瞬前まで一刻も早くその場から離れようとしていた足が、縫い付けられたように動かなくなった。そして、もう一つ、 「ゆっ!にんげんさん!」『あっ、先輩!』 「……っ!?」 れいむの無駄に自信満々な顔、それに厚顔無恥な自分の後輩の顔が重なったのだ。 「おかおがゆっくりしてないよ?ぽんぽんいたいの?」『先輩、顔色悪いっすよ?腹痛ですか?』 「……」 「それのげんっいんは、きっとすとっれすだね!」『それきっと仕事疲れですよ』 「……」 「むりしてちゃめっ!だよ!」『無理して仕事しちゃあ駄目っすよ』 きっと目の前のれいむは純粋に自分を心配してくれている。だが、 「『だから』」 どうしてもその顔が、声が、 「れいむにおなやみそうっだんをまかせてね!」『今日の仕事は俺に任せて下さい!』 否応無しに重なってしまうのだ。 このれいむと後輩は違う。違うと分かっているのに……。 「……なあ」 「ゆ?なに、にんげんさん?」 「君は私の『相談』に乗ってくれるんだよな?」 「あったりまえだよ!なんでもそうっだんしてね!!」 「そうか……」 「ありがとう」 「ゆ?にんげんざん、なにをしでべらぁっ!?」 男は既に『相談』をせずにはいられなかった。 「い、いだぃいいいいぃいいいい!!どうしてれいむをなぐるのぉおおおおお!?おなやみそうだんはどうしたのぉおおおおお!!!」 「何でって、可笑しい事を言うな。これが君の悩み『相談』の方法なんだろう?」 「ゆぅ!?」 全く寝耳に水だという風に驚きの表情を浮かべるれいむだが、スイッチの入った男には至極どうでも良かった。 「なあ、君はゆっくりなのにどうして彼にそっくりの顔をしているんだい?どうして言い訳するんだい?」 「な、なにをいってるの……?」 「私も君が仕事を任せろって言った時はそれは嬉しかったさ。でもさあ……、」 「にんげんさ……」 「どうしてそこで失敗するんだ!何でそれを隠そうとするんだ!!あまつさえへらへらと笑っていられるんだ!!! さっさと言えばいいものを……!よりによって帰る間際に言わなくてもいいじゃないか!!おかげでこんなにも帰るのが遅れてしまった!!! どうして君の失敗の為に私が頭を下げなきゃいけない!?君がいの一番に頭を下げるべきだろう!! 結局は私が全部する事になったじゃないか!君は今日一日何をやっていたんだ!? 分からないのなら聞けよ!適当に済まそうとするなよ!!迷惑するのは私や君だけじゃないんだぞ!!! 大体、最近の仕事疲れだって君の仕事の補助に回ってるからなんだよ!いい加減あれ位の仕事一人でこなせるようになってくれよ!! 私だって本当はゆっくりしたいんだよぉおおおおおおっ!! ……何だその顔は?私が悪いとでも言いたいのか!?いいだろう!今日はとことん付き合ってやる!!覚悟しろぉおおお!!!」 「ゆがっ!やべでびゅ、ぼうりょぎゅべぇっ!ゆっぐりでぎなばぶぅっ!?おでがいだぎゃばあっ!! ゆびっ……、ゆじゅがっあああああ!?で、でいぶのはざんがおでじゃったぶっ!?いびぃいいいい!!おべべっ!おべべぎゃあああああああっ!! みえない!みえない゛んっ!?……っが、へいふの、へいふのひははんほこなのぉおおおおおおおおお!?」 「まだだ!まだまだ帰さんぞおぉおおおおおっ!!」 「……うわー」 もう完全にれいむと部下の区別がつかなくなってしまった男は、青年の手かられいむを奪い、その肌に拳を叩き込み続けている。 ゆっくりであるれいむが当然それに耐えられるはずも無く、野良にしては張りのあった肌は凹凸だらけに変わり果ててしまっている。 ベルセルクと化した男。歯、目、舌を喪失したれいむ。そんな両者を心身共に一歩引いた状態で見る青年。 場はこの上なく混沌としていた。 さて、この『相談』方法はお分かりだろうが青年の考えたものだ。 れいむの『相談』とは、人間に殴られてその人のストレスを解消するというもの。ゲームセンターにあるアレのゆっくり版である。 青年の持っている紙には『れいむのお悩み相談所 身体を張ってあなたの悩み受け止めます! 一回(発)百円』としっかり明記されている。 そんな本人の大部分の私情と僅かな人間味のある素敵な『相談』方法である。因みに、集まったお金は青年の懐に入る予定だったりする。 「さってと、そろそろ限界かな?」 中年の体力は如何ともし難い。二十を過ぎた辺りから腕と声に力が無くなってきている。 律儀に回数を数えていた青年は頃合いと見て、男に話しかけるのだった。 「はぁっ……、はぁっ……。私は、一体……」 「いやあ、随分とハッスルしてたけど、気分はどうよ?」 「!?……ああ。憑物でも落ちた様な、気分だよ……」 「そりゃあ、こんな往来であんだけ派手なことやればすっきりするよな」 「うっ……。って、ああっ!?」 「ん?どうしたよ、おっさん」 「いや、その、ゆっくりが……」 「ゆ゛っ……!ゆ゛っ……」 「あー、忘れてた」 『相談』を終え、晴れ晴れとした気分と羞恥の気分を味わっていた男だったが、『相談』相手であったれいむの姿を見て、顔を青褪めさせた。 男の苛烈な『相談』をその身に受けたれいむは、陸に打ち上げられた魚の様にびくんびくんと痙攣を起こしている。誰がどう見ても危険な状態である。 「だ、大丈夫なのか、これ!?」 「大丈夫、大丈夫。こっちには秘密兵器があるから」 慌てる男を尻目に、青年はあくまでマイペースに買い物袋を漁る。 その中にあるのは、『お仕事』を始める前に男が探してきた例のアレで、今回の秘密兵器である。それは、 「じゃん!オレンジジュースッ!!」 ゆっくりにとっては定番のアイテム、オレンジジュースである。 「本当にそんな物が効くのか!?」 「ゆっくりにはこれが一番の特効薬なんだって。しかもこれ、ゆっくり向けのオレンジジュースらしいし」 「効くのなら何でもいいが、早くあげないか?さっきよりも痙攣が……」 「やばっ。とりあえず、ドバ―ッ!」 れいむの痙攣が『ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……』とペースアップしているのを見た青年は、慌ててオレンジジュースをれいむに振り撒いた。すると、 「おおっ!?」 「これは、すごいな……」 男の『相談』によって膨らんだ餅の様に腫れ上がっていたれいむの肌は、時間を巻き戻したかのように元へと戻っていく。 肌だけではない。潰れてしまった目も、折れて欠けてしまった歯も、千切れて飛んでいった舌も、全てだ。 予想以上の効果に、大の男二人は思わず呆けてしまう。 「オレンジジュースって、凄いんだな……」 「ああ……」 妙に感心した風の二人だが、普通のオレンジジュースにここまでの効果は無い。 大体が傷を治し、腫れを抑える程度であり、激しい欠損を癒すことは如何に万能のオレンジジュースといえど不可能である。 だが、青年の買ってきたオレンジジュースは既存の物とは異なっていた。 名を安芸オレンジジュース。『奇跡のオレンジジュース』とも呼ばれる曰く付きの一品である。 このジュース、使われているオレンジの酸味が強過ぎるため、実は人間にはあまり好まれる味ではない。 だが、あるゆっくり虐待家が弱っているゆっくりにこのオレンジジュースを使った所、驚くべきことに忽ち全快してしまったのだ。 従来を遥かに超える効果に、虐待家の間で瞬く間にそれは広がっていった。 故にこのオレンジジュースは人間の飲料としてではなく、ゆっくり(虐待または治療)用として販売されていたりするのだ。 「ゆ……?」 「お、目が覚めたか?」 「ゆぅ、おにいさ……!?」 「あ……」 死の淵から一瞬で戻ってきたれいむだったが、その元凶である男を見た瞬間に凍り付いた。おそらくは先の恐怖で身体が竦んでしまったのだろう。 バツの悪そうな顔をする男は青年の方を見るも、何か口を挟んでくる様子はない。このままでは埒が明かないと思った男は少し慌てた感じで青年に話し掛ける。 「料金は幾らだ?」 「えーと、二十八ぱ、回だったから二千八百円だな」 「そうか……」 それだけすればこんな反応も当然か。 そう思いながら男は財布から千円札二枚と五百円玉一枚と百円玉三枚を取り出し、それを青年、ではなくれいむの目の前に置いた。 青年は不審そうな視線を送ってくるが無視。身を屈めるとれいむの身体は震えた。が、あえて気にせずれいむに言葉を送る。 「ありがとう。君のおかげで私の悩みが晴れたよ」 「ゆ?」 「それじゃあ」 それだけを言って男は立ち去る。 ごめんでもすまないでもなく、ありがとう。この場で謝ることはれいむへの侮辱の様に思えた。だからこその感謝の言葉。 「おにいさん、これがきゃっしゅさん?」 「そうだ」 「これ、れいむがあつめたんだよね?」 「……ああ、そうだよ」 「っ!れいむ、もっとがんばるよ!」 「……好きにしろよ」 「ゆへへ」 男の背中が人混みに紛れて見えなくなった後、れいむは青年に問い掛けた。 彼はれいむに返事はするものの、言葉に先程までの勢いは無い。 それはれいむの嬉しそうな顔を見たからか。 それとも去り際の男の顔が何か満ち足りたものだったからか……。 れいむにお金を稼ぐことの厳しさは刻み込めたはず。なのに、彼は実にすっきりしない気分を抱いたのだった。 おっさんと呼ばれた男が去った後も、一人と一匹は通行人に声をかけ続けた。 コンビニのレジと似たようなもので、誰かが並ぶと連鎖的にそこに人は集まるものだ。日本人特有の性質と言っていい。 現に先程までのやり取りを遠巻きに見ていたと思われる人々が、少しずつ『相談』に乗ってき始めた。 「あんの馬鹿男がっ!よくも私を捨てやがって……!5回死んどけぇえええ!!」 「ゆべばらぁっ!?」 彼氏の浮気の八つ当たりとして『相談』を持ってきたヒステリックなOL。 「糞先公め!俺じゃあ第一志望は無理だあ!?決め付けてんじゃねえよ!見てろよ、ぜってえ受かってやるからなぁあああ!!」 「ぷろぱぁっ!?」 志望校合格の宣誓をする為に『相談』しにきた高校生。 「ううっ……。自分は高いランチとか食べてる癖に、僕の小遣いはこれっぽっちとか……。千円ぐらい上げてくれたっていいじゃないかぁあああ!!」 「びゅぼぁっ!?」 自分のお小遣い事情についての不満を泣きながら『相談』するサラリーマン。 「いくぞ、兄ぃっ!」 「おうよ、弟ぅっ!」 「俺と!!」 「お前の!!」 「「コンビネーションブロォオオオオオッ!!!」」 「ぶぷふぅっ!?」 「「弾けて消えてしまえっ!!」」 必殺技っぽい何かの練習台として『相談』を求めてきた暑苦しい兄弟。 「何かてめーを見てるだけでムカつくんだよっ!!」 「ゆぎゃぶっ!?」 中々に理不尽な理由で『相談』してくる中年。 「第一打ぁあああっ!」 「ゆぷっ!」 「第二打ぁあああっ!」 「ひゅばびっ!?」 「第さ、ヒャアッ!もう我慢出来ない!チマチマやるのは性に合わねえ!!ゆっくりは地獄の十六連打だぜヒャッハ―ッ!!!」 「ゆぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!?」 「フィイイイイイニッシャアアアアアッ!!!」 「ゆびゃっぽわがっ!?」 もはや趣味的な意味で『相談』にやって来たモヒカン男。 青年もれいむも想像していなかった程の繁盛振りだった。 青年としては嬉しい誤算な上、最初の男の後みたいな気分を味わうことはなかった。ただ、客の大多数が終わった後にれいむに感謝することだけは何となく癪に思った。 当のれいむとしては痛い思いと回復の繰り返しで実にゆっくり出来ない。が、我が子のゆっくりの為と思えば我慢をすることは出来たし、客の感謝の言葉には少しゆっくり出来た。 れいむはお悩み『相談』はその後も続いた。青年の心とれいむの身体を削りながら……。 「まいどありー」 「すっきりー!ありがとうな、れいむー♪」 「ゆ、ゆっくりまたそうっだんにきてね……」 『お仕事』を始めて二時間弱が経った頃、遂にオレンジジュースが切れてしまった。 オレンジジュースが切れてしまっては続けようもないので、自然とさっきまでの客が最後となった。 「いやー、提案した俺が言うのもなんだけど、よく耐えたな。お疲れさん」 「すごく、ゆっくりはできなかったよ……」 「だろうなあ。これでゆっくり出来たらお前はドMだよ」 実はこんなシチュエーションが大好物なゆっくりもいるのだが、青年は知らない上にどうでもよかった。 今はただ、目の前にある現金を勘定することが大切なのだ。 「一、二、三……」 お金の大半は硬貨が占めており長期戦は必至である。 が、それだけお金がいっぱいあるという事なので、青年はむしろ沢山あれという気持ちで勘定に挑んでいる。 ゆっくりであるれいむは数字の概念をほとんど理解していない為、幾ら稼げたのか緊張した面持ちで青年を見つめ続けた。 「……」 「……」 両者無言。音は周りの雑踏と、紙幣を終え続いて硬貨を積み上げる音だけ。そして、 「……終わった」 「……!」 青年の言葉に視線を強めるれいむ。そこには自分が幾ら稼げたのかという不安と期待が同居している。 その目を見据えながら、青年はその金額を告げる。 「一万七千五百円」 「ゆ?」 「一万七千五百円だ」 「それって、たっくさん?」 「まあ、たっくさんだな」 「……っ!ゆ、ゆぅうううう!やったよ!おかあさんはきゃっしゅさんをたっくさんかせいだよぉおおおおお!!」 一気に喜びを爆発させたれいむだが、喜びたいのは青年も一緒だった。 まさかこれ程に稼げるとは思わなかった。短時間で、しかもゆっくりを使っての商売でこの大金だ。嬉しくないはずがない。 後はこのお金を持って帰るだけである。しかし、一時とは言え『お仕事』のパートナーだったれいむに何の礼も言わないのは気が引けた。 だから、彼は最期にれいむに礼をすることにした。この選択が、後の彼の人生を大きく変えるとは思いもせずに……。 「ありがとうな。お前のお陰でこんなに稼げたよ」 「おれいをいいたいのはれいむのほうだよ!おにいさん、ありがとう!!」 「え?」 男は悪意満々の感謝の言葉を口にしたが、まさか基本的に自分本位のゆっくりから感謝されるとは思っていなかった。 頭に疑問符を飛ばす青年だったが、こういう所はゆっくりらしく彼のことなど気にせず話し続ける。 「れいむはね、うれしかったんだよ!にんげんさんとおはなしできたことやおしごとできたことが!」 「いや、お仕事って……」 「たしかにおなやみそうっだんはすっごくいたくてゆっくりできなかったよ!」 「だろ?だから……」 「でもね?にんげんさんがれいむにありがとうっていってくれたとき、すっごくゆっくりできたんだよ!」 「ゆっくり出来たって……」 「まちがいないよ!おちびちゃんがうまれたときとおなじぐらいゆっくりできたよ!!」 「いや、おかしいだろ……?」 「れいむはにんげんさんはみんなゆっくりがきらいだとおもってたよ!でも、れいむにきゃっしゅさんをくれたし、ありがとうもいってくれたよ!!」 「待て、待ってくれ……」 「それだけじゃないよ!れいむ、おにいさんいがいのにんげんさんとあんなになかよくはなすこともできたんだよ!」 「お願いだから……」 「おにいさんがいなきゃきづけなかったよ!にんげんさんはみんな、おにいさんみたいにやさしいって!!」 「違う、俺は……」 「れいむのおちびちゃんにもきょうのおはなしはしっかりつたえなきゃね!ゆっくりとにんげんさんはなかよくできるって!!」 「違うんだ……」 「おにいさん!れいむとはなしてくれてありがとう!れいむににんげんさんのやさしさをおしえてくれてありがとう!」 「俺は……」 「れいむに、おしごとをおしえてくれてありがとうだよ!おにいさん!!」 青年は言葉が出なかった。いや、喉がキュッと締ってしまい呼吸すら怪しい。 何とか気道を確保しながら、酸欠の様な状態で青年はその場を離れようとする。 「ゆ?おにいさん、だいじょうぶ?ゆゆ?きゃっしゅさんはどこ?ねえ、おにいさん?」 目の前の何処にでもいるような、しかし自己を壊しかねないゆっくりから、一刻も早く逃げる為に。 れいむは困ってしまった。『お仕事』の相方である青年が姿を消してしまった。しかもれいむが稼いだお金を持ってだ。 普通の人や賢いゆっくりなら、れいむは騙されて利用されるだけ利用され捨てられたのんだと思うだろう。だが、 「ゆぅ……。おにいさん、くるしそうだったけどだいじょうぶかな?ゆっくりできてるのかな?」 このれいむはそんな相手を慮る。自分の恩人が苦しそうにしていたのだから、心配するのは当然だという思考で。 「しんっぱいだよ……」 優しい人間を教えてくれた青年は、同じく優しい人間に決まっている。れいむの中では一種の固定観念が出来上がってしまっていた。 れいむは騙されたとも気付けないような悲しいまでに純粋な個体だったのだ。 「ゆっ!そういえば、きゃっしゅさんがなくなっちゃったよ……」 今更ながられいむはその事実を思い出した。 我が子の為、あれだけ痛い思いをして得た物が無くなってしまったのは非常に悲しい。 「こまったけど、せにはらはかえられない!っだよ!」 ここで立ち止まっては今までと一緒だった。しかし、今は違う。れいむはお金を稼ぐ手段を知っているのだ。 優しい人間さんならまた自分にお金を与えてくれる。またありがとうの言葉をくれる。そして、我が子にあまあまを食べさせてあげられる。 それだけでれいむは今からの『お仕事』の辛さなど吹き飛んでしまうと感じられる。 青年の具合が治っていれば良い。そうしたらもう一度会いたい。会って彼に自慢の我が子を紹介するのだ。 そんな小さな幸福の未来を思い浮かべながら、れいむは口を大きく開き、 「にんげんさん!れいむのおなやみそうだんじょがはじ……」 「んな事する必要はねーよ」 「ゆ?」 その商売文句は青年の言葉に遮られた。 「お、おにいさん!からだはだいじょうぶなの!?ゆっくりできてる!?」 「ゆっくり出来てるかは分からんが、大丈夫だ」 「よかったよー……」 「ん、すまん。実はお前に渡す物があってな、それを用意しに行ってたんだ」 「ゆ?れいむに?」 つい先程までとは逆に疑問符を浮かべるれいむ。そして、それを気にせずにビニール袋を漁る青年。 彼がれいむの為に用意した物。それは、 「おら、やるよ」 「ゆ?このいたさんはなーに?」 「ん、分かんないか?チョコだよ○治の」 「ちょこれーとさん?あま、あま……?」 「ああ、お前らで言うとこのあまあまだ」 青年はそうぶっきら棒に言い放つ。 れいむは呆けた顔をして固まっているが、彼は言い訳でもしているかの様に早口で事の詳細を捲し立てる。 「確かにお前は金を稼いだ。それはすげえよ、本気ですごいと俺も思う。 でもな、お前はゆっくりだ。野良ゆっくりじゃあまあま?は金を持ってても手に入らないんだよ。 だからその、何て言うか、その……」 ゆっくり相手だと言うのに口が上手く回らない。ああ、だから俺は面接で落とされたんだなと場違いながらも思ってしまった。 でも、この一言だけはきっと言う。青年はここに来るまでにそう決めていた。 「ありがとう、な」 感謝の言葉。それは相手がゆっくりだとしても言いそびれてはいけない。 「ゆ?どうしておにいさんがありがとうをいうの?れいむはおにいさんになにもしてないよ?」 「いいや、お前はお前が気付かない内にいっぱい俺にしてくれたよ。だから、このありがとうは当然なんだ」 「とうっぜんなの?」 「当っ然だ」 「ゆふふ。へんなおにいさんだね!」 一人と一匹はまるで友人同士であるかの様に親しげに言葉を交わす。 いや、彼らの中には確かに人間とゆっくりという種族間の垣根を越えた友情が形成されていた。 「それじゃあ、あまあまもてにはいったし、れいむはそろそろいくね?おちびちゃんがまってるよ!」 「そうか。気をつけてな、チョコを落としたりするなよ?」 「ゆん!わかってるよ!おにいさんはれいむをしんっらいしてね!」 「ははっ」 しかし、そんな彼らにも当然の様に別れの時は来た。 おそらくはもう二度と会うことは無いだろう。だからこそ、最後は後腐れのないように済ます。 「じゃあな」 「さよならだよ」 別れの言葉は僅か二言。しかし、青年とれいむにはそれで十分だった。 ぽんぽんと跳ねながら去って行ったれいむの姿が路地裏に消えた後、青年はまだその場に立っていた。 しかし、そこには最初には無かった力強さが宿っていた。 「ありがとう……」 れいむが消えていった道、そこに向けて再び感謝の言葉を呟く青年。 本当なら一回や二回の感謝で済むものではない。彼はれいむに救われたのだ。 れいむの言葉が無ければ、彼は自分の行いに何の罪悪感も感じられなかった。 れいむの言葉が無ければ、彼は畜生道を歩んでいたかもしれない。 れいむの言葉が無ければ、彼は人生に生き甲斐を得ることはなかった。 はっきり言えば、青年はれいむに嫉妬していた。 騙されているというのにそれに気付きもせずに声を張り上げ、ゆっくり出来ないだろうにゆっくり出来ると言い、最後は彼に感謝までしてきた。 青年は理解したのだ。自分はれいむの前向きさ、その心意気に劣等感を感じていたのだと。 あの金はれいむが自力で、身体を張って稼いだお金だった。無産市民の自分とは違う。 そして、その金に手を付けた時、彼は完全完璧なまでにれいむに負けると悟った。 次に湧き上がったのは涙、ではなく枯れたはずの反骨心だった。いくら相手がれいむとはいえ、ゆっくりに負けることはさすがの彼も許容しかねた。 れいむの稼いだお金、これははっきり言ってれいむの様な野良が持っていては危険を招くだけだ。れいむには悪いが、全て募金に回すことにした。 だから、彼はれいむの為のチョコを買った。自腹で。 それは彼の現時点でのなけなしの反骨心そのものであり、また枯れた感情を呼び覚ましてくれたれいむへの本当の感謝だった。 「ありがとう、れいむ……」 青年はもう一度そう呟き、その場を後にした。 十数年後、青年はゆっくり業界の若き重鎮となる。 彼はれいむと別れた後、猛烈な勢いで勉学を修め、この業界に入った。 彼が唱えた人間とゆっくりの共存は、初めの内は若者の夢見がちな意見と鼻で笑われた。 しかし、彼の熱意とそれに裏付けされた実績が、次第に周りを惹き込んでいった。 今では試験的ながらも、完全に人間とゆっくりが共存している地域も生まれてきている。 彼はゆっくり業界の奇跡などと呼ばれるが、彼自身は満足などしていない。 以前程ではないとはいえ、ゆっくり、特に野良への風当たりは未だ強い。彼の理想は全ての人間とゆっくりの共存である。 その理想が叶う日まで、彼が歩みを止めることはない。 「私がゆっくりとの共存を理想とする理由?ふむ、それはあるゆっくりれいむとの出会いがきっかけでね……」 全てはあのれいむに負けたくないという未だ消えぬ思いと、れいむの理想を叶えたいという一心故に。 後書き どうも、蜜柑あきです。前の投稿から結構間が空きましたが、何とか書き終えました。レポートさんは、ゆっくりできない……。 前作があんまりだったので私なりに気合い入れて書いてみたら、最初は20KB以内に収めるつもりだったのがどうしたことか倍近くに……。 久し振りのれいむメイン作品でしたが、自分で書いててれいむが可哀想に思えました。でも、こういうお馬鹿なゆっくりなら私は飼ってみたい。 次回はいただいたネタを書きたいなー、と思っています。ではでは。 P.S. 前回に引き続き、anko3065『まりさのお家』の挿絵を描いていただき、ありがとうございました。 書いたものはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3404.html ご意見・感想はこちら http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1304737576/l50 おまけ:その後のれいむ 「おちびちゃん!ゆっくりただいま!」 「ゆゆっ!おきゃーしゃんゆっくちおきゃえ、どおしちゃのしょのおきゃおはぁあああ!?」 野良れいむはまだ身体の芯に残る痛みを我慢しながら、戦利品である明○の板チョコを持って我が子である赤れいむの待つ家に帰った。 幾分腫れ上がった身体を心配されるも、どうということでもないとばかりにれいむは我が子へ朗報を告げる。 「しんぱいしないでね、おちびちゃん!おかあさんはおしごとをがんばったんだよ!すっごくゆっくりできなかったけど、がんばってあまあまをてにいれたんだよ!」 「ゆーっ、あみゃあみゃ!?ちゃべちゃい!れいみゅいみゃしゅぐちゃべちゃいよ!!」 野良ゆっくりが求めて止まないあまあま。それが手に入ったというのだから、赤れいむのテンションは跳ね上がった。 「ゆふふ。おちびちゃんのげんきがでて、おかあさんほんとうにうれしいよ!じゃあゆっくりしないであまあまをたべようね!!」 「ゆわーい!あみゃあみゃ!あみゃあみゃー!!」 今まで碌にゆっくりさせてあげられなかった我が子の喜ぶ姿に、涙を流し、心の中で青年に感謝するれいむ。 赤れいむはそんな親の機微になど気付くはずもなく、ただ目の前にあるあまあまの味に期待を注ぐのだった。 「まってねおちびちゃん!……ゆ?なんなのこのかみさんは?」 「ゆー?おきゃあしゃん、れいみゅはやくあみゃあみゃちゃべちゃいよ!」 「ゆっゆっ!ちょ、ちょっとまってねおちびちゃん!ゆぐっ、ゆんぐーっ!!」 しかし、問題が起きてしまった。チョコレートを包む紙、それが取れないのだ。 元々は人間を対象としたお菓子なのだから、手足を持たないゆっくりに取ってみろというのは酷な話である。 不審がる我が子に対して、大丈夫だと言う様に奮闘するが、包み紙が取れる気配は無い。 「にゃにをゆっくりやっちぇるのおきゃあしゃん!?れいみゅはゆっくりしないであみゃあみゃがちゃべちゃいっちぇいっちぇりゅでしょー!?」 「ま、まってね!すぐにたべれるからね!?ゆぐーっ!かみさんはゆっくりしないでやぶけてねぇえええっ!!」 段々と不穏な空気が漂い始めるれいむ親子。しかし、ゆっくりの世界では特に珍しいことでもない。そして、 「あまあまをもちかえったっていうれいむのいえはここなのかぜぇえええ!?」 「いますぐあまあまをちぇんによこすんだよー!わかれよー!!」 「けんじゃなぱちぇはずのうろうどうがしごとだからとうっぶんがひつようなのよ!そのあまあまをわたしなさい!」 「みょんだってつかれたからだにはあまあまがひつようだみょん!ぱちゅりーはうせるみょん!」 「むほぉおおおおおっ!がらなちょこさんはどこなのぉおおおお!?はやくありすにけんじょうなさぁあああい!!」 「ゆんやーっ!?れいぱーだぁああああっ!!」 「はぁああああっ!?すべてのあまあまはすべからくでいぶのものでしょおおおおお!?むちなげすどもはゆっくりしないでしんでねぇええええ!!」 「じゃまだぁあああ!くそでいぶはさっさとうんうんしておうちでねてるがいいのぜぇえええーっ!!」 運良くあまあまを手に入れても、それを他ゆんから奪われることもまた然り。 如何なる風の噂があったのか、いつの間にかれいむ親子の家の前には野良ゆっくりが大挙していた。 「「「「「「「「あまあまよこぜぇええええええぇええええええぇええええええぇえええええーっ!!!!!」」」」」」」」 「「ゆんやぁああああああああぁああああああぁあああああ!?」」 たった一個の板チョコをめぐって醜い争いが始まり、繁華街の野良ゆっくりの数は激減した。 そして、どの野良ゆっくりもが渇望したあまあまは、多くのゆっくりに踏み砕かれ、何者の口に入ることなく路上のシミへと姿を変えたのだった……。 「お、にい、さん……」
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『存亡を賭けた戦い(後篇)』 D.O 群れは滅亡の危機に瀕していた。 れみりゃの襲撃以前から比較すれば、成体ゆっくりで20分の1、 子ゆっくり・赤ゆっくりまで合わせれば50分の1まで個体数を減らしていたのである。 だが、未だ群れはその結束を失ってはいなかった。 ゆっくりプレイスから脱走したり、無力な幹部を罵倒するゆっくりは一匹も出てこなかった。 と、言うか、群れのゆっくり達はすっかりれみりゃに怯えていたので、 下手に群れから脱走したりして、孤立するのが怖くてしょうがなかっただけであったのだが。 「むきゅぅぅううう!!みんな、これからは、ぱちぇがむれのしきをとるわ!!みんな、まけちゃだめよ!!」 しかし、理由はどうあれ群れは原型を保っており、活力も失われていなかった。 それに、諦めの悪い者も、まだまだ多く生存していたのである。 新たに長に就任した若きぱちゅりー。 無論、群れ内では有能な部類ではあったが、知識や功績ならばもっと上がいた。 だが、幹部の投票では全員一致の結果で、このぱちゅりーが長に担ぎあげられたのである。 「むきゅっ!あきらめたら、このむれはぜんめつよ! みんな、ぱちぇたちには、もうたたかうか、しぬか、それしかのこされてないのよ!!」 「ゆ、ゆぅぅ。まりさしにだぐないぃぃ。」 「しになさい!!」 「ゆ、ゆぇぇえええ!?」 「れみりゃとたたかえば、あなたたちのおおくはしぬわ! しぬために、せんしはそんざいするのよ! だけど、れみりゃをたおせば、ゆっくりぷれいすはえいえんなのよ!! つまり―――あなたたちもえいえんなのよ!!」 「「「ゆ?ゆ・・・ゆっくりりかいしたよ!!」」」 ぱちゅりーが長に推薦された理由は、たった一つ。 このぱちゅりーが群れ一番の積極戦論者だったからである。 「でも、れみりゃはこわいよぉ・・・」 「むきゅっ!ぱちぇにかんがえがあるわ!」 問題は、やる気だけではどうしようもない戦力差であった。 だが、ぱちゅりーも無策で長を引き受けたわけではない。 「『わな』をつかったのは、しっぱいだったわ・・・くやしいけど、れみりゃに『わな』はきかないのよ。 どうしてかは、ぱちぇにもわからないけど・・・むきゅ。」 「ゆーん。わからないよー。」 群れのゆっくり達は、前回のれみりゃ撃退失敗から、大事な教訓を手にしていた。 れみりゃに罠や堀、柵などは効かないという教訓を。 その理由が、れみりゃが空を飛んでいるから、という事までは理解できていなかったが。 「だから、しょうめんからたたかいをいどむのよ!むきゅん!!」 「で、でも、みょんたちじゃかてないみょん!?」 「だから・・・『これ』をつかうのよ。」 長ぱちゅりーはそう言うと、お帽子から一冊の本を取り出した。 「「「お、おさ!?これって・・・」」」 「そう・・・『まどうしょ』よ。」 このゆっくりプレイスには、太古の昔(ゆっくり視点)から伝わる数冊の書物が、 雨風から守られた洞窟の奥に厳重に保管されていた。 それが『まどうしょ』と呼ばれている物である。 もちろん、どう逆立ちしてもゆっくりにそんなものが作れるはずは無く、 実際は、相当昔に人間が捨てていった本やら雑誌なのであったが。 そして、群れのぱちゅりー種達の仕事の一つに『まどうしょ』の管理と解読があった。 代々の長ぱちゅりー達も、『まどうしょ』から得た知識を生かして群れの拡大や防衛を行ってきたのである。 ちなみに、先々代の長が対れみりゃ対策に使った堀・柵等の工事技術は、 『月刊ゆ虐7月号:ゆっくり牧場の作り方特集号』から得た知識が元になっている。 また、先代の長が考案した罠の数々も、 『週刊ゆ虐8月号:野生のゆっくりを捕まえよう!』の挿絵を元に考えられたものであった。 そして、現長ぱちゅりーが取り出した『まどうしょ』は・・・ ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ! 「むきゅっ!れつがみだれてるわ!もういちど!!」 ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ! 「むきゅっ!そうよ!ひとりひとりじゃ、れみりゃにはかてないわ!だから、みんなでひとつになるのよ! ひとりじゃよわいれいむでも、たくさんあつまれば、どすにもかてるわ!・・・たぶんかてるわ!」 「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」 長ぱちゅりーが群れのゆっくり達に提案した戦術は、集団戦法であった。 横一列に30匹のゆっくりがずらりと並び、その横列を何層にも重ねて巨大な方形の陣形を作る。 陣形を作るゆっくり全員が、先を尖らせた木の枝を構えると、巨大なハリネズミのようになる。 あとは、その陣形を保ったまま、ひと固まりとなってれみりゃに突進するのだ。 長ぱちゅりーはこの戦法を『ふぁらんくす』と名付けた。 『まどうしょ』・・・『週刊ゆ虐10月号:ゆ虐マスゲームの全て』の挿絵に書かれていた言葉から取った名前である。 「みんな!これなら、れみりゃをきっとたおすことができるわ!ぱちぇといっしょに、さいごまでたたかってね!むきゅっ!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 そして、厳しい訓練の末『ふぁらんくす』の完成を見届けると、長ぱちゅりーは訓練の続きを幹部にまかせ、 幹部達にすら秘密のもう一つの策を準備するため、一匹で森の奥へと向かっていったのだった。 長ぱちゅりーの向かった先は、ゆっくりプレイス内でも空気のよどんだ薄暗い場所の洞窟。 中に住んでいるのは、ゲス・・・とまでは言えないものの、 群れののどかな雰囲気になじめず離れて住むことを選んだ、いわゆる『はみ出し者』達である。 「むきゅう。とってもなつかしいかんじがするわ。」 そしてここは長ぱちゅりーが、幼少時代を過ごした場所でもあった。 ぱちゅりーが長に選ばれた理由である好戦性は、しかし平和な日常では『喧嘩っ早い』という表現が近く、 群れのゆっくり達からはこれまで長い間疎まれていたのである。 恐らく、れみりゃ来襲という非常時でなければ、ぱちゅりーが長に推薦されることなどなかっただろう。 ぱちゅりーは、ここに住み着く『はみ出し者』達同様、群れからは浮いた存在だったのだ。 「・・・おさぱちゅりーさまさまが、なにかごようなのぜ?」 「わかるよー。しゅっせしたんだねー。ぱるぱるだよー。」 長ぱちゅりーが訪ねたのは、 かつての長ぱちゅりー同様、暴力沙汰を起こして群れから半追放状態だった不良ゆっくりコンビ、 不良まりさと不良ちぇん。 そしてこの2匹は、長ぱちゅりーの親友でもあった。 「むきゅ。あなたたちに、やってほしいしごとがあるのよ。」 「まりさたちに、なにをやらせるのぜ?だんったいこうどうは、にがてなのぜ。」 「むきゅきゅ。むずかしいおしごとよ。それに・・・むれのみんなにも、きらわれるかも。」 「それならもんだいなしだよー。とっくにきらわれてるよー。」 「じゃあ、ゆっくりおねがいするわ。むきゅ。」 この、喧嘩慣れして体力に自信があり、そして気性は荒いが信頼できる2匹こそが、長ぱちゅりーの奥の手だった。 --------------------------------------------------------- 「うーっ!!」 「きたわ!みんな、くんれんのとおりにたたかうのよ!むきゅーん!!」 「「「ゆっくりいくよっ!いっちにー!いっちにー!」」」 そして翌日。 ついにれみりゃとの正面決戦の火ぶたが切って落とされたのであった。 ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ! 『ふぁらんくす』は一昼夜の訓練によって、さらに完璧に機能した。 槍を構え、隊列を乱さずに前進する。 単純で、だからこそゆっくり達でも完成させることが出来た。 今ゆっくり達によってつくられた方陣は、横30匹、縦10列で構成された、巨大なハリネズミ。 「うー・・・うー?」 その姿は、れみりゃですら威圧されずにはいられない迫力を持つ、 一匹の巨大なドスの如き効果を発揮していた。 ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ! 「うー・・・」 方陣が一歩前進するたび、れみりゃは一歩分後退する。 10歩進めば、10歩分後退する。 陣形を作るゆっくり達の表情にも、いつしかハッキリと自信が生まれ始めていた。 『殺されないかも』から、『勝てるかも』へ、そして『自分達はれみりゃより強い』へと、 その表情はふてぶてしくゆっくりとした、ゆっくり本来の姿を取り戻していったのであった。 「(むきゅ・・・これは、かてるかもしれないわ。)」 それは、決して状況を楽観視していなかった、長ぱちゅりーですら例外ではなかった。 そしてれみりゃは、そんな群れのゆっくり達に押されるように後退しながら、 やれやれ、といった風にため息をついた。 「うー・・・。うっうー。」 かぷっ。 そして、適当な大きさの小石を拾って、口にくわえたまま空を飛び、 「「「ゆゆ?」」」 方陣のど真ん中、5列目中央にいたありすの頭上に飛んでいくと、 ぽいっ。ひゅーん・・・ぐしゃ。 その小石をありすの頭上に落とし、あっさりと叩き潰して見せた。 「うー。」 『ふぁらんくす』の真上で、ニンマリと微笑むれみりゃ。 「ゆ・・・とか・・・いは・・・」 陣のど真ん中で頭を潰され、カスタードを吐きながら命尽きようとしているありす。 ・・・・・・。 「「「ど、どうぢでありすがつぶれでるのぉぉおおおおお!?」」」 ・・・崩壊は、潰れたありすの後列から始まった。 「ゆひぃ、ゆひぃぃいいい!?わぎゃらないよぉぉおおお!!」 潰されたありすの後列にいたちぇんは、飛び散ったカスタードの匂いによって、 れみりゃの恐怖を思い出し、真っ先に逃げ出した。 「ゆぴぃぃいいい!?ごわいぃぃいい!!」 そのちぇんの叫びが伝染し、ちぇんの左右と、ちぇんの後方にいたゆっくり達も逃げだし、 さらに後ろの騒ぎで慌てた前列のゆっくり達も散り散りに逃げ始める。 ぽゆんっ!ぽゆんっ!・・・「ゆ?」 そして、最前列のゆっくり達が異常に気付き振り返った頃には、 その後方ではすでに、『ふぁらんくす』を構成してたゆっくり達は、一列残らず逃げ散っていたのであった。 「むきゅぅぅぅ・・・やっぱりだめだったわね。」 前線全体を見渡せる大きな石の上で、長ぱちゅりーは残念そうにつぶやく。 さすがにこれまで、2度も長を失った群れの不甲斐なさを知っているので、 長ぱちゅりーもゆっくりらしい楽観的な予想はしていなかった。 というか、長になる程度の頭があれば、この平和慣れした群れを全面的に頼ろうとは思わないだろう。 ただ、できれば賭けの要素が少ない方法でれみりゃを撃退したかったのだった。 やっぱり無理だったが。 「うっうー!!」 そしてその、群れで唯一冷静さを保ち、 落胆3割、決意7割の表情を浮かべている長ぱちゅりーに、れみりゃの熱い視線が向けられる。 「(れみりゃ・・・これがさいごのたたかいよ。むきゅ!)」 「うー?うっうー!」 長ぱちゅりーの最後の戦いが始まった。 「うー!うー!」 「むきゅぅぅううう!!こっちにこないでね!ぱちぇにちかづかないでぇええ!!(棒読み)」 長ぱちゅりーは、れみりゃに追いつかれないように、 だが明らかな目的を持って走り続ける。 れみりゃは、長ぱちゅりーの狙いなど気にしないかのように、 いたぶるようにゆっくりと、その後を追いかける。 それは、長ぱちゅりーには永遠に感じられたであろうが、長い時間は続かなかった。 長ぱちゅりーは、一本の大きな古木の根元にたどり着くと、 その場で立ち止まり、古木を背にするように、れみりゃの方へとゆっくり振り返ったのである。 そこが2匹の戦い、その終着点であった。 「むきゅ・・・れみりゃ!しょうぶよ!」 「うー。」 この、れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前。 長ぱちゅりーは、不良コンビのまりさとちぇんを連れて、この古木の下にやって来ていた。 「むきゅ。しょうじきいって、れみりゃはてごわいわ。『ふぁらんくす』でもたぶん・・・。」 「そんなこといったら、まりさたちだって、ふつうにやったらかてっこないのぜ。」 「だから!ぱちぇたちでやるのよ。ここに、れみりゃをさそいこむのよ!むっきゅ!」 長ぱちゅりーの言葉を聞いて、2匹が困惑気味に顔を見合わせる。 「わ、わからないよー?」 「むきゅきゅ!もちろん、しょうめんしょうぶじゃ、かちめはないわ!」 「ますますわからないのぜ?」 「・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめるわ。 まりさたちは、れみりゃのうしろからちかづいて、ぱちぇごとれみりゃをつきさしてね、むきゅ。」 自分を囮にしてれみりゃを必殺の間合いに引き込む。 それ自体は先代長ぱちゅりーもとった戦法だったが、今回のそれは、囮の死ぬ可能性がさらに高いものだった。 れみりゃが自分を食っている間に背後に近づけ、と言っているようなものである。 「むきゅ・・・きっと、あなたたちいがいじゃ、こわくなってにげだしちゃうわ。だから、おねがいしたいのよ。」 「わかるよー。ちゃんすはいっかいなんだねー。」 「それに、まりさたちだって、きけんはおんなじなのぜ。」 「むきゅ、それにね。おさがころされるのをほおっておいて、しかもれみりゃごと、つきころすのよ。」 「ゆぅー。へたすると、ゆっくりごろしあつかいなのぜ。」 3匹はしばし、無言になった。 ・・・だが、まりさとちぇんはすぐにふてぶてしい表情を取り戻す。 「わかるよー。これもぱちぇとしりあったせいなんだねー。」 「ほかにやるゆっくりがいないんじゃ、しょうがないのぜ。いたいおもいしても、うらむんじゃないのぜ?」 「むきゅきゅ!それでこそ、ぱちぇのしんっゆうね!」 そして、3匹は2~3打ち合わせした後、ゆふふと笑いあい、解散していった。 それは命を賭けて戦おうとしているゆっくり達にしては、ひどくあっけらかんとした別れだった・・・ 打ち合わせ通りにまりさとちぇんが待機していれば、長ぱちぇが背中をあずけている古木を一つの頂点とした、 れみりゃを囲む正三角形の、残りの2つの頂点にあたる木の根元に、2匹は潜んでいるはずであった。 あとは、れみりゃが長ぱちぇに襲いかかってくるように誘いをかけるだけである。 だがそこで、れみりゃが不可解な行動を取り始めた。 ごそごそごそ・・・ 長ぱちゅりーが先を尖らせた木の枝を構え、戦いを挑もうという雰囲気でいるというのに、 れみりゃはそのすぐ前で、自分のお帽子をゴソゴソとあさり始めたのである。 「む、むきゅ?」 そして、れみりゃはお帽子の中から、何か布切れのような物を取り出した。 「うー。」 「むきゅぅう?・・・・・・む、むきゅ・・・!?」 死臭がした。その布切れから、ゆっくりの死臭が。 それと同時に、長ぱちゅりーは、確かに感じ取った。 その布切れから、馴染み深いゆっくりの匂いを・・・ 「うっうっうー!」 「むぎゅ・・・」 困惑する長ぱちゅりーの表情を見て、れみりゃはゴキゲンそうにその目の前を飛び回る。 長ぱちゅりーがその姿に視線を向けている内、その視界に、見たくない光景が飛び込んできた。 長ぱちゅりーの斜め前方、左右に一本ずつ見える木の根元、まりさとちぇんが潜んでいるはずの場所に、 それはあった。 そこには、2匹の姿、少なくともゆっくりの形をした物は見当たらず、 そのかわり、隠そうとする気配もなく、大量の餡子とチョコレートが、辺り一面に乱雑にまき散らされていた。 長ぱちゅりーは、この場所にたどり着くのに精いっぱいで、 すぐそばを通ったはずの、木の根元の状況に気づくことができなかったのであった。 れみりゃのお帽子から取り出された布切れは、まぎれもなく、まりさとちぇんのお帽子、その破片だったのである。 れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前、 つまり長ぱちゅりーが、まりさやちぇんと、この古木の根元で打ち合わせをしていた頃、 れみりゃはその三匹の姿をすぐ近くで見ていた。 その場所とは、古木の上に作られた、捕食種のおうち。 つまり、れみりゃのおうちである。 『・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめ・・・』 『・・・・かるよー・・・』 「うー。」 ・・・れみりゃ一家は、ゆっくりプレイスのど真ん中に立っている、この古木の上に住んでいたのだ。 れみりゃは狩りの際、おうちから飛び立つと一旦ゆっくりプレイスの外に出て、 外周をぐるりと反対側に回り込んでからゆっくりプレイスに再度侵入、襲撃を行っていたのである。 ゆっくりプレイス内に住む理由は、ゆっくりプレイスの上空から群れの行動を監視しつづけるためだ。 群れが崩壊したり、脱走ゆっくりが出てきてしまったりしないように。 群れのゆっくり達が自分に危険を及ぼしそうな行動をとっていないか、見張るために。 だが、もしも群れが、ゆっくりプレイス内にれみりゃが住みついている事を気づいてしまうと、 さすがに逃げ出すゆっくりは多くなるだろう。 だからこそ、群れには自分の居場所がばれないように、工夫して襲撃していたのであった。 つまり、長ぱちゅりーに限らず、群れのゆっくりの話し合いは、全て聞かれていたのである。 これまで群れが作ってきた罠や行ってきた対策同様、すべて、準備段階から一つ残らず、把握されていたのだ。 「うー。」 まりさとちぇんは、どんな最期だったのだろうか。 それは、長ぱちゅりーにはわかりようもない。 だが、れみりゃに傷一つつけることもできず、自分達の死を長ぱちゅりーに伝える事も出来ずに死んだ無念は、 お帽子の破片から漂う怨念に満ちた死臭から、痛いほどに伝わってきたのだった。 「む・・・・むっぎゅぁぁあああああああああ」 めりっ。 ・・・長ぱちゅりーの雄叫びはそこで途切れた。 --------------------------------------------------------- 長ぱちゅりーの叫びがゆっくりプレイスに響いた時から数十分後。 ゆっくりプレイス中心近くの洞窟には、今ではほんの10匹にも満たない数にまで減らされた、赤ゆっくり達が避難していた。 先日の妊婦ゆっくり全滅以来、すっきりーをしようとするゆっくりはいなくなっていたので、数は減る一方だったのだ。 それはそうだろう。 ただでさえにんっしんすれば逃げ足が遅くなるというのに、 れみりゃは狙い撃ちするかのように、おちびちゃん達ばかりを襲ってくるのだから。 そんな訳で、この洞窟にいる母れいむのおちびちゃん達である、8匹の赤れいむ達が、 この群れに残された最後の赤ゆっくり達になっていたのだ。 「ゆぁーん。みゃみゃー、れいみゅ、きょわいよぉ。」 「れみりゃは、ゆっくちできにゃいよぉ。」 「だいじょうぶだよ、おちびちゃん。おさが、れみりゃをやっつけてくれるからね。」 だが、最近ではそんなごまかしは、赤ゆっくりにも効かなくなってしまっている。 「まりしゃおにぇーしゃんも、ありしゅおにぇーしゃんも、みんにゃたべりゃれ・・・ゆぁぁあぁあん!!」 「れいみゅ、たべられちゃくにゃいぃぃぃいい!!」 「ゆぅぅ。ゆっくりしてよぉ。ぺーろぺーろ。すーりすーり。ゆぅぅ・・・」 こうなると母れいむも、いっしょに泣きたくなる。 もはや長ぱちゅりー達が、れみりゃを倒してくれない限り、この一家に平和がやってくることはないのだから。 どんっ!どんっ!どんっ! その時洞窟の入り口から、正確に3回、バリケードを棒で叩く音が響いた。 「ゆゆっ!?」 それは、長ぱちゅりーが決めた合図だった。 以前避難所に、先代長ぱちゅりーに変装したれみりゃが侵入して、 中にいた妊婦れいむ達が皆殺しにされた事への、反省があって決めた合図である。 本物の群れのゆっくりなら、バリケードを3回棒で叩く。 その合図がなければ、絶対洞窟から出てきちゃいけない。 と、言うことは・・・ 「ゆゆっ!?おちびちゃんたち、おさがかえってきたよ!」 「ゆわーい!れみりゃはやっつけたんだにぇ!」 「ゆっくち!ゆっくちー!」 洞窟の中は、歓喜の渦に包まれた。 母れいむはさすがに、れみりゃを倒したかまでは半信半疑だったが、 少なくとも生きて帰ってきたゆっくりがいるのだ。それは、大きな成果であった。 母れいむは、大急ぎでバリケードの木の枝や石をどかし、入口を開けた。 赤れいむ達は、バリケードに隙間ができたところで、早くも我先に外に飛び出していった。 「「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」」」 「みんな、ゆっくりしていってね!!」 「うー。」 そして、洞窟かられいむ一家全員が飛び出した瞬間、 洞窟の入口を塞ぐように、れみりゃが舞い降りた。 「ど、どうぢでれみりゃがいるのぉぉおおおお!?」 「「「ゆんやぁぁあああ!!れみりゃはゆっくちできにゃいぃいいいい!?」」」 「うっうー。」 れみりゃは、群れの全てを観察し、監視し続けていたのだ。 この程度の合図は、当然把握していた。 ましてやそれが、大好物の赤ゆっくりを誘い出す手段に使えそうなのなら、なおさらである。 そしてこうなると、れいむ一家にできる事は、一つしかない。それは、 「おちびちゃぁああん!!おかーさんのおくちのなかに、はいってぇぇええ!!」 「「「ゆぴゃぁあああ!!ゆっくちはいりゅよぉおお!!」」」 母れいむが開けた口に、ぴょんぴょんと入っていく8匹の赤れいむ達。 その行動は余りにもゆっくりで、その気になればすぐに妨害できそうだったが、 れみりゃはその様子を、ニコニコと楽しげな表情で眺め続けていた。 そして8匹のおちびちゃん全員をお口に隠すと、母れいむはお口をギッと閉ざし、 れみりゃに対して必死に威嚇を始めた。 「おちびちゃんは、れいむがぜったいまもるよ!れみりゃはゆっくりしないで、どっかいってね!」 お口の中からは、自分達の安全を信じて疑わない赤れいむ達の、ゆっくりとした声が聞こえてくる。 「「「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなかは、ゆっくちできりゅにぇ!」」」 ・・・それは、全てのゆっくりが本能的に受け継いでいる知恵、おちびちゃんを守り抜く最後の手段であった。 どすっ! 「ゆぎっ!?」 「うー。」 そして、赤れいむをお口に満載する母れいむの眉間に、太い木の枝が貫いた。 もちろん突き刺したのは、れみりゃだ。 「みゃみゃ?どうしちゃの?」 「ゆぁーん、ゆっくちしちぇよー。」 お口の中の赤れいむ達も、異変を感じて鳴きはじめるが、母れいむからは返事は無かった。 「ゆ・・・ゆびぇ・・・・・・」 「うー!」 そしてれみりゃは、母れいむが突き刺さった木の枝を口に咥えたまま、軽々と宙に浮かびあがり、 「うーっ!!」 今日の収穫、成体れいむ一匹と赤れいむ8匹を確保し、自分の可愛いおちびちゃん達が待つおうちへと帰っていったのだった。 最近では、子れみりゃ達もソフトボールサイズにまで成長した。 だから独り立ちの準備のためにも、味の悪い成体ゆっくりに舌を慣らしておかなければならないのだ。 れみりゃの大好物である赤ゆっくりは、小さいので腹を満たす量を狩るのが大変なのである。 赤れみりゃだった頃は母の狩ってくる量で十分足りていたかもしれないが、 独り立ちしてから狩りが上達するまでの期間、普段の食事は成体ゆっくりを我慢して食べることになるだろう。 と言うわけでここ数日、れみりゃ一家の食事は、主食が成体ゆっくり、デザートが赤ゆっくりとなっていた。 そんなれみりゃ達にとって、ゆっくりの『危険が迫ったらおちびちゃんを口の中に隠す』習性は、とても便利なものだった。 バラバラに逃げられると、狩るのは何かと面倒なのに、わざわざひと固まりになってその場に立ち止まっていてくれるのだから。 ぶちぶちぶち・・・ 「ゆぁーん、みゃみゃー!どうしちぇおくちあけちゃうにょぉおお!?」 「ゆっくちおへんじしちぇぇええ!!みゃみゃぁぁああ!!」 そして、餡子を吸い尽くされ息絶えた母れいむのお口がこじ開けられ、 デザートである赤れいむ達は一匹づつ、優しく取り出されていった。 「やめちぇぇぇええ!!れいみゅをたべにゃいでぇぇええ!」 「れいみゅ、こんにゃにゆっくちしちぇるのにぃぃいい!!」 「かわいくっちぇ、ごめんにゃしゃいぃぃいい!!」 母れみりゃは、群れのゆっくり達の事が本当に大好きだった。 「うー!あみゃあみゃー!」 「ゆぴぃぃいいいい!!」 こんなにも狩りやすいように行動してくれて、しかも美味しく食べられてくれるなんて、なんて親切なんだろう、と・・・ --------------------------------------------------------- 群れは今度こそ、滅亡の危機に追い落とされた。 おちびちゃんは文字通り全滅し、成体ゆっくり全てを入れても30匹にもならない。 群れの規模は、ゆっくりプレイス全盛期の1%以下にまで減少したのであった。 ・・・だが、それでもなお、群れのゆっくり達は、滅び去る事を良しとしなかった。 「むきゅ・・・みんな。れみりゃをたおすために、ちからをかして・・・」 「みょぉぉん。おちびちゃんのかたきだみょおん・・・」 「ゆるさないわ・・・れみりゃ・・・」 いや、ついに本気になったと言うのが正しいかもしれない。 群れの生き残りたちは、当然と言えば当然だが、全員が親姉妹、つがいやおちびちゃん達をまとめて失っていた。 直接手を下した訳ではない相手も多かったが、れみりゃが来なければありえない犠牲であったのだ。 「むきゅぅぅぅ・・・ゆるさないわ・・・ぜったいにゆるさないわぁああ!!ふくっしゅうよぉおお!!」 「「「えい、えい、ゆーっ!!!」」」 これまでは、群れの中でも命を捨てて戦うゆっくりもいれば、戦う前から腰の引けたゆっくりもいた。 だが、事ここに至り、ついに群れの気持ちは一つになったのだ。 動機が憎悪という、ほめられた物でない代物とは言え、 自分達の全てのゆっくりを賭けて、れみりゃと対決しようという決意を共有したのだ。 群れの新しい長には、群れのぱちゅりー種で唯一の生き残りだった、一匹の若いぱちゅりーが就任した。 もし次の戦いに敗れれば、群れ最期の長になるであろう。 「むきゅ。みんな、これが、ぱちぇがまどうしょをかいどくしてつくった、『さいしゅうへいき』よ。」 「これが、『さいしゅうへいき』さん・・・」 「じかんはないわ。さっそく、くんれんをはじめるわよ!」 「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」 「みんな!あのくろいいしさんを、れみりゃだとおもって『さいしゅうへいき』をなげるのよ!」 「「「ゆっくりくんれんするよ!!」」」 群れ全員が横一列に並ぶと、広場のど真ん中にあるスイカほどの大きさの黒い石めがけ、 一斉に『さいしゅうへいき』を構えた。 さいしゅうへいき・・・それは、小石にツタを結びつけただけの、シンプルな武器、 陸上競技で使われる『ハンマー』を模したような物だった。 ゆっくり達は、ツタの先端を口に咥え、上半身(ていうか下唇から上あたり)を後方に180度捻る。 後方に捻った上半身を、前方に戻すように勢いよく捻り、 その勢いを殺すことなく、あんよを滑らせるようにしてさらに全身を360度回転させた。 フォンッ!! それは、これまでゆっくり達が聞いた事もない、空気を切り裂く音。 長ぱちゅりーは、その音に自分達の勝利する姿を見た。 そして、 「「「ゆぅぅぅううう!ゆふぅんっ!!」」」 ぶぉんっ!!・・・ドスッ!ドスドスドスッ!! 5mほど離れた場所にある黒い石に、その手作りハンマーが激しく衝突すると、いくつもの白いキズを残した。 「おさ。これなら、れみりゃにかてるみょん?」 「・・・ぱちぇはきづいたのよ。れみりゃにこれまで、かてなかったりゆうを、むきゅ。」 「それはなんなのー?」 「むきゅ・・・れみりゃはね。おそらをとんでるのよ!」 「「「ゆ・・・?・・・そ、そういえばそうだよぉおお!?」」」 長ぱちゅりーは、先代までの長の失敗から、学ぶだけの高い知性を持っていたのだ。 罠を、守りをあっさりと破られ、陣形を崩され、視界の外から襲われ続けた最大の理由、 それを長ぱちゅりーは、ついに突き止めたのである。 群れは、最期の時を迎えようとする今、ついに一匹の天才を見出すことが出来たのだった。 「むきゅっ!!だかられみりゃは、おそらからおとさないとかてないのよ!」 「「「ゆっ、ゆっくりりかいしたよっ!!」」」 「みんなっ!!ぱちぇたちは、れみりゃとたたかうぶきをてにいれたのよ!! つぎよ・・・つぎにれみりゃがきたときが、れみりゃのさいごなのよっ!!むっきゅーんっ!!」 「「「えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!」」」 それは、ある意味では限りなく正解に近い結論だった。 小石で作ったハンマーなど、一個や二個当たったところでそこらのれいむ種ですら殺せはしない。 人間なら目玉にでも当らなければかすり傷程度である。 だが、もしもそのハンマーがれみりゃの羽に当たったら・・・ れみりゃは、羽での移動に慣れているので、あんよで跳ねることが苦手だ。 もしも羽が酷く傷つけば、れいむ種やまりさ種であっても、互角以上の勝負に持ち込めるだろう。 長ぱちゅりーの生み出した武器は、自分達が考えている以上に有効な武器だった。 「おさ。この『さいしゅうへいき』さん、おなまえはなんていうの?」 「むきゅ。それじゃあ、このまどうしょにかかれているなまえをつけましょう。」 『さいしゅうへいき』・・・それは、『むろふしさん』と名付けられた。 そしてこれは、群れのゆっくり達が、ついにれみりゃに対抗する力を手に入れた瞬間であった。 なお、長ぱちゅりーの『まどうしょ』の表紙には、『週刊ゆ虐12月号:第一回ゆックリンピック開催!』と書かれていた。 --------------------------------------------------------- 一方その頃、れみりゃ達は鼻歌交じりに荷造りをしていた。 おうちの中に蓄えた、餡子を吸った後の赤ゆっくり皮、それを天日に干して日持ちするように加工したモノを、 母れみりゃのお帽子にギュウギュウと詰め込んでいる。 これは、次の狩り場に落ち着くまでの、大事な保存食だ。 れみりゃ一家は、引越しの準備をしていた。 母れみりゃも、群れの赤ゆっくり達がついに底をついた事に、気づいていた。 同じ所で長く狩りをすれば、そういう状況になることは、捕食種にとって当たり前の事である。 そのため、れみりゃ種は年に数回引越しをして、新しい狩り場に移動し続けるのだ。 それに、潮時でもあった。 れみりゃは常に余裕で狩りを成功させていたかに見えていたが、捕食種もまた、ゆっくりなのである。 れいむ種等の獲物との差は、空が飛べる・体がやや大きい・牙を持つ・そして遥かに賢いことくらい。 実のところ、ほんの5~6匹のゆっくり達が木の枝で武装し、 パニックを起こすことなく果敢に立ち向かってくれば、れみりゃだって無傷では済まないのだ。 だから巨大な群れよりも、少数の覚悟を決めたゆっくり達の集団の方が危険だったりする。 もはやれみりゃにとって、ここの群れは魅力を失っていたのだ。 栄養たっぷりのご飯ですくすく育った子れみりゃ達は、独り立ちまではまだまだとはいえ、 宙を舞う姿はふらつく様子もなく不安は見られない。 保存食の蓄えも十分だし、この周辺は自然豊かなので、新しい群れもすぐに見つかるだろう。 「うーっ!」 「「「うっうー!!」」」 れみりゃ一家の視線の先には、吸いこまれそうなほど無限の広がりを見せる夜空が広がっていた。 そこに美しく輝く星、一つ一つが、れみりゃ一家の旅を祝福してくれるように、きらきらと煌めく。 その美しさに満足したように、うんうんと頷くと、れみりゃ一家は一斉に羽を広げ、 星の光を受けて青白く光る牙をキラキラと輝かせながら、夜空の彼方へと飛び出した。 暗闇の彼方に、かつてのここよりも、さらに豊穣なゆっくりプレイスを求めて。 --------------------------------------------------------- 「えいえいゆーっ!」 「「「えい、えい、ゆーっ!!」」」 「れみりゃにかつのよ!むっきゅーん!」 れみりゃは去り、群れは生き残った。 長ぱちゅりーを含めて誰ひとり気づいていなかったが、群れは確かに勝利したのだった。 多くの野生動物同様、種の存続を勝利と考えるならば、これは間違いなく勝利であろう。 そして、れみりゃがいなくなれば、群れはまたすぐに増える。 それがゆっくりなのだ。 こうして半年経ち、一年経ち、群れの規模が以前と同じくらいまで大きくなった頃、れみりゃは再びやってくるだろう。 その頃には、れみりゃと戦った経験のあるゆっくりはいなくなっており、 れみりゃと戦うための方法は完全に忘れられているに違いない。 こうしてれみりゃ達は、いつまでたっても群れを安全に狩り続け、 そして森は、いつまでも豊かで、美しく、そこに住む全ての生命に対しても優しく、 そして平和でありつづけるのであった。 餡小話掲載作品 町れいむ一家の四季シリーズ→休止中につき、Wikiにてご確認あれ anko238.txt ぱちゅりおばさんの事件簿 anko394.txt ゆっくりちるのの生態 anko970.txt ごく普通のゆっくりショップ anko989.txt ゆっくり向けの節分 anko1042.txt みんな大好きゆレンタイン anko1052.txt 暇つぶし anko1061.txt 軽いイタズラ anko1136.txt お誕生日おめでとう! anko1149.txt ゆっくり工作セット anko1269.txt 愛でたいお姉さん anko1283.txt ありすの婚活 anko1363.txt 野良も色々 anko1367.txt 労働の意義 anko1374.txt anko1379.txt ドス対処法 anko1388.txt 赤い風船に乗せて anko1393.txt ゆっクリニックへようこそ anko1433.txt 良好な関係 anko1451.txt 余計なお世話 anko1457.txt anko1467.txt 奇跡の公園 anko1476.txt ゲスゆっくりは捨てられる anko1485.txt 嘆きあきリスペクト anko1486.txt 飼われるって幸せなこと anko1507.txt 楽しい黄金週間 本作品
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そこまでハードな虐待では無い筈・・・ 処女作ですので読みにくい点は多いかもしれませんが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 『赤ちゃんれいむとすりすり』 「ゆっくり~♪ゆっくりしたこになってね~♪」 でっぷりした体を揺らしながら、笑顔で体を揺らすゆっくりれいむ。 最近俺の家の縁の下に住み着いたゆっくりである。 どうやら動物型のにんっしんっをしているらしく、のそのそとしか体動かせない様だ。 一緒に「すっきりー!」した相手は居らず、1匹だけ。 でっぷりの体ではろくにエサは取れないし、外敵からも身を守るのは難しい。 そのため外敵から身を守るのに縁の下は適した場所と判断したのだろう。 俺はこのゆっくりを追い出そうとも駆除しようともしない。 勝手に家のほうに上がってお得意の「おうち宣言」をする訳じゃないし、 「おかしをちょうだいね」やら「おやさいをよこしてね」等不快な台詞も吐かない。 それどころかにんっしんっ中の栄養を確保するべく、庭の雑草を食べてくれる。 ゆっくりれいむ自身は、ここが人間の住処という事は解っているらしいが 人間の恐ろしさを知っているのか俺と関わろうとはしなかった。 おなかの赤ちゃんを守る為でもあるのだろう。 たまに聞こえる声は鬱陶しいが、とりあえずは追い払うことはしなかった。 そんなれいむがのそのそと動き始め、独り言を言い始めた。 「あかちゃんのためにまたえいようをとるよ!」 「にがいくさでもがんばってたべるから、いいこにそだってね!」 そう言い終えるといつもの様に雑草を食べ始める。 ゆっくりは雑食とはいえ、雑草ばかりを食べるのは辛いらしいが 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」「う゛・・・あかちゃんのためなら・・・しあわせー・・・!」 などと言いながら涙目で賢明にほお張っている。 このゆっくりが来る前に比べると大分雑草は減った。ありがたい。 にんっしんっゆっくりが縁の下に住み着いて十日ほど経った時、その時はやってきた。 いつものように雑草を食べ終えて木陰で休むれいむに激痛が走る。 「ゆぅっ!!うまれるぅぅぅぅぅ!!」 めりめりと下腹部(?)から赤ちゃんが顔を覗かせる 「ゆうううううう!ゆ゛ぎぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!」 「はやぐででぎでぇぇぇぇ!!ゆぐうううう!!!」 「ゆ゛っゆ゛っぶふー!!ゆ゛っゆ゛っぶふー!!」 「ゆ゛ぎゃがががあああああおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・・・!!!」 メリ・・・メリメリ・・・ポーン! 勢い良く飛び出してきた赤ちゃんれいむ。その勢いのままぺしっと地面に落ちた。 「ゆ・・・ゆ・・・ゆっくちちていってね!」 産声にあたる誕生の挨拶をあげた。自然と顔がほころぶお母さんれいむ。 「ゆっくりしていってね!!!おかあさんだよ!!!」 これ以降痛みはこない。どうやら身篭ったのは1匹だけのようだった。 「おかーしゃん、ゆっくちちようね!」 「ゆぅぅぅ・・・かわいいあかちゃんだよぉぉ」 すりすりすりすり・・・ お母さんれいむが赤ちゃんにほお擦りをする。ゆっくりの間の愛情表現らしい。 ほお擦りされている赤ちゃんもきもちよさそうだ。 すりすりすりすり・・・ 「ゆっ♪くちゅぐったいけどきもちいい♪おかーしゃんだいちゅき!」 そんな様子を見て俺はある事を思いついた。 早速準備に取り掛かる。 俺はお母さん用の桃一つと、赤ちゃん用の切り分けた桃を用意して2匹に近づいた。 人間の近づく音に気づいたお母さんれいむは、とっさに赤ちゃんを体の後ろに隠し身構えた。 「ゆっ?にんげんがなんのよう?れいむはわるいことしてないよ?だからゆっくりはなれてね!」 「いや、今君が赤ちゃんを産んだのを見かけてね。おめでとう!」 「ゆ!ありがとう!とってもゆっくりしたいいこだよ!でもこわいにんげんにはみせてあげないよ!!」 「そう言うなよ。君は赤ちゃんを産むためにここらの草を沢山食べてくれただろう? あの草は人間にとってゆっくり出来ないものなんだ。それを沢山食べてくれたから嬉しくてね。 だからそのお礼とお祝いをかねて桃を持ってきたんだよ」 そう言いつつ用意した桃を目の前に置いた。 その匂いに釣られてふらふらとお母さんの後ろから赤ちゃんが現れる。 「ゆっ?いいにおいがしゅるよ!ももってなぁに?ゆっくちできる?!」 「ゆ!あかちゃんでてきちゃだめだよ!!にんげんはゆっくりできないよ!!」 「でもおなかしゅいたよ!!あれたべたいよ!!」 ゆーんゆーん、と泣き出してしまった赤ちゃんれいむ。お母さんは困っている。 「人間が怖いなら、お兄さんはもう行くよ。桃は置いて行くからゆっくり食べて行ってね!」 俺はそういってその場を後にし、家に入った。家の中から様子を伺う。 「ゆ!にんげんがいったよ!!あかちゃん、このももをたべようね!!」 「たべていいの?おかーしゃん」 「“おいわい”で“おれい”っていってたよ!あのにんげんはおかあさんのためにこれをくれたんだよ! だからきっとたべてだいじょうぶだよ!!」 「ゆゆっ!おかあしゃんしゅごーい!!」 そうして、お母さんは桃にかじりつき、赤ちゃんは食べやすい切り分けた桃にしゃぶりついた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー☆☆☆」 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわしぇー☆」 お母さんれいむは最近雑草ばかり食べていた。久々のまともな食事、それも甘い桃。自然と涙を流していた。 赤ちゃんれいむは生まれて初めて食べたたべもの。“もも”の美味しさに感動した。 「おかーしゃん!もっとたべたい!にんげんのところにいこうよ!」 「だめだよ!!にんげんはこわいんだよ!!さっきはおかあさんのおかげでおいしいものがもらえたけど ふだんはそうはいかないよ!!」 「ゆぅ・・・“もも”おいちかったなぁ・・・」 食べ終えて3分もすると二匹は寝息を立てていた。 あの桃にはゆっくり睡眠薬を仕込んでおいたのだ。 お母さんの方には強力な、ゆっくり去勢手術で使うようなもので、ちょっとやそっとじゃ目を覚まさない。 赤ちゃんの方には軽いもので、睡眠を導入する程度のものである。 ゆぅゆぅと寝息を立てる2匹に近づき、母親の方を持ち上げると、家のほうに持ってきた。 「さてと…始めますか!」 おれはまずゆっくりの両頬を餡子が見えない程度にそぎ落とした。 そこにガラス片や釘、とがった石などをはりつける。 その頬を水で溶いた小麦粉で覆い、形を元通りにして完成。そこで睡眠薬の拮抗剤を打っておいた。 小麦粉が乾いて定着するまでまだ少しかかるが、この薬は強力、まだしばらく起きないだろう。 30分程の作業を終えて外を見ると、もう赤ちゃんれいむは目を覚ましていた。 涙目できょろきょろとあたりを見回している。あ、大泣きし始めた。 俺は驚かさないように近づき、そっと声をかけた。 「どうしたんだい?大きな声で泣いて」 「ゆわぁぁぁぁぁん!!おかーしゃんがいにゃくなっちゃったぁぁぁぁ!!ゆえぇぇん!!」 甲高い声で泣き声をあげる赤ちゃんれいむ。野生だったら死んでるぞ。 「きみのお母さんはお兄さんの家でゆっくりしてるよ。だから君もおいで」 「ゆえええ…。ゆっ?おかーしゃん、いるの!?ちゅれってってぇぇぇ。ゆえぇぇん!」 随分と泣き虫なゆっくりだな・・・。そんなことを考えながら掌に乗せ、家の方へ向かう。 程なくして寝息を立てるお母さんが目に入ったようだ。お母さんはまだ目を覚ましていない。 「ゆぅ!おかーしゃん、いたぁ!ゆえぇぇぇぇん!!よかっちゃよう!!ゆぇぇぇぇぇん!!」 また泣くし。そんな赤ちゃんれいむをあやしつつ、桃を食べさせてあげた。 さっきの桃がよほど気に入っていたのかゆっくりらしからぬ反応で桃にしゃぶりついてきた。 ちあわせー☆、と声を上げる頃にはすっかり泣き止んでくれたようだ。 桃を食べさせてくれた事と、母親のところに連れてきた事で、あかちゃんはすっかり俺に懐いた様だ。 「もものおじちゃん!ありがちょう!ゆっくちできるよ☆」 「落ち着いたみたいだね、お母さんにも会えたし、よかったね!」 「うん!!もものおじちゃん!!おかーしゃんはにんげんはこわいっていってたけど、ゆっくりできるんだね!!」 笑顔で足元に寄ってきてこちらを見上げている。 そんな赤ちゃんを持ち上げて、俺の顔に近づける。 すりすりすりすり・・・すりすりすりすり・・・ 「ゆ♪もものおじちゃんのすりすりきもちいい♪」 すりすりすりすり・・・すりすりすりすり・・・ きゃっきゃと声をあげて喜ぶ赤ちゃんれいむ。 俺が赤ちゃんれいむと戯れていると、お母さんれいむが目を覚ましてきた。 俺を見るや否や、赤ちゃんにほお擦りをしている様子を見て思わず声を荒げるお母さん。 「あかちゃんからはなれてね!!きやすくすりすりしないでね!!!」 そんなお母さんの声に気づいたのか、赤ちゃんは下を見てぱぁっと笑顔を見せる。 「おかーしゃん!このおじちゃんはいいにんげんだよ!ゆっくちできるよ!すりすりきもちいよ!」 「だめだよ!にんげんはあぶないんだよ!」 「ほらせっかくお母さんが起きたんだからお母さんのところへ行ってあげなさい。」 そういって赤ちゃんれいむを下ろしてあげると、ゆっくりなりの急ぎ方でお母さんが近づく。 人間と楽しそうにしているのがよほど気に入らなかったのか、その場で赤ちゃんにほお擦りを始めた。 すりすりすりすり・・・ずりッ! 「ゆきゃぁぁぁぁぁ!やめちぇぇぇぇぇ!!おかーしゃんすりすりしにゃいでぇぇぇぇ!!」 そんな悲鳴を上げる赤ちゃん。 お母さんは何が起こってるのかわからず、困惑している。 すりすりずりッ!すりずりッ!ずりッ! 「どうしてそんなこというの!?おかあさんのすりすりはにんげんのよりきもちいいんだよ!!」 「やべちぇぇぇぇぇ!!あんごがもれぢゃうぅぅぅ!!」 その悲鳴にハッとしてとっさに赤ちゃんを見る。 そこには頬が削れて涙を流して痛みにもがく赤ちゃんの姿があった。餡子もすこし漏れている。 「どうしてぇぇぇ?!なんであかちゃんがきずついてるのぉぉぉ!?」 「もものおじちゃんたしゅけてぇぇぇぇ!ゆえぇぇぇぇん!!」 何が起こったのか解らず悲鳴のような叫び声を上げるお母さんれいむ。 赤ちゃんれいむは泣きながらこちらに寄ってきた。おれは餡子が漏れないように拾ってやる。 さっきのお母さんにつかった小麦粉の余りを塗って、無傷の側の頬へすりすりしてやった。 すりすりすりすり・・・ 「やべろぉぉぉ!!あがぢゃんにずりずりずるなぁぁぁぁ!!おがあざんがずりずりずるんだぁぁぁ!!」 「ゆ!おかーしゃんのすりすりはやだよ!!ごりごりでとげとげでいたいよ!! れいみゅをきずつけるようなおかーしゃんなんてきらい!!ゆぇぇぇぇん!!」 「どぼじでぞんなごどいうのお゛お゛お゛お゛!!」 苦い雑草で何とか栄養をつけて、苦労して生んだわが子に罵声を浴びせられる。 お母さんれいむは精神的にかなりのショックを受けたようだ。さっきからしゃがれた声で叫んでいる。 「ゆ゛っ!?ぞうだ!!ぎっどにんげんのぜいでおがあざんがずりずりじであがぢゃんがきずづいだんだ!! やっばりにんげんはゆっぐりでぎないね!!ばがなにんげんはどっどどあがぢゃんをはなじでゆっぐりじねぇ!!」 とっさに人間に責任転嫁するお母さんれいむ。いや大正解ですけど。 でも何も知らない赤ちゃんが止めの一言を放った。 「もものおじちゃんはゆっくちさせてくれるよ!!“もも”をくれりゅよ!!すりすりもきもちいよ!! おかーしゃんはもものおじちゃんに“しっと”ちてるんだよ!! だからにんげんがこわいなんていううそもついてただね!! ゆっくりできないごつごついがいがのおかーしゃんなんていらにゃいっ!!ちねっ!!」 その一言に相当ショックを受けたのか白目をむきゆっゆっ、と痙攣しだした。 俺は小刻みに震えるお母さんれいむを掴み上げ、家の外の木に叩きつけるように投げた。 ぐしゃっと音がし。たぶん即死だろう。 「もものおじちゃん!こわかったよう!たしゅけてくれてありがちょう!」 そんな言葉を聞いて俺はまた赤ちゃんれいむを顔に近づけた。 すりすりすりすり・・・ 「ゆっ!やっぱりすりすりきもちいよ♪」 すりすりすりすり・・・ 「これからはもものおじちゃんとゆっくちするよ!」 すりすりすりすり・・・ 「もものおじちゃん、だいちゅき♪」 すりすりすりすり・・・がぶり 「ゆ゛っ!?」 このSSに感想を付ける